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ブルージェイズの栄養士

Bluejays

ブルージェイズの栄養士

ブルージェイズナインの胃袋をがっちりつかむ管理栄養士・讃井友香さん

 

はじめに

メジャーリーグの世界では、選手の身体能力や戦術だけでなく、食事と栄養の管理が勝敗を左右する重要な要素となっています。2025年、ワールドシリーズ進出を果たしたトロント・ブルージェイズで、その“影の立役者”として注目を集めているのが、ブルージェイズの管理栄養士の讃井友香(さぬい・ゆか)さんです。彼女は日本人として初めてブルージェイズの栄養部門に正式に加わり、チームの健康とパフォーマンスを支えています。


オハイオ生まれ、日本ルーツの国際派栄養士

讃井友香さんは、アメリカ・オハイオ州で生まれ育ちました。大学はオハイオ州立大学を卒業し、その後コロラド大学コロラドスプリングス校大学院に進学して栄養学を専攻。アスリートの身体機能や代謝に関する最新研究を学び、スポーツ栄養の分野でキャリアを積みました。

彼女は学生時代から「食を通じてアスリートの可能性を最大化する」という信念を持ち、科学的根拠に基づく栄養指導の実践に取り組んできました。この姿勢が、後のメジャーリーグ、ブルージェイズの管理栄養士としての活躍につながっていきます。


東京五輪での経験が転機に

2019年、讃井さんは東京オリンピックで正式種目となった7人制ラグビー米国代表チームの栄養サポートスタッフに選ばれました。岡山県美作市で行われた合宿では、栄養士としてだけでなく、通訳や渉外担当としても活躍。異文化チームの中で臨機応変に対応するスキルを身につけたことが、国際的な現場で働く自信につながったといいます。

彼女はこの経験を通して、「食事は単なる栄養補給ではなく、チームコミュニケーションを深める手段でもある」と実感。食の重要性をあらためて再認識し、プロスポーツの現場で活動する決意を固めました。


ブルージェイズ傘下でのキャリアスタート

2022年、讃井さんはトロント・ブルージェイズ傘下の1Aチーム・バンクーバー・カナディアンズに栄養士として加入しました。マイナーリーグでは若手選手を中心に、栄養意識の教育から始める必要があり、時には食事の基礎から指導することもありました。

翌年には3Aバッファロー・バイソンズに昇格。より多様な文化や食習慣を持つ選手たちと接しながら、選手個々のニーズに合わせた食事管理を行いました。2025年シーズンには、見事にメジャー本隊であるブルージェイズのスタッフとして昇格し、ワールドシリーズ進出を支える存在となっています。


メジャーリーグでの役割と哲学

讃井さんの仕事は単なる食事提供ではありません。選手のけが予防、疲労回復、パフォーマンス向上を目的とし、科学的データと日々の観察を組み合わせた“パーソナライズド栄養サポート”を行っています。

「朝何を食べたか、夜は何を摂取するべきか。毎日の食事内容を記録しながら、選手の状態を把握し、その日のコンディションに合わせて調整しています。」

シーズン中は試合や移動が続くため、環境変化やストレスも考慮したプランニングが欠かせません。気温、湿度、遠征先の食文化、試合間隔までを総合的に分析し、選手一人ひとりに最適なメニューを設計しています。


“食の科学”でブルージェイズを強くする

メジャーリーグでは現在、栄養学を含むスポーツサイエンス革命が進んでいます。ブルージェイズも例外ではなく、体調データ、筋肉疲労度、睡眠時間、摂取栄養のトラッキングを組み合わせた“ハイパフォーマンスプログラム”を導入しています。

讃井さんはこのシステムの中で、選手が食を通じて最大限の力を発揮できるよう、定量データと人間的な観察の両面からサポートしています。たとえば、遠征続きのスケジュールでは、疲労回復を目的にオメガ3脂肪酸を多く含む魚類をメインにしたり、筋肉修復を促すために高タンパク質メニューを用意するなど、緻密な調整を行っています。


日本食とアメリカ栄養学の融合

讃井さんの特徴は、日本の食文化をメジャーリーグ流にアレンジして取り入れている点にもあります。選手たちの間では、彼女が提供する味噌汁や焼き魚、発酵食品を使った料理が評判となっています。これらは消化が良く、腸内環境を整え、免疫力を高める効果もあるため、長いシーズンを戦う選手たちには理想的なメニューです。

また、アメリカ人選手向けには、バーベキューやパスタなど馴染みのある食事をベースに、健康的なアレンジを加えるなど、文化の融合と科学的調整を両立させています。


選手との信頼関係

選手からの信頼は厚く、「彼女の作る食事を食べると安心する」と語る選手も多いそうです。日々の会話の中で小さな体調変化を見抜き、栄養だけでなくメンタル面でも支える存在となっています。讃井さんは「栄養士はデータを見るだけでなく、人を見る仕事」と語っており、選手との信頼関係を何よりも重視しています。


ワールドシリーズを支えた影の力

2025年、ブルージェイズはチーム全体のコンディショニングと一体化した栄養戦略でシーズンを駆け抜けました。讃井さんの取り組みは、“食で勝つ”チーム文化の確立に貢献し、選手たちの持久力と集中力の維持に直結したと言われています。

ワールドシリーズという長丁場でも、彼女の細やかなケアとデータ管理が選手たちを支え、まさに“見えない戦力”としてブルージェイズを支えました。


日本人女性としての誇りと今後の展望

讃井友香さんの挑戦は、日本人女性が国際的なスポーツ組織で活躍できる可能性を示しています。語学力、専門知識、異文化理解を兼ね備えた彼女の姿は、多くの若い世代にとってのロールモデルとなっています。

今後は、ブルージェイズでの経験をもとに、スポーツ栄養の国際的ネットワークを広げることも期待されています。彼女の目標は「どんな文化圏の選手にも通じる“食の共通言語”をつくること」。その志は、メジャーリーグを超えて世界のスポーツ界に影響を与えるでしょう。


まとめ

トロント・ブルージェイズの管理栄養士、讃井友香さんは選手たちのパフォーマンスを陰で支える管理栄養士として、科学的知識と日本的感性を融合させたサポートを行っています。彼女の存在は、チームの勝利の裏にある“もう一つの力”といえるでしょう。

ワールドシリーズで躍動するブルージェイズの選手たちのエネルギー源――その一部には、讃井友香さんの情熱と専門性がしっかりと息づいているのです。

 

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