「ナショナリズム(Nationalism)」とは、自らの国や民族の独立・統一・繁栄を重視しようとする思想や運動のことを指します。
単なる「愛国心(Patriotism)」とは異なり、政治的・経済的な主権の回復や保持を目的とする場合が多く、時に他国や他民族との対立を伴うこともあります。
ナショナリズムは歴史を通じて多様な形をとってきました。
時に国家統一を推し進め、時に移民排斥や戦争の正当化にも使われる――その多面性を理解することが大切です。
本記事ではナショナリズムの具体例を解説と共に紹介します。
ナショナリズムは一枚岩ではありません。以下のように分類されることが多いです。
種類 | 特徴 | 例 |
---|---|---|
🌍 市民的ナショナリズム | 憲法・法制度などで国民が結ばれる | フランス革命、アメリカ独立 |
🧬 民族的ナショナリズム | 言語・血縁・文化などの共通性に基づく | ドイツ統一、バルカン半島 |
🛡 保守的ナショナリズム | 既存の国家体制や伝統を強調 | 日本の戦前体制、英連邦 |
🚫 排他的ナショナリズム | 他国や他民族を敵視・排除 | 移民排斥運動、極右ポピュリズム |
これらのナショナリズムは、社会の状況や国民の不安・希望に応じて強まったり、複合的に現れることがあります。
歴史的に見ると以下の様なものがナショナリズムの倉入れ具体例としてあげられます。
王政を打倒し、「国民こそが国家の主人」という思想が広まりました。
このとき初めて「国民国家(Nation-State)」という概念が力を持ち、後のヨーロッパ各国のナショナリズムに大きな影響を与えました。
さらに、ナポレオンによる他国への侵攻は、征服された側のナショナリズムの目覚めを促すという副次的効果も持ちました。
言語・文化が共通するドイツ人が「一つの国家にまとまるべきだ」とする民族的ナショナリズムを推進。
1871年、プロイセン主導でドイツ帝国が成立しました。
音楽や文学などの文化的表現を通じて、ドイツ民族の一体感が醸成されていったことも特徴です。
幕末の動乱を経て明治政府は「富国強兵」「殖産興業」をスローガンに掲げ、天皇を国家の象徴とするナショナリズムが形成されました。
教育勅語、徴兵制、国旗・国歌の導入などがその象徴です。
また、日清・日露戦争の勝利により、日本人の間で自国への誇りが急速に高まりました。
「アメリカ人の雇用と利益を最優先に」というスローガンで、保護貿易主義・移民制限・軍縮反対といった政策を推進しました。
グローバル主義への反発として、排他的ナショナリズムの色も持っています。
特に中南米からの移民に対する壁建設計画などは、象徴的な排除政策として注目されました。
「主権の回復」「移民抑制」を理由にEU離脱が国民投票で決定されました。
これは市民的ナショナリズムと排他的ナショナリズムが混在した現代的事例です。
離脱を支持した層の多くは、地方や中高年層であり、経済のグローバル化に取り残された層の不安が背景にあります。
習近平政権が進めるスローガンのひとつで、教育やインフラ、外交政策において「中国中心主義」が色濃く反映されています。
他国批判を通じた団結や、少数民族への統制も問題視されています。
南シナ海や台湾問題に対する強硬姿勢も、このナショナリズムの延長線上にあるといえるでしょう。
日本においてはどのようなナショナリズムの具体例があるでしょうか。
日本においてはどのようなナショナリズムの具体例があるでしょうか。
国家と天皇を中心に「日本は神の国」とする思想が国民に教育され、軍国主義とナショナリズムが結びついた典型例となりました。
教育勅語に代表される忠君愛国の精神は、戦時体制の強化に直結し、多くの若者が「国家のために命を捧げる」ことを美徳とされました。
政治家による靖国神社参拝は、「戦没者への敬意」か「戦争美化か」で国内外の意見が分かれます。
日本国内では「伝統を守る」姿勢として支持される一方、近隣諸国からは「過去への反省の欠如」と批判されることもあります。
特に韓国・中国との歴史認識問題は、ナショナリズムを刺激する要因となっています。
ワールドカップやオリンピックなどで国家が一丸となって選手を応援する姿も、一種のナショナリズムの表れです。
特に国旗・国歌を掲げる瞬間は、強い一体感と誇りが感じられる場面です。
ただし、過度な競争心や相手国への侮辱が発生した場合、ナショナリズムが暴走する危険性もあります。
ナショナリズムは単なる感情ではなく、時に外交・安全保障・経済政策の正当化にも使われます。
そのため、国際社会においては「自国ファースト」がもたらすリスクと、適切な自己主張のバランスが重要です。
たとえば:
ナショナリズムが政治に利用されることは珍しくありません。選挙前に「外敵の脅威」を強調し、国民の支持を固める戦略も見られます。
ナショナリズムは、現代でも国家の中核をなす考え方のひとつです。
問題は、それが**「誰かを排除するため」か「共により良い社会を目指すため」か**という目的の違いです。
国家への誇りを持つことと、他者を排斥することはイコールではありません。
私たちがこれからの時代を生きていく上で、健全なナショナリズムと危険なナショナリズムを見極める力がますます必要になっています。
ナショナリズムは「国家愛」や「郷土意識」といったポジティブな感情と結びつくこともあれば、「排他主義」や「極端な国家主義」にもつながる可能性を秘めています。
グローバル化が進む現代だからこそ、「多様性の中の共生」を実現するためのバランスある視点が求められています。