「夫婦別姓はいつから始まるのか」「選択的夫婦別姓はすでに導入されているのか」と疑問に思う人は少なくありません。
結論から言うと、2026年現在、日本では選択的夫婦別姓はまだ制度として導入されていません。日本人同士が法律上の結婚をする場合、民法第750条により、夫婦は同じ氏を名乗る必要があります。
ただし、選択的夫婦別姓の制度案そのものは新しいものではありません。1996年2月に法制審議会が、選択的夫婦別姓を含む民法改正案要綱を答申しており、この時点で制度化に向けた具体的な案はすでに示されていました。
つまり、「選択的夫婦別姓はいつから議論されているのか」という意味では、少なくとも1990年代前半から本格的に検討され、1996年には正式な制度案として示されていたと言えます。一方で、「いつから実際に使える制度になるのか」という意味では、2026年現在も開始時期は決まっていません。
この記事では、選択的夫婦別姓とは何か、いつから議論されてきたのか、なぜ今も導入されていないのか、そして現在の状況はどうなっているのかを整理して解説します。

選択的夫婦別姓とは、結婚した夫婦が希望する場合に、結婚後もそれぞれ結婚前の姓を名乗ることができる制度です。
ここで大切なのは、すべての夫婦を別姓にする制度ではないという点です。選択的夫婦別姓は、夫婦同姓を希望する人はこれまで通り同じ姓を選び、別姓を希望する夫婦はそれぞれの姓を名乗れるようにする制度です。
そのため、「夫婦別姓」という言葉だけを見ると、夫婦が必ず別々の姓になる制度のように受け取られることがありますが、正確には「同姓も別姓も選べるようにする制度」です。
法務省では、法律上の用語として「姓」ではなく「氏」という言葉を使うため、正式には選択的夫婦別氏制度と呼ばれます。ただし、一般には「選択的夫婦別姓」という呼び方の方が広く使われています。
現在の日本の制度では、結婚する際に夫または妻のどちらか一方が必ず姓を変えなければなりません。現実には、女性が男性の姓に変えるケースが圧倒的に多くなっています。
姓を変えることにより、銀行口座、クレジットカード、運転免許証、パスポート、保険、資格、勤務先での登録、研究実績、ビジネス上の名義など、多くの場面で変更手続きが必要になります。
また、仕事上は旧姓を使い続けていても、戸籍上の氏名と通称が異なることで、本人確認や契約、海外とのやり取りなどで不便が生じることがあります。
こうした背景から、結婚しても姓を変えるかどうかを本人たちが選べるようにすべきだという考え方が広がってきました。
2026年現在、日本人同士の法律婚では、夫婦が別々の姓を名乗ることは認められていません。
民法第750条は、夫婦について「夫又は妻の氏を称する」と定めています。つまり、結婚するときには、夫の氏か妻の氏のどちらか一方を選ぶ必要があります。
このため、婚姻届を提出する際には、夫婦のどちらの姓を婚姻後の氏とするかを決めなければなりません。夫の姓を選べば妻が改姓し、妻の姓を選べば夫が改姓することになります。
一方で、仕事や日常生活では旧姓を通称として使うことが広がっています。企業、大学、自治体、資格団体などでも旧姓使用を認める例は増えています。
しかし、旧姓使用はあくまでも通称の利用であり、戸籍上の氏名そのものが変わるわけではありません。そのため、法的な本人確認が必要な場面では、戸籍名と通称の違いが問題になる場合があります。
つまり、現在の日本では、社会生活の一部で旧姓使用は広がっているものの、法律婚において夫婦が正式に別姓を選べる制度はまだ実現していないということです。
選択的夫婦別姓の議論は、突然出てきたものではありません。長い時間をかけて議論されてきたテーマです。
特に本格的な制度検討が始まったのは、1990年代前半です。女性の社会進出が進み、結婚後もそれまでの姓で仕事を続けたいという声が大きくなっていきました。
また、結婚によって一方だけが姓を変えなければならない制度は、個人の尊重や男女平等の観点から見直すべきではないかという議論も広がりました。
こうした流れの中で、法務省の法制審議会が家族法の見直しを検討し、選択的夫婦別姓制度も重要な論点の一つとして扱われるようになりました。
選択的夫婦別姓の制度化に向けた大きな転機となったのが、1991年です。
この年、法制審議会で民法の家族法改正に関する検討が始まりました。法制審議会は、法務大臣の諮問機関であり、法律改正について専門的に審議する機関です。
この検討の中で、婚姻制度、親子関係、相続、離婚、氏のあり方など、家族に関する法律全体の見直しが議論されました。
選択的夫婦別姓も、その中の重要なテーマとして取り上げられました。
当時は、女性の社会進出が進み、結婚によって姓を変えることが仕事上の不利益につながるという問題が目立つようになっていました。研究者、医師、弁護士、会社員、経営者など、氏名が業績や信用と結びつく職業では、改姓による影響が特に大きいと考えられていました。
また、結婚後も自分の生まれ持った姓を使い続けたいという希望は、単なる便利さの問題だけではなく、個人のアイデンティティに関わる問題としても受け止められるようになりました。

選択的夫婦別姓の歴史で特に重要なのが、1996年2月です。
この年、法制審議会は、選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正案要綱を法務大臣に答申しました。
ここで注意したいのは、1996年に選択的夫婦別姓が始まったわけではないという点です。
1996年は、あくまでも制度化に向けた具体的な案が正式に示された年です。実際に国会で法律が成立し、制度として施行されたわけではありません。
そのため、「選択的夫婦別姓はいつから?」という問いに対しては、次のように分けて考える必要があります。
この違いを理解しておくことが大切です。
1996年の答申では、夫婦が結婚時に同姓か別姓かを選べるようにすることが提案されました。また、夫婦が別姓を選んだ場合の子どもの姓をどうするかといった点についても、制度設計の対象になっていました。
つまり、選択的夫婦別姓は単なる理念として語られていたのではなく、法律改正の具体案として一度はかなり整理された段階まで進んでいたのです。

1996年に法制審議会が答申を出したにもかかわらず、選択的夫婦別姓は現在まで実現していません。
その理由は一つではありません。政治的な対立、家族観をめぐる意見の違い、子どもの姓をどうするかという制度上の課題、戸籍制度との関係など、複数の問題が重なっています。
慎重派からは、主に次のような意見が出されています。
一方、導入を求める側からは、次のような意見があります。
このように、選択的夫婦別姓をめぐっては、制度の必要性を訴える声と、家族制度への影響を懸念する声が長く対立してきました。
特に国会では、与党内でも意見が分かれることが多く、法案提出や成立に向けた合意形成が難しい状態が続いてきました。
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1898年 | 明治民法が施行され、家制度のもとで氏に関する制度が整備される |
| 1947年 | 戦後の民法改正により家制度は廃止。ただし、夫婦同氏の原則は残る |
| 1991年 | 法制審議会で家族法改正の検討が始まる |
| 1996年 | 法制審議会が選択的夫婦別姓を含む民法改正案要綱を答申 |
| 2000年代 | 国会で法案提出の動きが出るものの、成立には至らず |
| 2015年 | 最高裁大法廷が夫婦同氏規定を合憲と判断。ただし、制度のあり方は国会で議論すべき問題とされた |
| 2021年 | 最高裁が再び夫婦同氏規定を合憲と判断 |
| 2020年代 | 企業や自治体で旧姓使用を認める動きが広がる一方、法制度としての選択的夫婦別姓は未導入のまま |
| 2026年現在 | 選択的夫婦別姓の導入時期は未定。国会での議論は続いている |
選択的夫婦別姓をめぐっては、裁判でも争われてきました。
特に重要なのが、2015年の最高裁大法廷判決です。この判決で最高裁は、民法第750条の夫婦同氏規定について、憲法に違反しないと判断しました。
ただし、最高裁は「夫婦同氏制度が合憲である」と判断しただけであり、選択的夫婦別姓の導入そのものを否定したわけではありません。
むしろ、夫婦の姓に関する制度をどうするかは、国会で議論し判断すべき問題だという考え方を示しました。
2021年にも、最高裁は夫婦同氏規定について改めて合憲と判断しました。しかし、この判断も、選択的夫婦別姓を導入してはならないという意味ではありません。
つまり、裁判所は現行制度を直ちに憲法違反とは判断していない一方で、制度を変えるかどうかは国会の立法政策に委ねられるとしています。

選択的夫婦別姓に慎重な立場からは、「旧姓の通称使用を広げればよい」という意見があります。
実際、近年は旧姓使用が認められる場面が増えています。職場、資格、研究活動、行政手続きの一部などで、結婚前の姓を使い続けられるケースは以前より広がっています。
これは、改姓による不便を減らすうえで重要な対応です。
しかし、旧姓使用には限界もあります。
たとえば、戸籍上の氏名と仕事上の氏名が異なるため、本人確認で説明が必要になる場合があります。海外での手続き、金融機関との契約、登記、資格証明、論文や業績の管理などで、戸籍名と旧姓の違いが問題になることもあります。
また、旧姓はあくまでも通称であり、法律上の氏名そのものではありません。そのため、どこまで旧姓を使えるかは、制度や組織の運用に左右されます。
このため、選択的夫婦別姓を求める人たちは、旧姓使用の拡大だけでは不十分であり、法律上も結婚前の姓をそのまま使える制度が必要だと主張しています。
日本の夫婦別姓を考えるうえで、国際結婚との違いもよく話題になります。
日本人同士の結婚では、夫婦は同じ姓を選ぶ必要があります。一方、日本人と外国人が結婚する場合、日本の戸籍制度上、日本人配偶者の氏は原則として自動的には変わりません。
そのため、国際結婚では、結果として夫婦が別々の姓を名乗る形になることがあります。
この点から、「外国人との結婚では別姓があり得るのに、日本人同士では認められないのは不自然ではないか」という意見もあります。
もちろん、国際結婚と日本人同士の婚姻では制度の仕組みが異なるため、単純に同じものとして扱うことはできません。しかし、夫婦の姓のあり方が一つに限られているわけではないことを示す例として、国際結婚の扱いはしばしば取り上げられます。
選択的夫婦別姓に関する世論は、調査の方法や質問文によって結果が変わります。
そのため、「国民の何%が賛成」と一言で断定するのは注意が必要です。
ただし、近年の世論調査では、選択的夫婦別姓の導入に前向きな意見や、現行制度の見直しを求める意見が一定数あることは確かです。
特に若い世代では、夫婦が同姓か別姓かを選べるようにすることに抵抗が少ない傾向があります。
一方で、年齢層が高くなるほど、夫婦は同じ姓を名乗るべきだという意見も根強く見られます。
また、選択的夫婦別姓そのものには慎重でも、旧姓の通称使用を広げることには賛成するという人もいます。
このように、世論は単純に賛成・反対の二つに分かれているわけではありません。選択的夫婦別姓に賛成する人、現行制度を維持すべきだと考える人、旧姓使用の拡大で対応すべきだと考える人など、さまざまな立場があります。
選択的夫婦別姓に賛成する理由として、まず挙げられるのが、改姓による負担の大きさです。
結婚によって姓を変えると、さまざまな名義変更が必要になります。銀行口座、クレジットカード、保険、免許証、パスポート、勤務先の登録、資格、メールアドレス、契約書類など、変更しなければならないものは多岐にわたります。
また、仕事上の名前が変わることで、これまで積み上げてきた信用や実績が分かりにくくなることもあります。
特に、研究者、医師、弁護士、作家、経営者、営業職、フリーランスなど、名前そのものが社会的な信用や業績と結びついている人にとって、改姓は大きな問題になり得ます。
さらに、姓は単なる記号ではなく、自分自身の人生や家族とのつながりを表すものでもあります。結婚によって一方だけが姓を変えなければならないことに、違和感を持つ人もいます。
選択的夫婦別姓に賛成する人たちは、同姓を希望する夫婦の選択を否定しているわけではありません。同姓を選びたい夫婦はこれまで通り同姓を選べばよく、別姓を希望する夫婦には別姓という選択肢を認めるべきだという考え方です。
一方で、選択的夫婦別姓に慎重な意見もあります。
代表的なのは、家族の一体感に関する懸念です。夫婦や親子の姓が違うことで、家族としてのまとまりが弱まるのではないかと考える人がいます。
また、子どもの姓をどう決めるのかという問題もあります。夫婦が別姓を選んだ場合、子どもは父母どちらの姓を名乗るのか、きょうだいで姓が異なることを認めるのか、途中で変更できるのかといった点について、明確な制度設計が必要になります。
さらに、日本の戸籍制度との関係を慎重に考えるべきだという意見もあります。戸籍は日本の家族関係を記録する制度であり、夫婦別姓を導入する場合には、戸籍の記載方法や行政手続きの整備も必要になります。
このような理由から、選択的夫婦別姓の導入には慎重であるべきだと考える人もいます。
ただし、慎重派の中にも、旧姓使用の拡大には賛成する人や、子どもの姓のルールが明確になれば検討できると考える人もいます。

選択的夫婦別姓をめぐる議論で、多くの人が気にするのが子どもの姓です。
夫婦が別姓を選んだ場合、子どもはどちらの姓を名乗るのかという問題が出てきます。
制度案では、子どもの姓について一定のルールを設けることが想定されてきました。たとえば、婚姻時にあらかじめ子どもの姓を決める方法や、兄弟姉妹の姓を統一する方法などが考えられます。
この点は、選択的夫婦別姓を導入する場合に避けて通れない重要な論点です。
導入に慎重な人たちは、子どもが混乱するのではないか、家族で姓が違うことで不利益を受けるのではないかと心配します。
一方、導入を求める人たちは、すでにひとり親家庭、再婚家庭、国際結婚家庭など、姓のあり方が多様な家庭は存在しており、姓が違うことだけで家族関係が壊れるわけではないと考えています。
子どもの姓については、感情論だけでなく、実際にどのような制度にすれば混乱を防げるのかを具体的に議論することが重要です。

では、選択的夫婦別姓はいつから導入される可能性があるのでしょうか。
2026年現在、導入時期は決まっていません。
選択的夫婦別姓を実現するには、民法などの法律を改正する必要があります。そのため、国会で法案が提出され、審議され、可決されなければなりません。
法制審議会の答申からすでに長い時間が経っていますが、政治的な合意が形成されていないため、制度化には至っていません。
ただし、近年は企業、自治体、経済団体、法律家団体、当事者団体などから、制度導入を求める声が以前よりも目立つようになっています。
また、旧姓使用の拡大だけでは対応しきれない問題があることも、社会の中で少しずつ認識されるようになっています。
そのため、今後の国会の議論や世論の変化によっては、制度化に向けた動きが進む可能性はあります。
ただし、現時点で「何年何月から始まる」と言える段階ではありません。
ここまでの内容を整理すると、「夫婦別姓はいつから?」という問いには、次のように答えることができます。
つまり、選択的夫婦別姓は、制度案としては1990年代から存在しているものの、実際の制度としてはまだ始まっていません。
この点を混同しないことが大切です。
選択的夫婦別姓に反対する意見の中には、「夫婦の姓が違うと家族の一体感が失われる」というものがあります。
たしかに、同じ姓を名乗ることに家族としてのつながりを感じる人は多いでしょう。結婚によって同じ姓になることを大切に考える人もいます。
しかし、選択的夫婦別姓は、同姓を希望する夫婦から同姓を奪う制度ではありません。
同じ姓を名乗りたい夫婦は、これまで通り同姓を選ぶことができます。別姓を希望する夫婦にだけ、別姓という選択肢を認める制度です。
そのため、選択的夫婦別姓の本質は、家族の形を一つに固定するのではなく、夫婦が自分たちに合った形を選べるようにすることにあります。
家族の一体感を姓に求める人もいれば、姓が違っても家族としての信頼や愛情は変わらないと考える人もいます。
このような価値観の違いをどう受け止めるかが、選択的夫婦別姓を考えるうえで重要なポイントです。
選択的夫婦別姓を導入する場合、いくつかの課題を整理する必要があります。
第一に、子どもの姓のルールです。夫婦が別姓を選んだ場合、子どもの姓をどのように決めるのかを明確にする必要があります。
第二に、戸籍制度との関係です。夫婦別姓を導入した場合でも、親子関係や家族関係を正確に記録できる仕組みを整える必要があります。
第三に、行政手続きや民間手続きの整備です。住民票、戸籍、パスポート、金融機関、保険、学校、勤務先など、さまざまな場面で制度変更に対応する必要があります。
第四に、社会的な理解です。制度ができても、別姓を選んだ夫婦や子どもが偏見を受けるようでは、十分に機能しているとは言えません。
選択的夫婦別姓は、法律を変えるだけで終わる問題ではありません。社会の中で、多様な家族のあり方をどう受け止めるかという問題でもあります。
夫婦別姓はいつから始まるのかという問いに対して、最も正確な答えは、2026年現在、まだ開始時期は決まっていないというものです。
ただし、選択的夫婦別姓の制度案は、すでに1996年に法制審議会によって正式に示されています。つまり、制度化に向けた議論は30年近く続いていることになります。
選択的夫婦別姓は、夫婦全員を別姓にする制度ではありません。同姓を選びたい夫婦は同姓を選び、別姓を選びたい夫婦は別姓を選べるようにする制度です。
現在の日本では、結婚する際に夫婦のどちらか一方が姓を変える必要があります。旧姓使用は広がっていますが、法律上の氏名とは異なるため、根本的な解決にはならないという指摘もあります。
一方で、家族の一体感、子どもの姓、戸籍制度との関係など、慎重に議論すべき課題も残されています。
選択的夫婦別姓は、単に姓をどうするかという問題ではありません。個人の尊重、男女平等、家族のあり方、社会の多様性に関わるテーマです。
今後、国会でどのような議論が進むのか、そして日本の婚姻制度がどのように変わっていくのかが注目されます。