テレビのワイドショーやネット掲示板で「これは外患誘致罪では?」という声を見かけたことはありませんか?しかし、そもそも**外患誘致罪とは何なのか?そして本当に誰かに適用されたことがあるのか?**と疑問に思った方も多いはずです。
この記事では、外患誘致罪の意味、実際の適用例、そして過去に議論された事案について、法律の観点からわかりやすく解説していきます。
「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。」
(刑法第81条)
この条文は、日本国の安全を脅かす最も重大な行為に対して適用されるもので、法定刑は死刑のみという極めて重い刑罰が規定されています。
外患誘致罪が成立するためには、次の条件が必要です。
このように、単なる外国との接触や好意的な発言では罪にはならず、実際に日本に対する軍事的攻撃を引き起こすことが必要になります。
結論から言えば、2025年時点で外患誘致罪が適用された例は一件もありません。
これは日本の刑法の中でも極めて特殊な罪であり、事実上「象徴的な法律」として扱われているといえるでしょう。
以下のような理由から、外患誘致罪の適用は非常に難しいとされています。
理由 | 内容 |
---|---|
✅ 要件が非常に厳しい | 「通謀」「武力行使」という具体的かつ重大な行為が必要 |
✅ 国際問題に発展する恐れ | 実際に外国を名指しして起訴することで外交的摩擦が起きる可能性あり |
✅ 証拠の収集が困難 | 密かに行われる通謀や軍事協力の立証は難しい |
✅ 通常の刑罰で十分対応可能 | スパイ行為や反逆的行為は別の罪(外患援助罪、国家公務員法違反など)で処罰できる |
適用こそされなかったものの、世間や政治の場で「外患誘致ではないか?」と議論されたケースがいくつかあります。
罪名 | 内容 | 法定刑 |
外患援助罪 | 外国の武力に対し兵站・情報などで援助した場合 | 死刑または無期懲役 |
内乱罪 | 武力で国の統治機能を破壊する行為 | 死刑、無期、または懲役5年以上 |
国家公務員法違反(守秘義務) | 国家機密を漏洩した場合など | 懲役刑等 |
近年、SNSや動画投稿サイトなどで「外患誘致罪だ!」という言説が乱用されがちですが、実際には極めて厳密な条件があるため、簡単に当てはまる罪ではありません。
誤解や感情論で「外患誘致罪」を用いると、本来の法律の意味が薄れてしまうおそれもあります。
項目 | 内容 |
法的定義 | 外国と通謀して日本に武力を行使させた場合に成立 |
法定刑 | 死刑のみ |
実例 | 日本国内での適用例はゼロ |
運用の現状 | 実質的には「象徴的存在」になっている |
注意点 | 政治的批判と法律用語は区別すべき |
**外患誘致罪は、国家の存亡に関わる事態を想定した究極の法律です。**そのため、日常的に適用されるようなものではなく、極端に限定された状況でのみ発動されうるものです。
今後、日本の安全保障がますます重要になっていく中で、この法律が改めて注目される場面も出てくるかもしれません。しかし、それだけに冷静かつ法的な視点で議論することが求められる罪だと言えるでしょう。