「外国人が生活保護を受けているって本当?」「それって日本人の税金なのに……」
こうした声をインターネット上で見かけることが増えてきました。生活保護は、本来「日本国民の最後のセーフティネット」とされていますが、実際には一部の外国人もこの制度の対象になっています。
本記事では、「外国人の生活保護」について正確な情報をもとに背景や現状、よくある誤解を解説し、読者の理解を深めることを目的としています。
生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づき、「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する制度です。
対象となるのは、以下の条件を満たした人です:
実は、生活保護法では「外国人」は本来、制度の対象外です。
しかし1954年(昭和29年)に厚生省(当時)が通達を出し、「永住者」など一定の在留資格を持つ外国人にも人道的配慮により生活保護を準用すると定めました。
「準用」とは、法律の条文が直接適用されないけれども、ほぼ同じように扱うという意味です。つまり、外国人への生活保護は「法律の義務」ではなく、「行政指導・政策判断」による運用という位置づけです。
以下のような在留資格を持つ外国人が対象です:
※ 留学生や観光ビザの人は原則として対象外です。
厚生労働省の統計によると、2022年時点で生活保護を受けている世帯のうち、**外国人世帯は約2.0〜2.5%**とされています。
つまり、圧倒的多数は日本人世帯です。
年度 | 外国人受給世帯 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
2020 | 約43,000世帯 | 約2.3% |
2021 | 約41,000世帯 | 約2.2% |
→ 不法滞在者は制度の対象外です。受けられません。
→ 審査基準は日本人と同じです。むしろ書類や在留資格の確認が必要なため、審査は厳しめ。
→ 外国人はむしろ申請に心理的・言語的なハードルを感じており、必要なのに受けていないケースもあります。
論点 | 主な意見 |
財政負担 | 「日本人の税金で支えるのは不公平では?」という声がある |
人道的配慮 | 「社会の一員として生活できるよう保護すべき」という立場も |
法的根拠 | 生活保護法が外国人を対象としていないことから、制度の見直し論も存在 |
「外国人なのに、なぜ日本の生活保護が受けられるの?」
「そもそも、外国人に生活保護を認めている国なんて日本だけなのでは?」
ネット上にはこうした疑問や批判が少なからず見られます。
しかし実態をよく調べてみると、そこには法律、国際人権、制度の複雑な背景があるのです。
実は、生活保護法(1950年制定)は「日本国民」を対象としています。
つまり、外国人は本来の法律の対象外です。
1954年に出された厚生省(当時)の**「局長通知」**がカギです。
「生活に困窮する永住者その他の外国人についても、当分の間、生活保護法の準用により対応すること」
この通知により、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」などの在留資格を持つ外国人は、人道的観点から生活保護の対象とされているのです。
つまり、外国人に対する生活保護は法律ではなく、「行政運用」として続いています。
国名 | 外国人への生活保護の可否 | 条件 |
---|---|---|
🇩🇪 ドイツ | 受給可能 | 一定の滞在期間・就労歴が必要 |
🇫🇷 フランス | 受給可能 | 法定居住年数などの条件付き |
🇬🇧 イギリス | 制限付きで可能 | 滞在資格と就労状況により判断 |
🇺🇸 アメリカ | 州によって異なる | 一部プログラムに制限あり |
🇨🇦 カナダ | 受給可能 | 永住権者は原則可能 |
つまり、外国人に社会保障を提供しているのは日本だけではありません。むしろ、国際的に一般的な考え方とされています。
戦後の国際人権規約(特に「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」)の精神に基づき、「すべての人に最低限の生活を保障すべき」という国際的な合意が背景にあります。
永住者や長期滞在者は、地域社会に溶け込み、税金を納め、労働力として貢献している人が多いです。彼らが困窮してしまったときに支えないと、社会全体に不安定さをもたらします。
「日本人の配偶者等」といった在留資格で来日し、日本人家族と生活する人々にも、人間らしい生活を保障する必要があります。
誤解 | 事実 |
不法滞在の外国人が生活保護をもらっている | ❌ 不法滞在者は対象外。在留資格のある人のみが対象です。 |
外国人が生活保護を悪用している | ❌ 受給審査は厳しく、不正受給は発覚すれば停止されます。 |
外国人の受給者が急増している | ❌ 外国人の生活保護受給者数は全体の約2%程度で、むしろ減少傾向です。 |
厚生労働省のデータによると、2023年時点で生活保護を受けている外国人世帯は約38,000世帯。
これは全生活保護世帯(約160万世帯)の2.3%前後であり、9割以上は日本人です。
A. はい。永住申請の審査では「自立して生活しているか」が重要視されるため、受給歴があると不利になる可能性があります。
A. 原則として受けられません。留学ビザでは在留資格に制限があるため、対象外です。
A. 廃止の是非は政治的・法的な判断が必要です。ただし、急に打ち切れば人道問題・社会不安を招く可能性もあるため慎重な議論が必要です。
A. いいえ、原則としてされません。受給したことを理由に在留資格を取り消されることは稀です。ただし将来の永住申請に影響する可能性はあります。
A. ここ数年は横ばい、または微減の傾向にあります。急増しているという事実はありません。
A. 難民申請中で就労資格のない人でも、状況によっては生活保護や自治体独自の支援を受けられる場合があります。