私たちが日々使っているスマートフォン、着ている服、食べているチョコレート――それらのほとんどは、実は世界中の国々が協力して作っているものです。
たとえば、スマホの設計はアメリカ、部品の製造は日本、組み立ては中国というふうに、**「役割分担」**がされています。このように、各国が得意なことを分担して商品やサービスを生産する仕組みを「国際分業(こくさいぶんぎょう)」と呼びます。
この記事では、この国際分業の仕組みや種類、そしてそれによって得られるメリットや注意すべきデメリットについて、いくつかの国際分業の具体を交えてていねいに解説していきます✏️✨
国際分業とは、国ごとに異なる強みや特徴を生かして、役割を分けながら生産を行うことです。これは、1つの製品やサービスを完成させるために、複数の国が連携するという考え方です。
たとえば、
このように、それぞれの国が自分たちの得意分野に集中することで、より効率よくモノづくりができます。
国際分業には大きく分けて2つのタイプがあります。それぞれの特徴を、例と一緒にわかりやすくご紹介します。
これは、同じくらい経済が発展している国どうしが、得意な産業分野を分担して生産を行うスタイルです。
それぞれの国が高い技術力を持っており、競争力のある商品を作っています。いわば、「専門分野での協力」です。
これは、経済の発展度が異なる国どうしが連携して生産するスタイルです。主に、先進国が設計や開発を担当し、発展途上国が組み立てや大量生産を担う形になります。
このように、技術と労働力を組み合わせることで、効率的な製品づくりが可能になります。
各国が自分たちの得意分野に集中することで、時間や資源をムダにせず効率よく生産できます。
コストの安い国で製造すれば、世界中の人が安く商品を買えるようになります。
国際分業を通じて、異なる国の文化や技術が混ざり合い、新しいアイデアが生まれることもあります。
工場の建設によって現地に仕事が生まれ、生活水準が上がることもあります。
輸出が増えることで、その国の経済が安定するきっかけにもなります。
ある国に生産を頼りすぎていると、災害や戦争、政治的トラブルで供給が止まる可能性があります。
発展途上国では、長時間労働や児童労働、低賃金などの人権問題が起きることもあります。
コストばかりを重視して、環境基準のゆるい国で製造することで、大気汚染や水質汚染が進むことも。
安い外国製品が入ってくると、自国の企業が競争に負けてつぶれてしまう可能性もあります。
分業によって得をする国と損をする国が出てきて、格差が広がる原因になることもあります。
生産者が適切な対価を得られるように、公正な取引を進める必要があります。
再生可能エネルギーの活用や廃棄物の削減など、環境にやさしいものづくりが大切です。
男女や年齢、国籍を問わず、すべての人が働きやすい職場をつくることが求められます。
1つの国に依存せず、複数の地域で生産できる体制づくりが必要です。
国際分業とは、国ごとに役割を分けて、協力しながらモノやサービスを生み出す仕組みです。
この仕組みによって、私たちは安くて便利な商品を手に入れることができます😊
しかしその一方で、労働環境や環境破壊、経済格差といった課題もあるため、これからは「公平さ」と「持続可能性」を大切にした分業の形が求められていきます。
私たちが買うモノの「うまれた場所」や「つくった人」に思いをはせることが、世界をより良くする第一歩になるかもしれませんね🌎✨
iPhoneの組み立ては主に中国の工場で行われていますが、その部品の多くは日本企業が製造しています。ディスプレイ、カメラのセンサー、バッテリー、高性能な半導体など、数多くの日本製部品が使われています。製品の最終的な組み立てコストは低いですが、付加価値の高い部品の大部分は日本で生み出されており、その経済的価値は組み立て費をはるかに上回ります。
マクドナルドのような国際的なハンバーガーチェーンは、世界中の店舗でほぼ同じ味のポテトを提供しています。これは、ジャガイモの品種や揚げ油、調理方法に至るまで、国際的な品質基準を厳格に定めているからです。多くのチェーンでは、特定の品種のジャガイモをカナダやアメリカで栽培し、加工して世界中に輸出するという国際分業を行っています。
オリンピックのメダルは、開催国で製造されるのが一般的ですが、その原材料は世界中から集められます。例えば、金メダルに使われる金は、世界各地の鉱山から採掘されたものです。また、多くのメダルは持続可能性に配慮し、古いスマートフォンなどの電子機器から抽出されたリサイクル金属が使われることもあります。
1つの飛行機のエンジンは、驚くほど多くの国々の企業が協力して作られています。例えば、エンジンの部品はアメリカ、イギリス、日本、フランスなど、複数の国の工場で製造され、最後に1つの国で組み立てられます。それぞれの国が得意な技術を分担することで、最高の性能と安全性を確保しています。
私たちが着ているTシャツの多くは、国際分業の典型的な例です。綿花はインドやアメリカ、中国などで栽培され、その綿が紡績工場で糸になり、生地が作られます。生地は別の国で染色され、縫製工場でTシャツに仕立てられます。完成品は船で日本に運ばれ、店舗に並びます。Tシャツ1枚の完成までに、地球を何周もしている可能性があります。
現代では、モノだけでなくサービスやソフトウェアの分野でも国際分業が進んでいます。例えば、ある国の企業がソフトウェアの設計と企画を担い、プログラミングは人件費の安いインドやベトナムのエンジニアに依頼するといった分業です。これにより、開発コストを抑え、効率的にプロジェクトを進めることができます。
国際分業は互いに利益をもたらしますが、時には対立を生むこともあります。自国の産業が安い外国製品に押されて衰退したり、貿易赤字が拡大したりすると、国同士の間に緊張が生まれることがあります。このような対立は「貿易戦争」と呼ばれ、関税の引き上げなどで国際分業の流れが妨げられることもあります。
「MADE IN JAPAN」という表示は、原則として最終的な製造工程が日本で行われた製品に付けられます。しかし、主要な部品が海外で製造されたり、設計が海外で行われたりしていても、最終的に日本で組み立てられたり、日本の技術が使われていれば、この表示がつくことがあります。
トヨタ自動車のようなグローバル企業は、世界中の工場に技術を伝える「マザー工場」を日本に持っています。マザー工場で培われた生産技術や品質管理のノウハウが、海外の工場に指導者やマニュアルを通じて伝えられます。これにより、世界中のどの工場で生産されても、同じ品質の車が作られるのです。
国際分業の初期の例として、熱帯地域で栽培された「バナナ」がヨーロッパや北米に輸出されるようになったことが挙げられます。気候や土壌が特定の作物栽培に適している地域が生産に特化し、それ以外の地域が消費する、という現代の国際分業の基本的な形が、この頃に始まりました。