「5Gの電波は危険」「5Gが頭痛や病気の原因になる」——こんな話をSNSやYouTubeなどで目にしたことはありませんか?ですが、結論を先に言うと、5Gが人間の健康に悪影響を及ぼすという主張は、科学的根拠のない“デマ”であると世界中の公的機関が明言しています。
本記事では、その誤解がなぜ広まったのか、どういったデータや証拠があるのか、そして正しく理解するために必要なポイントについて、国内外の研究や報道を元に詳しく解説していきます。読者の皆様が安心して5Gのある社会に暮らせるよう、正しい情報をわかりやすくお伝えします。
5G(第5世代移動通信システム)は、従来の4Gと比べて通信速度が格段に速く、同時接続できる端末数も大幅に増加する、次世代の無線通信技術です。通信遅延も少なく、リアルタイム性が高まるため、スマートフォンだけでなく、自動運転や遠隔医療、スマート工場、災害時の通信インフラとしての活用も見込まれています。
5Gが使用する周波数帯は、主に**3.7GHz帯や28GHz帯(ミリ波)**です。これらはすでに気象レーダー、空港の航空管制レーダー、放送通信など多くの分野で使われてきた安全な帯域です。人体に与える影響については、過去数十年の使用実績でも問題視された事例は確認されていません。
さらに5Gの特徴として、電波の指向性が非常に高く、拡散しづらい性質を持っています。基地局から少し離れるだけで信号強度が著しく減衰し、結果として人間が受ける電磁波の量は非常に少ないのです。
SNSや一部の陰謀論的なWebサイトでは、次のような主張が見受けられます:
一見すると不安になるような内容ですが、いずれも科学的な根拠がないか、根拠が誤解・誇張されているものばかりです。
たとえば「鳥が5Gの電波で死んだ」という説は、実際には気候変動や空気汚染、自然界の変化といった多くの要因によって説明されることが多く、5Gとの関連性を裏付ける証拠は存在していません。また、健康被害とされる症状も、ストレスや生活習慣、心理的影響によるものと考えられています。
WHO(世界保健機関)は、5Gを含む無線通信の電磁波について次のように明言しています:
“To date, and after much research performed, no adverse health effect has been causally linked with exposure to wireless technologies.”
つまり、「現在までに無線通信技術への曝露と健康への悪影響を因果関係として結びつける証拠は存在しない」ということです。WHOは20年以上にわたる調査とレビューを重ねた上でこの結論を出しており、世界中の医療・研究機関の基準にもなっています。
日本国内でも、総務省が5Gの安全性については国際基準(ICNIRPなど)に基づいて厳格に規制を行っていると説明しています。基地局やスマホの電波は、人体に影響を与えないように基準値以下に設計されており、すでに実測によって安全性が確認されています。
加えて、厚生労働省も「日常生活で5Gの電波を浴びることによる健康被害は確認されていない」と明言しており、国内での不安の払拭に努めています。
ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)やIEEE(米国電気電子学会)など、電磁波に関する研究を専門とする世界的な団体も、5Gが人体に有害であるという証拠は一切見つかっていないと断言しています。
欧州連合(EU)では、加盟各国が共同で電磁波の安全基準を設けており、5Gについても長期的な健康影響を検証した報告書を多数発表しています。英国保健安全庁(UKHSA)は2020年の報告で、「5Gの導入によって新たな健康リスクが生じる可能性はない」と結論づけています。
米国では、FCC(連邦通信委員会)が電波の出力や基地局の設置に関する厳しい基準を設けており、一般人の生活圏でそれを超えることはありません。カナダ保健省(Health Canada)も、「国民の健康にリスクを与える兆候は確認されていない」としており、多くの先進国で安全性が公式に認められています。
また、オーストラリア、ドイツ、韓国などでも同様の方針が採られており、世界的な共通見解と言えます。
5Gに対する誤解や不安が広がる理由には、いくつかの背景があります:
誤情報に惑わされないためには、情報の発信元や根拠をきちんと確認することが大切です。また、最新の科学的知見を正しく理解するためには、次のような行動が推奨されます:
5Gは、私たちの暮らしをより便利に、より安全に、そして効率的に変えていく可能性を秘めています。その進歩を受け入れ、活用するためにも、科学的な根拠と正確な情報に基づいて判断する姿勢が、今こそ求められています。
ここまでの内容で、現時点では5Gが人の健康に悪影響を与えるという科学的証拠は見つかっていないことを確認してきました。しかし、「将来的にも絶対に問題がない」と100%断言することは、科学の立場からは難しいという点も正直にお伝えしておくべきでしょう。
科学の世界では「絶対に安全である」ことを証明するのは本質的に不可能です。なぜなら、科学とは常に新たな証拠や反証可能性に開かれた体系だからです。
そのため、5Gについても、今のところ問題は確認されていないものの、未来において全く新しいリスクが発見される可能性がゼロとは言い切れません。過去にはタバコやアスベストなど、初期には安全とされた物質が後になって健康被害をもたらす例もありました。
とはいえ、5Gで使用される電波は非電離放射線であり、人体のDNAを損傷するような性質は持っていません。加えて、4GやWi-Fiでも同様の周波数帯が長年使われてきた実績があります。
また、世界保健機関(WHO)や国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)、日本の総務省・厚生労働省などが定期的にリスク評価を行い、必要に応じてガイドラインを更新しています。
つまり、長期的なリスクが完全にゼロとは言えないまでも、現時点では心配すべき確率や影響の規模ではないというのが、現代の科学的合意といえるでしょう。
5Gは、私たちの暮らしをより便利に、より安全に、そして効率的に変えていく可能性を秘めています。その進歩を受け入れ、活用するためにも、科学的な根拠と正確な情報に基づいて判断する姿勢が、今こそ求められています。