衣服は、私たちの毎日の暮らしに欠かせない存在です。朝起きてから夜眠るまで、仕事着や普段着、部屋着、寝間着など、私たちは常に衣服とともに生活しています。しかしその一方で、「服を作る・運ぶ・着る(洗う)・捨てる」という一連の流れの中では、資源・エネルギー・水・化学物質・廃棄物といった多くの環境負荷が発生しています。普段はあまり意識されにくいものの、衣生活は環境問題と深く結びついている分野の一つです。
近年、とくに注目されているのが、安価で流行を素早く取り入れ、短い周期で大量に販売・買い替えが行われるファストファッションの広がりです。便利で身近な存在である一方、この仕組みは衣類の生産量や廃棄量を増やし、結果として環境負荷を拡大させてきました。
この記事では、衣生活が環境問題とどのように関わっているのかを、服のライフサイクル(原料 → 製造 → 流通 → 使用 → 廃棄)に沿って丁寧に整理します。さらに、ファストファッションが抱える課題にも触れながら、日常生活の中で今日から実践できる具体的な工夫についても詳しく解説します。
衣生活が環境に影響する理由は、一つの場面だけに限られません。服は生まれてから役目を終えるまで、さまざまな段階で環境負荷を生み出します。
このように、衣生活は「どんな素材の服を選ぶか」だけでなく、どれくらいの量を買い、どのように着て、どう手放すかまで含めて考える必要があります。環境への影響は、私たちの日常的な選択の積み重ねによって大きく変わります。

衣類の素材は、大きく**天然繊維(綿、麻、ウールなど)と化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリルなど)**に分けられます。どの素材であっても、原料の段階から環境への影響が生じます。
素材ごとに課題は異なりますが、「天然素材だから安心」「化学繊維だから悪い」と単純に分けられるものではありません。
糸や生地を作り、染色や仕上げを行う製造工程では、多くの水とエネルギーが使われます。とくに色を付ける染色工程や、防シワ・撥水などの加工では化学薬品が使われることがあります。
生産国によっては環境規制が十分でない場合もあり、製造段階の管理体制が大きな課題とされています。
現代の衣類は、原料調達、生地生産、縫製、販売がそれぞれ異なる国で行われることが珍しくありません。その結果、長距離輸送が頻繁に発生します。
流通段階の環境負荷は、私たちが想像する以上に積み重なっています。
服は購入した後も、洗濯や乾燥、アイロンがけを通じて環境負荷を生み続けます。とくに化学繊維の衣類は、洗濯時に**マイクロファイバー(微細な繊維)**が抜け落ち、水とともに環境中へ流出する問題が指摘されています。
衣類は「まだ着られる状態」で捨てられることも少なくありません。可燃ごみとして焼却されればCO₂が排出され、埋立処分では分解されにくい素材が長期間残ります。

ファストファッションとは、流行を素早く商品化し、低価格で大量に販売し、短期間で入れ替えるビジネスモデルを指します。この仕組みは消費者にとって利便性が高い一方で、環境負荷を増大させやすい構造を持っています。
原料から縫製までが複数国にまたがるため、生産過程の環境対策や管理状況が見えにくい場合があります。
短期間で新商品が投入されることで売れ残りが発生しやすく、最終的に廃棄処分されるケースも問題視されています。

環境に配慮した衣生活は、特別な知識や高価な服を必要とするものではありません。日常の選択を少し見直すだけでも、大きな意味があります。

「オーガニックコットン=環境にやさしい」「天然素材=安心」というイメージがありますが、実際には素材だけで環境負荷は決まりません。生産方法、輸送距離、使用年数、廃棄方法などを総合的に見ることが重要です。
衣生活は、原料生産から廃棄まで多くの工程を持ち、それぞれの段階で環境問題と関わっています。ファストファッションの拡大によって問題は複雑化していますが、その一方で、私たち一人ひとりの選択によって改善できる余地も大きい分野です。
**「買いすぎない」「長く着る」「洗い方を工夫する」「捨てずに循環へ」**という行動を意識するだけでも、衣生活による環境負荷は確実に小さくなります。次に服を選ぶときは、その一着がどのような背景を持っているのか、少し立ち止まって考えてみることが、環境への第一歩となります。
必ずしも「買う=悪い」とは言い切れません。ただし、短期間で使い捨てる前提になると環境負荷は大きくなります。購入した服を長く着る、不要になった際は循環させるなどの工夫が重要です。
化学繊維から出る微細繊維は、海洋汚染の一因として国際的にも注目されています。洗濯回数を抑える、洗濯ネットを使うなど、日常的な対策が現実的です。
回収や再利用は進みつつありますが、混紡素材や加工の複雑さが課題です。まずは「長く使う」「リユースする」ことが最も効果的な取り組みとされています。