生き物の中には、体の一部を切ったり失ったりしても、時間がたつと元どおり、あるいはそれに近い形まで再生できるものがいます。このような能力を再生能力といいます。再生能力は、自然界では生き残るためのとても重要なしくみの一つです。
たとえば、天敵におそわれて体の一部を失っても、命そのものが助かれば、あとから体を作り直すことができます。けがをしても回復できることで、えさを取り続けたり、子孫を残したりすることが可能になります。
本記事では、「切っても再生する生き物」の代表的な例を取り上げながら、なぜそのようなことができるのか、そのしくみや意味について、順を追って説明します。
切っても再生できる生き物には、共通した特徴があります。主に、次のような点が重要だと考えられています。
このような細胞の働きによって、失われた部分に新しい細胞が集まり、少しずつ形を整えながら元の体に近づいていきます。
人間にも、皮ふが治ったり、血液が入れ替わったりする再生の力はあります。しかし、人間の場合は腕や足そのものを再生することはできません。このように、再生能力の高さや範囲は、生き物の種類によって大きく異なります。
自然界には、再生能力を持つ生き物が数多く存在します。ここでは、特に有名で分かりやすい例を紹介します。
プラナリアは、川や池などの水の中にすむ、とても小さな生き物です。見た目は細長く、平たい体をしています。プラナリアの最大の特徴は、再生能力が非常に高いことです。
体を半分に切ると、それぞれの断片から頭としっぽを持つ新しい個体が再生します。さらに、細かく切り分けた場合でも、多くの断片がそれぞれ一匹分の体に再生することがあります。このため、再生の研究では、昔から重要な生き物として調べられてきました。
この強い再生能力は、体の中に多く存在する「ネオブラスト」と呼ばれる細胞によるものです。ネオブラストは、失われた部分を補うために分裂し、さまざまな細胞へと変化します。
ヒトデは、海にすむ生き物で、放射状にのびた腕が特徴です。ヒトデは、腕(足のように見える部分)を失っても、時間をかけて再生することができます。
種類によっては、腕の一部だけから全身が再生するものもあり、非常に高い再生能力を持っています。これは、腕の中に体を作り直すための重要な情報が含まれているためだと考えられています。
ヒトデは、天敵におそわれたとき、自分で腕を切り離すことがあります。これを**自切(じせつ)**といいます。切り離された腕に気を取られている間に本体が逃げ、その後、失った腕を再生することで生きのびます。
ヤモリは、家の壁や天井などで見かけることのあるは虫類です。ヤモリもまた、再生能力を持つ生き物としてよく知られています。
ヤモリは、敵におそわれると、しっぽを切り離して逃げることがあります。切れたしっぽはしばらくの間動き続け、敵の注意を引きつけます。そのすきにヤモリ本体は安全な場所へ逃げることができます。
その後、ヤモリの体から新しいしっぽが再生します。ただし、再生したしっぽは、もとのしっぽと比べると、骨のつくりや形が少し異なっています。この点からも、完全に同じものが戻るわけではないことが分かります。
イモリは、水辺にすむ両生類で、高い再生能力を持つことで有名です。イモリは、しっぽだけでなく、手足、あご、目の一部、さらには心臓の組織まで再生できることが知られています。
このような能力は、ほかの脊椎動物(背骨を持つ生き物)と比べても非常にめずらしく、世界中の研究者から注目されています。イモリの再生のしくみを調べることで、人間の病気やけがの治療に役立つヒントが得られると期待されています。
再生能力は、生き物が自然の中で生きていくうえで、さまざまな場面で役立っています。
一方で、再生能力を持つことには、多くのエネルギーが必要です。そのため、すべての生き物が再生能力を持っているわけではありません。進化の過程で、それぞれの生き物が生活環境に合った能力を身につけてきた結果だと考えられています。
人間も、皮ふが治ったり、血液が新しく作られたりするように、ある程度の再生能力を持っています。しかし、腕や足、内臓の大きな部分を失った場合、それを元どおりに再生することはできません。
そのため、科学者たちは、プラナリアやイモリなどの再生能力の高い生き物を研究し、将来の医療や再生医療に役立てようとしています。これらの研究は、けがや病気で体の機能を失った人を助ける技術につながる可能性があります。
切っても元に戻るという不思議な力は、生き物の多様さや、自然が持つ奥深いしくみを私たちに教えてくれます。