国家情報長官タルシ・ガバードが、オバマ大統領反逆の証拠を機密解除
【ファクトチェック】「タルシ・ギャバードがオバマのクーデター企て反逆証拠を機密解除した」という噂は本当か?
2025年7月、X(旧Twitter)を中心に、日本語圏・英語圏のSNS上で次のような驚くべき情報が急速に拡散しました。
「アメリカの国家情報長官タルシ・ギャバードが、オバマ元大統領がトランプ大統領に対してクーデターを企てた“圧倒的な証拠”を機密解除した」
この情報が事実ならば、アメリカ史上最大級の政治スキャンダルです。しかし、果たして、【米国国家情報長官タルシ・ギャバードがオバマ主導の「トランプ大統領に対するクーデター」を画策した「圧倒的な証拠」を公開】というのは本当に事実なのでしょうか?この記事では、この話題を徹底的に検証・ファクトチェックします。
1. 話題の発端と拡散の経緯
2025年7月18日ごろから、次のような投稿がX(旧Twitter)で相次いで投稿されました。
- 「国家情報長官タルシ・ギャバードが、オバマによるクーデターの証拠を機密解除した」
- 「ロシア疑惑はでっち上げであり、反逆罪の証拠が出てきた」
- 「DNI(国家情報長官)がオバマ、コミー、ブレナンらの訴追を要求した」
投稿の内容はどれもセンセーショナルで、Disclose.tv、Benny Johnson、KanekoaTheGreat、General Flynn(元軍人)など、いわゆる“極右系”の影響力を持つアカウントからの引用を多く含んでいます。
2. タルシ・ギャバードとは誰か?
まず、話題の中心人物「タルシ・ギャバード(Tulsi Gabbard)」とは誰かを確認しましょう。
- 元ハワイ州選出の連邦下院議員(2013~2021年)
- 民主党員として活動していたが、2022年に民主党を離党
- 2020年の民主党大統領予備選にも出馬した経験あり
- 現在は独立系保守的立場の政治活動家・コメンテーター
→ つまり、ギャバード氏は政治経験はあるが、2025年7月時点で米国政府のいかなる公的役職にも就いていません。
3. 現在のアメリカ国家情報長官は誰か?
アメリカの国家情報長官(Director of National Intelligence, DNI)は、全米の情報機関を統括する非常に重要な職位です。
- 2025年7月時点のDNIは不明確ですが、Tulsi Gabbard がその職に就任したという事実は存在しません。
- 米国政府公式サイト(dni.gov)や主要報道機関の人事報道にも、彼女の就任に関する記録は一切ありません。
4. 拡散された投稿と情報源の傾向
今回の話題が急速に広がった背景には、SNS上の一部インフルエンサーによる投稿がありました。特に、保守系または陰謀論系の情報を多く扱ってきたアカウントが多く取り上げています。
これらのアカウントに共通する傾向としては、
- 過去にも「選挙の不正」「政府による情報操作」「ディープステートの存在」などを取り上げていた
- 公的な証拠や報道機関による裏付けがないまま、センセーショナルな内容を投稿する傾向がある
- 情報源が不明確なまま“BREAKING(速報)”などの見出しで拡散されることが多い
といった点が挙げられます。
特に今回の件では、同様の情報が複数のアカウントから同時多発的に投稿されており、信頼性が不確かな情報でも、反復によって信ぴょう性があるかのように見えるというSNS特有の現象も見られました。
このような拡散の仕方には注意が必要であり、まずは情報の出所や一次ソースがどこかを確認する冷静さが重要です。
5. 公的な証拠の有無
SNSでのポストには「文書を機密解除した」「証拠の文書がある」と書かれているものもありますが、
- 米政府公式機関(ホワイトハウス、司法省、国家情報長官室など)からの発表は存在しません
- その“文書”とされるものも、一次ソースや信頼できるサイトで確認不可能
- ファイル名やPDFへのリンクすら提示されておらず、「文書がある」と主張するだけの状態
→ これは典型的な「証拠を見せずに騒ぐ陰謀論」の手法です。
6. 関連報道の有無(主要メディア)

2025年7月18日時点で、次のような報道機関では一切報道されていません。
- CNN
- NBC News
- Reuters
- Associated Press (AP通信)
- New York Times
- Washington Post
- 日本国内の主要メディア(NHK、日経新聞、朝日新聞、読売新聞など)
→ 信頼できるメディアが一切取り上げていない情報は、極めて疑わしいと考えるべきです。
7. なぜこのような陰謀論が広まるのか?
この種の陰謀論には、次のような背景があります。
- トランプ支持層の間では「オバマ元大統領や民主党が不正をした」という感情が強く根付いている
- 保守系の一部は、情報機関やメディアへの不信感を抱いている
- 「闇の政府がいる」という“ディープステート”信仰が広まっている
- SNSのアルゴリズムが、センセーショナルな情報を優先的に拡散させる構造になっている
8. 過去の類似事例との比較
過去にも同様の偽情報が拡散された例があります。
- 2020年:「バイデンは影武者」「オバマが秘密逮捕された」→ 全てデマ
- 2021年:「トランプが再び就任する」「軍がバイデンを排除する」→ 根拠なし
- 2023年:「COVIDワクチンにマイクロチップ」→ 科学的に否定済
→ 今回の件も、それらと同様のパターンに分類されます。
9. この話題が示す情報リテラシーの課題
このようなフェイク情報に引っかからないためには、次の点に注意が必要です。
- 一次情報の確認(発言や文書があるならソースは?)
- 出典メディアの信頼性(そのメディアの過去の実績を調べる)
- 情報が偏っていないか(反対側の意見も確認する)
- 公式発表があるかどうか
- SNSだけでなく、信頼ある報道機関の報道を待つ姿勢
10. まとめ:この情報はフェイクか、真実か?
検証の結果、この情報,「米国家情報長官タルシ・ギャバード氏が、オバマ元大統領がトランプ大統領に対してクーデターを企てた“圧倒的な証拠”を機密解除した」についての結論は明確です。
✅ 結論:この情報はフェイクニュースである可能性が極めて高い
- タルシ・ギャバードはDNIではない
- 証拠の文書は存在しない
- 信頼できる報道は皆無
- 情報源はいずれも過去に虚偽情報を流しているアカウント