自動ドアは、私たちの生活にすっかり溶け込んでいる便利な設備のひとつです。しかし、その背後には「誰もが使いやすい社会」を目指すユニバーサルデザインの考え方がしっかりと息づいています。
この記事では、自動ドアがなぜユニバーサルデザインの一例とされるのか、どんな工夫や課題があるのかを分かりやすく解説します。
まず「ユニバーサルデザイン」とは、年齢、性別、障害の有無、言語などにかかわらず、すべての人が使いやすいように設計されたデザインのことを指します。
米国の建築家ロナルド・メイスによって提唱され、7つの原則(公平な利用、使いやすさ、理解のしやすさなど)に基づいています。
自動ドアはただ“勝手に開く”だけではありません。ユニバーサルデザインの理念を反映して、以下のような細かな配慮があります。
完璧に見える自動ドアにも、実は改善の余地があります。
➡ 点字や音声ガイドの併用が求められます。
バリアフリー化が進む中で、自動ドアの導入は「おもてなし」や「社会的責任」の表れとも言えるでしょう。
なんと世界最古の“自動ドア”は古代ローマの神殿にあったと言われています。蒸気の圧力を利用し、神官が見えない場所で開閉していたとの記録も!
➡ 本格的な商業用自動ドアが誕生したのは1954年のアメリカ。レストランの回転扉が原型です。
日本では1964年(昭和39年)、東京・銀座の三愛ドリームセンター(現在のソニービル)に設置されたのが最初とされています。
➡ 東京オリンピックの年でもあり、“未来的な設備”として注目を浴びました。
赤外線や超音波センサーによって動作する自動ドアは、「動き」を感知して開きます。
➡ 人がじっと立っているだけでは開かないこともあり、特に高齢者や身体障害者には不便な場合があります。
最近では、赤外線だけでなく体温や呼気(二酸化炭素)を検知するセンサーも登場。
➡ 省エネや防疫(感染対策)用途として、病院やクリーンルームで導入されています。
音声で「ドアが開きます」などの案内をする自動ドアや、点字表示パネル付きのドアも登場。
➡ ユニバーサルデザインの観点から、こうした改良が少しずつ広がっています。
停電時や非常時に備え、多くの自動ドアは手動でも開閉できる設計になっています。
➡ ただし、古いビルなどでは「緊急解放装置」がないケースもあるので注意。
日本国内には約80万台以上の自動ドアが設置されていると推定されており、これは世界有数の普及率です。
➡ 「おもてなし」や「バリアフリー」の意識が高い日本ならではの文化とも言えます。
自動ドアは、見た目こそシンプルですが、そこには多くの工夫と配慮が詰まっています。
それは「便利だから」だけでなく、すべての人のアクセスを保障するための仕組みとして設計されているのです。
次に自動ドアを通るとき、ぜひ一度「このドアは、誰にとっても使いやすいものになっているだろうか?」と考えてみてください。
その一歩が、ユニバーサルデザインを身近に感じる第一歩になるかもしれません。