2025年5月、自民・公明・立憲民主の3党が年金制度改革で合意し、「基礎年金の底上げ」を含む修正案の今国会での成立が現実味を帯びています。この“底上げ”とは何を意味し、私たちの暮らしにどう影響するのでしょうか?以下で詳しく解説します。
「基礎年金」は、公的年金制度の中で最も基本となるもので、「国民年金」とも呼ばれます。会社に勤めていない自営業者やフリーランスなど、厚生年金に加入していない人が対象です。
つまり、基礎年金はすべての日本人が老後に最低限の生活を送るための「最低保証部分」といえます。
しかし、この6.7万円という金額は、家賃や食費、医療費などを考えると、とても十分とは言えません。そのため、特に単身高齢者などは生活が苦しくなるケースが少なくありません。
また、近年は非正規雇用の増加により、基礎年金だけしか受け取れない高齢者の割合も増加しています。こうした人々にとって、基礎年金の水準維持は生活そのものを左右する大きな問題となります。
「底上げ」とは、将来的に基礎年金の金額が物価や賃金の変化に比べてあまりにも低くなりすぎるのを避けるために、補助的に年金額を引き上げる仕組みです。
将来、経済が悪化して月6.7万円の基礎年金では暮らせないとわかったとき、政府がその不足分を足して「例えば8万円にする」といったイメージです。これはいわば「緊急時の年金バッファ」のようなものです。
この制度をあらかじめ法案に書いておくことで、「将来、基礎年金が減っても自動的に補助が入る」という安心感が生まれます。
また、生活保護とは異なり、自動的かつ公平に支給される仕組みであるため、受給者のプライバシーや尊厳も守られます。
2025年の法案修正案では、以下のような条項が盛り込まれました:
項目 | 内容 |
---|---|
📜明記事項 | 2029年の財政検証の結果次第で「底上げ策」を実施すると法案に明記 |
💼財源措置 | 厚生年金の積立金を使って基礎年金の補填にあてる。その影響を厚生年金側に出さないよう、政府が調整措置を実施 |
📊想定コスト | 年2兆円規模の財源が必要になる可能性あり(その半分は税金) |
さらに、将来の財政への影響も考慮され、国が責任を持って厚生年金の減少分をカバーする補助制度も同時に設ける予定です。
また、底上げの基準や金額の決め方についても、専門家による第三者委員会での検討が進められると見られています。
政府は当初、この「底上げ策」を法案に盛り込む予定でしたが、
といった声が出たため、いったん削除されていました。しかし、立憲民主党の主張を受けて、再度修正案に盛り込まれました。今回は与野党の合意が取れたため、法案成立の可能性が高くなっています。
また、近年問題となっている「老後の生活保護受給者の増加」や「高齢者の孤独死」などの社会課題に対する間接的な対策にもなります。
つまり、今すぐ何かが変わるわけではなく、未来の備えとして制度を整える段階です。
また、それまでの間に追加の財源確保策や具体的な運用ルールの整備が進められるとみられています。
この制度はすぐに実施されるわけではなく、2029年の財政検証で深刻な下落予測が出た場合に発動されます。
つまり「年金が本当に足りなくなったときの保険」として法案に書いておくことで、
という役割を果たすことが期待されています。
→ 原則として20歳以上60歳未満の間に保険料を納めた人が対象です(免除期間も一定条件でカウントされます)。
→ 厚生年金は、会社員や公務員が加入し、基礎年金に上乗せされる年金です。将来的には2階建ての年金制度と言われます。
→ 今すぐ実施されるわけではなく、「財政検証の結果」に応じて発動される“準備措置”です。
→ 現実的に基礎年金だけでは財源が足りない可能性があるため、他の年金制度との連携で全体の安定を図る考えです。