2026年3月、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃と、その後のイランによる反撃によって、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に入りました。原油価格は急騰し、日本でも「ガソリンはどうなるのか」「電気代はどうなるのか」といった不安が一気に広がっています。
その中で、意外に多くの人が気にしているのが
「トイレットペーパーは大丈夫なのか?」
という点です。
一見すると、ホルムズ海峡とトイレットペーパーはあまり関係がないように思えるかもしれません。しかし日本では、オイルショックやコロナ禍の買いだめ騒動の記憶が強く残っているため、原油価格の急騰や中東危機が起きると、真っ先にトイレットペーパー不足を連想する人が少なくありません。
実際、2026年3月の今回も、SNSでは「また紙がなくなるのでは」「先に買っておいたほうがいいのでは」といった不安の声が広がっています。
では本当に、ホルムズ海峡の危機でトイレットペーパーは不足するのでしょうか。
結論から言えば、すぐに日本全国でトイレットペーパーそのものが消える可能性は高くありません。 ただし、まったく影響がないわけでもありません。
この記事では、ホルムズ海峡危機とトイレットペーパーの関係を、できるだけわかりやすく整理します。

先に要点を示すと、今回の危機でトイレットペーパーに起きやすいことは次の通りです。
この点が非常に重要です。
トイレットペーパー不足は、しばしば「供給そのものの崩壊」よりも、不安心理による店頭在庫の瞬間的な消失として起こります。
まず知っておきたいのは、日本で消費されるトイレットペーパーの大半は国内生産だということです。
過去に経済産業省や業界団体が出した説明でも、トイレットペーパーはほぼ100%に近い水準で国内生産されている、または約98%が国内生産であると説明されています。
これは非常に大きな安心材料です。
つまり、日本は完成品としてのトイレットペーパーを中東から輸入しているわけでも、ホルムズ海峡経由で大量輸入しているわけでもありません。
このため、
「ホルムズ海峡が止まった=すぐ日本のトイレットペーパーがなくなる」
という単純な話ではありません。
ここはまず、落ち着いて押さえておくべきポイントです。
それでも多くの人が心配するのには理由があります。
大きな理由は3つあります。
日本では1970年代のオイルショックの際に、トイレットペーパーの買いだめが社会問題になりました。
実際には原油危機と紙不足が完全に同じ意味ではなかったにもかかわらず、人々の不安が連鎖し、店頭からトイレットペーパーが消えました。
この記憶は今でも非常に強く、日本人の集合的な記憶として残っています。
2020年のコロナ禍でも、「トイレットペーパーが不足する」というデマや不安が拡散し、一時的に店頭から商品が消えました。
この時も業界団体や経産省は「供給は十分にある」と繰り返し説明しましたが、それでも一部で買いだめが起きました。
つまり、トイレットペーパーは日本社会において、危機の際に象徴的に買われやすい商品なのです。
トイレットペーパー自体は紙製品ですが、製造・包装・輸送にはエネルギーが必要です。
工場を動かす電力、配送トラックの燃料、包装材、物流コストなど、多くの部分で石油価格の影響を受けます。
そのため「紙だから石油とは無関係」というわけではありません。
日本のトイレットペーパーは、主に次のような原料から作られています。
過去の公的説明では、国内古紙由来が約60%、北米・南米からの輸入パルプ由来が約40%と説明されたことがあります。また別の業界説明では、国内消費のトイレットペーパーの完成品自体はほぼ国産だとされています。
ここで重要なのは、完成品は国内生産でも、原料の一部は海外に依存しているという点です。
ただし、その輸入原料の主要ルートは北米や南米であり、ホルムズ海峡そのものに強く依存しているわけではありません。
そのため、中東危機が起きたからといって、直ちに原料輸入が全面停止するとは考えにくいです。

それでは、2026年3月の危機で現実的に起こりやすい影響は何でしょうか。
もっとも起こりやすいのは価格上昇圧力です。
原油価格が上がると、次のコストが上がります。
トイレットペーパーそのものの原料がすぐになくならなくても、こうした周辺コストが積み上がると、小売価格は上がりやすくなります。
つまり、今回の危機で最も現実味があるのは
「なくなる」より「高くなる」
です。
もしSNSや口コミで不安が急速に広がると、特定地域や特定店舗で一時的に棚が空になることがあります。
これは供給能力が尽きたというより、
短期間に需要が集中して物流が追いつかない
ために起きます。
たとえば、通常なら数日かけて売れる量が1日で売れてしまえば、補充が間に合わず店頭から消えたように見えます。
原油高や輸送コスト上昇によって、メーカーや卸、小売の物流負担は重くなります。
特に地方や離島では、配送コストの上昇や便数の調整が店頭供給に影響する可能性があります。
ただし、これは「全国一斉の全面的な供給停止」というより、あくまで局所的・時間差的な影響として出る可能性が高いです。
コロナ禍の2020年に起きたトイレットペーパー騒動は、今回を考えるうえで非常に参考になります。
当時、経済産業省は「トイレットペーパーはほぼ100%国内で生産されている」「原料供給にも問題はない」と説明しました。業界団体も「国内消費の約98%が国内生産で、供給力・在庫は十分にある」と発表しました。
それでも、一部の店では棚が空になりました。
なぜか。
理由は単純で、不安になった人が一斉に多めに買ったからです。
つまり、供給の問題ではなく、購買行動の問題で一時的な品薄が起きたのです。
今回のホルムズ海峡危機でも、最も注意すべきなのはこのパターンです。
2020年の公的説明では、トイレットペーパーの全国在庫は約3億5000万ロール、これは日本全体で約3週間分に相当するとされました。また、一日あたりの輸送量を通常の約2000万ロールから約4000万ロールへ増強したとの説明もありました。
もちろんこれは2020年時点の数字ですが、日本の家庭紙業界には、需要急増時に一定の増産・増送体制を取る経験があることを示しています。
また、業界団体は一般的な目安として、1人あたり1週間で1ロール程度、4人家族なら1か月で16ロール程度の利用量を示したことがあります。
この数字から考えても、通常の家庭が過度に買いだめをしなければ、すぐに社会全体で深刻な欠乏に陥る可能性は高くありません。
ここで気になるのは、危機がさらに深刻化した場合です。
もしホルムズ海峡の封鎖が短期ではなく長期化し、原油価格がさらに上がり、世界の物流全体が混乱した場合、トイレットペーパーにも影響は強まります。
具体的には次のようなことが考えられます。
ただし、この場合でもトイレットペーパーが最初に完全消滅するというより、
まず価格が上がり、次に一部店舗で品薄が起き、さらに心理的不安が加速する
という順番で進む可能性が高いです。

今回の危機で、実はトイレットペーパーそのものより先に起こりやすいのは次のような変化です。
配送の基本コストである燃料代が上がれば、あらゆる日用品の価格に影響します。
工場や倉庫を維持するコストが上がれば、製品価格にもじわじわ反映されます。
「あとで困るかもしれない」という心理が広がると、紙類・飲料水・レトルト食品などが一緒に買われやすくなります。
つまり、トイレットペーパー不足は、物理的供給問題というよりも、
危機時の生活防衛行動の象徴
として起きやすいのです。
このような状況で最も重要なのは、必要以上に不安を広げないことです。
現時点で考えると、適切な行動は次の通りです。
もし多くの人が落ち着いて行動すれば、供給は比較的安定しやすくなります。
逆に、一部の不安が一気に拡大すると、本来は十分足りるはずの供給でも店頭では不足して見えるようになります。
ホルムズ海峡危機が起きたからといって、日本のトイレットペーパーがすぐになくなる可能性は高くありません。なぜなら、日本で使われるトイレットペーパーの大半は国内で生産されているからです。
一方で、まったく影響がないわけでもありません。原油高によって、製造・包装・輸送のコストは上がりやすく、今後は値上がり圧力が強まる可能性があります。
そして最も注意すべきなのは、供給不足そのものよりも、不安による買いだめです。2020年のコロナ禍でも、供給力や在庫が十分にある中で、一時的な店頭不足が起きました。
今回も同じで、
ホルムズ海峡でトイレットペーパーはどうなる?
という問いに対する現実的な答えは、
「すぐにはなくなりにくいが、値上がりや一時的な棚不足はあり得る。最大のリスクは買いだめ」
ということになります。
今後は、原油価格、物流コスト、消費者心理の3つを見ることが重要です。特に、冷静な購買行動が保たれるかどうかが、店頭の安定を左右する最大のポイントになりそうです。