日本の国家石油備蓄基地は、北海道から九州まで全国に10か所あります。備蓄方式は、地上タンク方式、地中タンク方式、水封式地下岩盤タンク方式、洋上タンク方式に分かれており、地域の地形や地質、港湾との関係、安全性などを考えて配置されています。
日本は原油の多くを海外からの輸入に頼っています。そのため、中東情勢の緊迫、海上輸送の混乱、戦争や制裁、大規模災害などによって石油の供給が不安定になると、国内の暮らしや産業に大きな影響が及ぶ可能性があります。
こうした万一の事態に備えるため、日本では石油を計画的にためておく「石油備蓄」が行われています。その中核となるのが、全国に整備された国家石油備蓄基地です。
この記事では、日本の石油備蓄基地一覧を整理しながら、それぞれの基地の所在地、備蓄方式、特徴、日本の石油備蓄制度の仕組みまでわかりやすく解説します。
石油備蓄基地とは、原油や石油製品を大量に保管し、供給危機に備えるための施設です。
日本では、石油の安定供給を守るために、主に次の3つの仕組みが組み合わされています。
このうち、一般に「石油備蓄基地一覧」として紹介されることが多いのは、国の石油備蓄政策のもとで整備された国家石油備蓄基地です。JOGMECは全国の国家石油備蓄基地に基地事務所を置き、運営・管理に関わっています。
石油備蓄基地は、単に石油をためておく場所ではありません。輸入が止まったり、供給が不安定になったりしたときに、国内の暮らしや産業を支えるための重要インフラです。いわば、日本のエネルギー安全保障を支える「最後の備え」の一つといえます。

日本の石油備蓄は、大きく分けて「国家備蓄」「民間備蓄」「産油国共同備蓄」の3本柱で成り立っています。
国家備蓄は、国が主体となって備蓄する石油です。国家石油備蓄基地などに保管され、緊急時には政府の判断によって放出されます。
国家備蓄は、民間企業の在庫だけでは対応できないような大きな供給危機に備えるための制度です。日本の石油安全保障を支える中心的な仕組みといえます。
民間備蓄は、石油会社などの民間事業者に法律で義務づけられている備蓄です。製油所、油槽所、流通拠点などに分散して保管されています。
民間備蓄は、日常の石油供給と近い場所にあるため、実際の流通と結びつきやすいという特徴があります。国家備蓄と民間備蓄を組み合わせることで、より厚みのある備えができます。
産油国共同備蓄は、産油国の国営石油会社などが日本国内のタンクを活用して原油を保管する仕組みです。
平常時は産油国側が商業的に利用できますが、供給危機が起きた場合には、日本向けに優先供給できるようにする狙いがあります。日本と産油国の協力関係を活用した備蓄制度です。
日本の石油備蓄量は時期によって変動しますが、資源エネルギー庁の公表資料では、国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄を合わせて、およそ200日分を超える規模となっています。
近年の公表値では、国家備蓄が120日分前後、民間備蓄が80日分前後、産油国共同備蓄が数日分程度という構成で示されています。
ただし、石油備蓄で重要なのは、単純な量だけではありません。どこに保管されているのか、どのような方式で保管されているのか、必要なときにどのように放出できるのかも重要です。
その意味で、石油備蓄基地一覧を知ることは、日本のエネルギー安全保障を具体的に理解する第一歩になります。
日本の国家石油備蓄基地は、全国に10か所あります。所在地と備蓄方式を一覧にすると、次のようになります。
| 基地名 | 所在地 | 備蓄方式 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 苫小牧東部国家石油備蓄基地 | 北海道苫小牧市 | 地上タンク方式 | 北海道・北日本の大規模備蓄拠点 |
| むつ小川原国家石油備蓄基地 | 青森県六ヶ所村 | 地上タンク方式 | 東北北部に位置する重要拠点 |
| 久慈国家石油備蓄基地 | 岩手県久慈市 | 水封式地下岩盤タンク方式 | 地下岩盤を活用した代表的な備蓄基地 |
| 秋田国家石油備蓄基地 | 秋田県男鹿市 | 地中タンク方式 | 地中タンク方式を採用する特徴的な基地 |
| 福井国家石油備蓄基地 | 福井県福井市 | 地上タンク方式 | 日本海側の備蓄体制を支える基地 |
| 菊間国家石油備蓄基地 | 愛媛県今治市 | 水封式地下岩盤タンク方式 | 瀬戸内海側に位置する地下岩盤タンク基地 |
| 白島国家石油備蓄基地 | 福岡県北九州市 | 洋上タンク方式 | 響灘沖合にある海上立地型の備蓄基地 |
| 上五島国家石油備蓄基地 | 長崎県新上五島町 | 洋上タンク方式 | 五島列島周辺の海域を活用した備蓄基地 |
| 串木野国家石油備蓄基地 | 鹿児島県いちき串木野市 | 水封式地下岩盤タンク方式 | 南九州にある地下岩盤タンク基地 |
| 志布志国家石油備蓄基地 | 鹿児島県東串良町 | 地上タンク方式 | 南九州の地上タンク方式の備蓄拠点 |
ここからは、日本の国家石油備蓄基地10か所について、それぞれの特徴を順番に見ていきます。
苫小牧東部国家石油備蓄基地は、北海道苫小牧市にある国家石油備蓄基地です。備蓄方式は地上タンク方式です。
苫小牧は北海道を代表する港湾都市の一つであり、広い土地と港湾機能を生かした備蓄拠点として重要な役割を持っています。北海道・北日本側のエネルギー安全保障を考えるうえで、重要な基地です。
地上タンク方式は、巨大なタンクを地上に設置して原油を貯蔵する方式で、構造がわかりやすく、運用実績も豊富です。
むつ小川原国家石油備蓄基地は、青森県六ヶ所村にあります。こちらも地上タンク方式を採用しています。
六ヶ所村周辺は、エネルギー関連施設が集まる地域として知られています。むつ小川原基地は、本州北部における石油備蓄拠点として、北日本の供給安定を支える役割を担っています。
北海道の苫小牧東部基地とあわせて、北日本側の備蓄体制を厚くする意味があります。
久慈国家石油備蓄基地は、岩手県久慈市にある基地です。備蓄方式は水封式地下岩盤タンク方式です。
水封式地下岩盤タンク方式とは、地下の岩盤内に大きな空洞を設け、地下水圧を利用しながら原油を貯蔵する方式です。地上に巨大なタンクを並べる方式とは異なり、地下空間を利用する点に特徴があります。
地下に貯蔵するため、景観への影響を抑えやすく、外部からの影響を受けにくいという利点があります。久慈基地は、日本の石油備蓄技術を示す代表的な基地の一つです。
秋田国家石油備蓄基地は、秋田県男鹿市にあります。備蓄方式は地中タンク方式です。
地中タンク方式は、タンクを地中に設置して原油を保管する方式です。地上にタンクを建てる方式と比べて、景観や安全性の面で配慮しやすいという特徴があります。
日本の国家石油備蓄基地の中で、秋田基地は地中タンク方式を採用している点が大きな特徴です。日本海側の備蓄体制を支える重要な基地でもあります。
福井国家石油備蓄基地は、福井県福井市にあります。備蓄方式は地上タンク方式です。
日本の石油備蓄基地は、太平洋側だけでなく日本海側にも配置されています。これは、災害や輸送ルートの分断などに備え、備蓄拠点を一地域に集中させないためです。
福井基地は、日本海側の重要な国家石油備蓄基地として、地域分散型の備蓄体制を支えています。
菊間国家石油備蓄基地は、愛媛県今治市にあります。備蓄方式は水封式地下岩盤タンク方式です。
菊間基地は、瀬戸内海側に位置する国家石油備蓄基地です。瀬戸内海周辺には産業集積地や物流拠点も多く、西日本のエネルギー供給を考えるうえで重要な地域です。
地下岩盤を利用する方式であるため、地上に大規模なタンク群が並ぶ基地とは異なる構造を持っています。西日本側の備蓄体制を支える重要な拠点です。
白島国家石油備蓄基地は、福岡県北九州市にある国家石油備蓄基地です。備蓄方式は洋上タンク方式です。
白島基地は、響灘沖合に位置する海上立地型の備蓄基地として知られています。陸上に巨大なタンクを設置する方式とは異なり、海上の構造物を活用して原油を備蓄する点が特徴です。
北九州は、古くから工業や物流の拠点として発展してきた地域です。白島基地は、北部九州だけでなく、西日本全体のエネルギー安全保障を支える重要な基地の一つです。
上五島国家石油備蓄基地は、長崎県新上五島町にあります。備蓄方式は白島基地と同じく洋上タンク方式です。
五島列島周辺の海域を活用した備蓄基地であり、日本の地理条件を生かした特徴的な国家石油備蓄基地です。離島海域を利用して大規模な備蓄機能を持たせている点が印象的です。
上五島基地は、陸上に広大なタンク用地を確保する方式とは異なり、海域を活用することで備蓄拠点を分散させる役割を果たしています。
串木野国家石油備蓄基地は、鹿児島県いちき串木野市にあります。備蓄方式は水封式地下岩盤タンク方式です。
九州南部に位置する地下岩盤タンク方式の備蓄基地で、南日本側のエネルギー安全保障を支える役割を担っています。
地下岩盤を活用することで、地上の土地利用や景観への影響を抑えながら、大量の原油を備蓄できる点が特徴です。
志布志国家石油備蓄基地は、鹿児島県東串良町にあります。備蓄方式は地上タンク方式です。
志布志湾周辺は港湾機能を持つ地域であり、南九州の物流やエネルギー供給を考えるうえで重要な場所です。志布志基地は、南日本側における大規模な地上タンク方式の備蓄拠点として位置づけられます。
同じ鹿児島県内には串木野基地もあり、鹿児島県は日本の国家石油備蓄体制の中でも重要な地域の一つといえます。

日本の国家石油備蓄基地は、すべて同じ構造ではありません。基地ごとに、地上タンク方式、地中タンク方式、水封式地下岩盤タンク方式、洋上タンク方式が使い分けられています。
これは、地形、地質、海との位置関係、安全性、建設コスト、運用のしやすさなどを総合的に考えて整備されてきたためです。
地上タンク方式は、巨大なタンクを地上に設置して原油を備蓄する方式です。構造がわかりやすく、技術的にも一般的で、操業実績が豊富です。
日本の国家石油備蓄基地では、苫小牧東部、むつ小川原、福井、志布志などが地上タンク方式を採用しています。
地中タンク方式は、タンクを地中に設置して原油を備蓄する方式です。地上に大きなタンクを並べる方式に比べて、景観への影響を抑えやすいという特徴があります。
日本の国家石油備蓄基地では、秋田国家石油備蓄基地がこの方式を採用しています。
水封式地下岩盤タンク方式は、地下の岩盤内に空洞をつくり、地下水圧を利用して原油を貯蔵する方式です。
原油を地下に貯蔵するため、地上の景観への影響を抑えやすく、外部からの影響も受けにくいとされています。日本では、久慈、菊間、串木野がこの方式を採用しています。
洋上タンク方式は、海上または海域を活用して原油を備蓄する方式です。陸上に広大なタンク用地を確保するのではなく、日本の海に囲まれた地理条件を生かして備蓄拠点を整備している点が特徴です。
日本では、白島と上五島が洋上タンク方式を採用しています。
石油備蓄基地と製油所は、どちらも石油に関係する施設ですが、役割は異なります。
石油備蓄基地は、主に原油などを非常時に備えて保管する施設です。一方、製油所は、原油を精製してガソリン、軽油、灯油、重油、ナフサなどの石油製品をつくる施設です。
備蓄基地にある原油は、そのまま自動車の燃料として使えるわけではありません。必要に応じて製油所などへ送られ、精製されたあと、ガソリンスタンドや工場、家庭、発電所などへ供給されます。
つまり、石油備蓄基地は「ためる施設」、製油所は「使える形に加工する施設」と考えるとわかりやすいです。
日本の石油備蓄制度は、国家備蓄だけで成り立っているわけではありません。国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄が組み合わさることで、より強い備えになっています。
| 種類 | 主体 | 主な保管場所 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 国家備蓄 | 国 | 国家石油備蓄基地など | 供給危機に備える国の中核的な備え |
| 民間備蓄 | 石油会社など | 製油所、油槽所、流通拠点など | 法律に基づいて民間事業者が行う備蓄 |
| 産油国共同備蓄 | 産油国の国営石油会社など | 日本国内のタンク | 産油国との協力による備蓄・優先供給の仕組み |
このように、日本の石油安全保障は、国だけでなく民間企業や産油国との協力によって支えられています。
日本の石油備蓄基地一覧を見ると、北海道、東北、日本海側、瀬戸内海、九州、離島海域まで、かなり広い範囲に分散していることがわかります。
これは偶然ではありません。もし石油備蓄基地が一つの地域に集中していた場合、大地震、津波、台風、事故、戦争、港湾障害などでその地域が被害を受けると、国家備蓄全体が一気に機能低下するおそれがあります。
そのため、石油備蓄基地を全国に分散して配置することは、エネルギー安全保障の基本的な考え方です。
また、石油備蓄基地は「ためる場所」であると同時に、必要なときに放出しやすい場所でなければなりません。港湾、製油所、国内の物流網との接続を考え、東日本・西日本・北日本・南日本にバランスよく配置することが重要です。

石油備蓄基地は、普段の生活ではあまり意識されにくい存在です。しかし、次のような局面ではニュースなどで注目されることがあります。
日本が輸入する原油の多くは中東地域に依存しています。そのため、ホルムズ海峡周辺の緊張、地域紛争、国際情勢の悪化などが起こると、石油の安定供給に対する不安が高まり、石油備蓄への関心も高まります。
戦争、経済制裁、海上輸送の混乱、港湾障害、産油国の生産トラブルなどによって、世界的に石油供給が不安定になることがあります。
こうしたとき、各国の備蓄制度や備蓄放出の可能性が議論され、日本の石油備蓄基地にも注目が集まります。
国内で大地震や津波、台風などの大規模災害が発生し、製油所や物流網に被害が出た場合、石油製品の供給が滞る可能性があります。
そのような場合にも、石油備蓄の存在は重要です。災害時の燃料供給は、救援活動、物流、発電、医療、避難生活などに直結します。
原油価格やガソリン価格が高騰すると、「石油備蓄を放出すれば価格が下がるのか」という議論が起こることがあります。
ただし、石油備蓄は本来、価格対策そのものではなく、供給危機に備える制度です。備蓄放出が市場心理や供給安定に影響することはありますが、ガソリン価格を直接すぐに下げるためだけの仕組みではありません。
この点は誤解されやすいので、石油備蓄はあくまで「供給の安全を守るための制度」と理解することが大切です。
石油備蓄基地一覧は、単なる地名のリストではありません。そこには、日本がどのようにエネルギー安全保障を考えてきたかが表れています。
北海道や東北に複数の基地があることからは、北日本側の備えが見えます。日本海側や瀬戸内海側、九州にも基地があることからは、地域分散を重視していることがわかります。さらに、白島や上五島のように洋上タンク方式を採用した基地があることからは、日本の海に囲まれた地理条件を活用していることもわかります。
また、地上タンク、地中タンク、地下岩盤タンク、洋上タンクという複数の方式を組み合わせている点も重要です。一つの方式だけに頼らず、地域の条件に合わせて備蓄方法を使い分けているのです。
ニュースで「石油備蓄放出」という言葉を見たとき、どこか一か所のタンクから単純に石油を出す話ではありません。全国の備蓄基地、民間備蓄、製油所、物流網、政府の政策判断が組み合わさって初めて、石油の安定供給が支えられています。
日本の国家石油備蓄基地は、全国に10か所あります。
これらの基地では、地上タンク方式、地中タンク方式、水封式地下岩盤タンク方式、洋上タンク方式など、複数の備蓄方式が採用されています。
日本は原油の多くを海外からの輸入に頼っているため、石油備蓄は非常に重要です。国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄を組み合わせることで、供給危機や大規模災害、国際情勢の変化に備えています。
石油備蓄基地は、普段はあまり目立たない施設です。しかし、ガソリン、軽油、灯油、重油など、私たちの暮らしや産業を支えるエネルギーの安定供給に深く関わっています。
石油備蓄基地一覧を知ることは、日本がどのようにエネルギーのリスクに備えているのかを理解するうえで、とても大切です。普段は見えにくい存在ですが、石油備蓄基地は日本の生活と経済を支える重要な土台なのです。