2025年のワールドシリーズでロサンゼルス・ドジャースが連覇を果たした直後、選手たちの背中に大きくプリントされた言葉――それが “WE RULE OCTOBER” でした。SNS上では「今年の第7戦は11月にずれ込んだのに、なぜ“October”なのか?」というツッコミとともに、このフレーズが一気に拡散しました。本記事では、WE RULE OCTOBER.の意味、このスローガンの背景と、アメリカのスポーツメディアがどう受け止めているかを踏まえて解説します。
MLBではレギュラーシーズンが9月末までで、本当に大事な戦いは10月から始まる、という文化があります。ワールドシリーズの時期をまとめて「October baseball(10月の野球)」と呼ぶことも多く、ここで勝てるかどうかが球団の価値・伝統・スター性を決定づけます。したがって“October”は単なる月名ではなく、**「優勝決定のステージそのもの」**を指すキーワードなのです。
2025年のワールドシリーズはドジャースとトロント・ブルージェイズの大接戦となり、第7戦が日本時間で11月2日にずれ込みました。つまり、厳密に言えば「勝負がついたのは11月」だったわけです。このズレが、SNSでの
「Octoberって言ってるけど、最後勝ったの11月じゃん」
というツッコミを生んだ最大の理由です。
しかし、MLB側の感覚では**“10月の延長としての11月上旬”は許容範囲です。アメリカのファンも、ポストシーズンをまとめて“October”と呼ぶクセがあり、日付にそこまで厳密ではありません。2025年のように試合が長引いた年でも、マーケティングやグッズは10月ベースの表現を崩しません。ドジャースの優勝記念Tシャツに“WE RULE OCTOBER”が入っていたのも、こうした「ポストシーズン=October」固定の文化**があるからです。
ここが今回いちばん大事なところです。ドジャースは2010年代から一貫してレギュラーシーズン最強クラスなのに、ポストシーズンで取りこぼすというイメージが付きまとっていました。とくに2017年・2018年・2019年あたりに「10月に弱いドジャース」とからかわれたことを覚えているファンは多いはずです。
ところが2024年に久しぶりの世界一、そして2025年に連覇。これでようやく
「もう“10月に弱い”とは言わせない」 「むしろ10月はうちのものだ」
と言える立場になりました。つまり“WE RULE OCTOBER”は、**長年言われてきた弱点をひっくり返してやる、という“リベンジ表現”**でもあります。これが今回、優勝Tシャツというもっとも目立つ形で出てきたので話題になったのです。
アメリカの主要メディア――MLB公式サイト、AP通信、地域紙の『ロサンゼルス・タイムズ』、さらに全国紙・スポーツ専門サイト――はいずれも2025年のドジャースを「お金だけで勝っているチーム」ではなく、**「ポストシーズンで勝ち切る術を身につけたチーム」**として描いています。特に以下のような論調が目立ちます。
こうした記事のトーンを踏まえると、“WE RULE OCTOBER”は決して偶然のキャッチではなく、メディア側がいま書いているストーリー(=ドジャースは10月をようやく制した)ときれいに重なる言葉だとわかります。むしろメディアが描いてきた「10月に強いドジャース」という最新イメージを、球団側がTシャツで“見える化”した、と言っていいでしょう。
“October”を自分たちの色に染めるスローガンは、過去にはフィラデルフィア・フィリーズの “Red October” が非常に有名です。これはチームカラー(赤)と10月を組み合わせたもので、「10月はフィリーズが球場を真っ赤に染める」という意味でした。ドジャースの場合はチームカラーを入れず、あえてストレートに“rule(支配する)”を使ったぶん、**「もう言い訳なしで優勝するチームだ」**という自信と強気が前面に出ています。
最後に“WE RULE OCTOBER”が伝えているメッセージを整理します。
この3つが重なっているからこそ、2025年版のこの一言はインパクトがあり、日本のSNSでも話題になったと言えます。