近年、よく耳にするようになった「データサイエンス」という言葉ですが、実際にはどのようなものでしょうか?また、私たちの身の回りにどのように関係しているのでしょうか?この記事では、「データサイエンスって何?」という基本から、「実は身近なところで使われている!」というデータサイエンスの身近な例まで、わかりやすく紹介していきます。
データサイエンスとは、膨大なデータを収集・整理・分析して、そこから意味のある情報を導き出す学問分野です。統計学やプログラミング、AI(人工知能)などを駆使して、社会の課題やビジネスの課題を解決する手段として活用されています。
たとえば…
など、幅広い分野で活躍しており、今やあらゆる業界に欠かせない存在となっています。
さらに近年では、ChatGPTのようなAIツールの開発にもデータサイエンスの手法が使われており、私たちが日々接するテクノロジーの基盤にもなっています。
ではここからは、日常生活で「実はデータサイエンスが使われている!」という具体例を見ていきましょう。
朝のニュースやスマホのアプリで見る天気予報は、膨大な気象データ(気温、気圧、湿度、風速など)を解析して作られています。過去のデータと現在の観測値を組み合わせて、統計的に「明日の天気は雨の可能性が60%です」といった予測が出されるのです。
また、気象庁ではスーパーコンピューターを使って、大気の動きをシミュレーションする数値予報モデルも利用されています。これらの仕組みを支えているのもデータサイエンスです。
Google MapsやYahoo!地図などのナビゲーションアプリも、リアルタイムで集まるGPSデータや交通量の統計を分析し、「今この道は渋滞中」「ここは工事中」といった情報を表示しています。目的地までの最適なルートも、データサイエンスによって計算されています。
加えて、ユーザーの移動履歴などのビッグデータをもとに、通勤時間帯の渋滞予測や、公共交通機関の遅延予測なども可能となっています。
Amazonや楽天市場などで「あなたにおすすめ」と表示される商品は、過去の購入履歴や閲覧履歴、他のユーザーの動向などをもとにAIが分析して提示しています。これも典型的なデータサイエンスの応用です。
商品の在庫管理や価格の最適化、セール時期の設定などにも膨大なデータが使われています。
NetflixやYouTube、Spotifyなどでも、視聴履歴を分析して「あなたが好きそうな映画」「次に聴くべき音楽」などを提示しています。これもデータサイエンティストが活躍する分野です。
ユーザーごとの嗜好に合わせたパーソナライズされた体験は、まさにデータの力によって実現されています。
次は、教育や学校生活での活用例を見てみましょう。
中学や高校では、学力テストの成績をもとに「どの科目が苦手か」「どの問題で間違いが多いか」などを分析し、個別指導や補習に活かしている学校も増えています。
また、模試や全国学力テストの結果は、統計的に分析され、地域ごとの学力の傾向などが把握されています。
さらに、大学入試においても、過去の合格者データをもとに、志望校合格の可能性を推定する「合格判定システム」なども存在します。
オンライン教材では、受講者の解答傾向や学習スピードなどをデータとして蓄積し、最適な問題を提示したり、学習の進捗を自動的に評価したりする機能が搭載されています。これもデータサイエンスの力によるものです。
EdTech(Education + Technology)分野の発展により、教育の個別最適化が進み、データサイエンスの役割はますます重要になっています。
続いては、社会や経済の中でどのように使われているかをご紹介します。
お店では、どの商品がいつどれだけ売れたかという「POSデータ(販売情報)」を収集しています。これにより…
など、在庫の最適化や利益の最大化が行われています。
また、ポイントカードやアプリによって得られる個人ごとの購買履歴も、マーケティング施策に活用されています。
飲食チェーンでは、どのメニューがよく注文されているか、どんな時間帯に混むかなどを分析して、新メニューの開発や人員配置の最適化に役立てています。
Uber Eatsなどのデリバリーサービスでは、注文傾向の分析をもとにおすすめの店舗表示や配達ルートの最適化が行われています。
銀行では、ローンを組むときの返済能力の評価、保険会社では事故の発生リスクの予測などにデータサイエンスが使われています。過去のデータをもとに将来のリスクを見積もることで、損失を最小限に抑える工夫がなされています。
また、不正取引の検知(不正アクセスやカード詐欺)などにも、リアルタイムのデータ分析が活用されています。
健康や医療の分野でも、私たちの生活を支える多くのデータが活用されています。
Apple WatchやFitbitなどのウェアラブルデバイスでは、心拍数、歩数、睡眠時間などをリアルタイムで記録し、健康状態をモニタリングしています。これらのデータはユーザーごとの傾向分析にも使われます。
さらに、これらの情報は医療機関と連携して、生活習慣病の予防指導にも活用され始めています。
病院では、患者の診療記録や検査結果をAIで分析し、病気の早期発見や診断支援に役立てています。たとえば、画像診断AIはがんの兆候を人間よりも早く見つけるケースもあります。
また、感染症の流行予測やワクチンの接種計画立案にも、ビッグデータと統計的手法が使われています。
自治体や行政でも、住民のためにデータを活用する場面が増えています。
地震や台風などの自然災害に対して、SNSの投稿や地震計のデータをもとに「今どこでどれくらいの揺れがあったか」などをリアルタイムで把握し、避難指示を出すことができます。
また、国土交通省などの官公庁は、過去の災害データをもとに危険区域を特定したり、防災マップを作成したりして、住民に注意を呼びかけています。これらの分析にもデータサイエンスが活用されています。
自治体によっては、ごみの回収量や交通状況のデータをもとに、「どのルートで回収すれば最も効率が良いか」を分析し、燃料や時間の節約につなげています。
また、センサー付きのゴミ箱が設置されている地域では、「ゴミ箱の満杯状況」をリアルタイムで把握し、必要なときにだけ回収するという仕組みもあります。これにより、無駄な回収を減らし、作業の効率化が図られています。
都市開発や再開発計画においては、人口の推移や年齢構成、移動パターン、通勤・通学のルートなどの膨大なデータをもとに、将来のまちづくりが計画されます。
たとえば、高齢化が進む地域では、医療施設やバリアフリー施設の拡充を計画することができます。これもデータサイエンスによる未来予測の応用例です。
ここまででわかる通り、データサイエンスは非常に幅広い分野で活躍しています。では、そのデータを扱う「データサイエンティスト」はどんな仕事をしているのでしょうか?
といった多くの工程を担当します。理系だけでなく、文系の視点も必要とされ、チームで協力してプロジェクトを進めることも多い職種です。
私たちの生活がIT化し、SNSやスマホの普及により、「ビッグデータ」と呼ばれる膨大な情報が日々生まれています。これらの情報を適切に扱い、活用することが重要になってきたため、データサイエンスはどんどん注目されるようになったのです。
また、近年ではChatGPTや画像生成AIのような高度なAI技術も、すべて大量のデータを学習して生まれたものです。私たちの社会は、もはや「データなしでは動かない」と言っても過言ではありません。
さらに、気候変動や感染症対策、貧困問題など、世界的な課題を解決するためにもデータサイエンスは大きな可能性を秘めています。行政や国際機関も、データをもとに政策を設計する「エビデンス・ベースド・ポリシー(EBPM)」を進めており、社会全体での活用が進んでいます。
データサイエンスというと、難しい数学やプログラミングを使う専門的な世界だと感じてしまいがちですが、実際には私たちの日常生活に深く関わっています。
これらすべてが、データサイエンスの力で実現されています。これからの時代、データを理解し、活用できる力はますます大切になっていきます。
A1. 主に以下のスキルが必要とされます。
ただし、すべてを完璧にこなす必要はなく、分野や役割に応じて専門が分かれることもあります。
A2. はい、最近では中高生向けのプログラミング教育やデータ分析の教材も充実しています。特に、PythonやExcelを使った簡単なデータ分析から始めるのがおすすめです。
学校で「情報」や「統計」の授業が導入されているほか、各地で子ども向けのデータサイエンス講座も開催されています。
A3. 書籍やオンライン講座、YouTubeなどで入門知識を得ることができます。また、大学では「情報学部」や「データサイエンス学部」が設置されるなど、専門的に学べる環境も整ってきています。
また、民間企業でも人材育成を目的とした講座が増えており、社会人になってから学び直す「リスキリング」の対象分野としても注目されています。
今後も社会のあらゆる分野でデータサイエンスの活用は広がっていくでしょう。難しく考えず、「まずは身の回りのデータに注目する」ことから始めてみてはいかがでしょうか。