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トカラ列島の群発地震と新燃岳の噴火の関連性

トカラ列島の群発地震と新燃岳の噴火の関連性

トカラ列島の群発地震と新燃岳の噴火──二つの火山・地震活動に関連はあるのか?

はじめに

近年、ニュースを賑わせているトカラ列島の群発地震。そして九州南部に位置する新燃岳の噴火。この二つの現象がほぼ同時期に報じられることもあり、SNSなどでも「トカラ列島群発地震と新燃岳噴火には何かつながりがあるのでは?」という声が多く見られます。

地震も噴火も、地球の内部で起きている力の動きが表に出てくる現象です。地図で見ると、トカラ列島も新燃岳も九州南部から南西諸島にかけての火山帯上に位置しており、決して遠くはありません。では、この二つの現象、トカラ列島群発地震と新燃岳噴火には関連はあるのでしょうか?

本記事では、地震と火山の基礎知識から、トカラ列島群発地震と新燃岳噴火に関連があるのかという疑問からまで、詳しく解説していきます。


トカラ列島とはどんな場所か?

まずはトカラ列島について見てみましょう。

トカラ列島は鹿児島県十島村に属する南北約160kmに連なる12の有人・無人島から成る島々です。奄美群島の北端と屋久島の南端のほぼ中間に位置しており、日本の地図をよく見ないと気づかないような小さな島々ですが、実は火山活動や地震活動が非常に活発な地域として知られています。

トカラ列島近海は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む沈み込み帯に位置しており、プレートの動きに伴って地震が頻発する地域です。

特に注目されるのが「群発地震」という現象。これは、ある狭い範囲で一定期間に集中して多数の地震が発生する現象を指します。2021年12月の群発地震では数千回を超える有感・無感地震が連続して観測され、島民の不安を大きくしました。


群発地震のメカニズムとは?

群発地震が起きるメカニズムは、実はまだ完全には解明されていません。主な原因とされるのは次の2つです。

① 地殻内部の応力変化

地殻は常にプレート同士の力を受けています。トカラ列島付近は特にプレートが押し合う力が複雑で、そのバランスが崩れると一気に多くの小さな断層がずれ動き、群発地震となります。

② マグマや熱水の移動

火山帯に近い地域では、地下のマグマや高温の熱水が移動することによって地殻が膨張・収縮し、断層がずれて地震が起こる場合があります。

トカラ列島の群発地震でも「マグマの動きが関係しているのではないか」と推測する声はありますが、必ずしも噴火を伴うわけではないため、単純に火山活動と直結しているとは言いきれません。


新燃岳とはどんな火山か?

次に、新燃岳(しんもえだけ)を見てみましょう。

新燃岳は鹿児島県と宮崎県の県境付近にある霧島火山群の一つです。標高1,421mの成層火山で、霧島連山の中でも特に噴火活動が目立つ火山のひとつです。

新燃岳が注目を集めたのは、やはり2011年の大噴火でしょう。噴煙が上空2,000~3,000メートルに達し、大量の火山灰や噴石が周辺地域を襲い、生活や農業に深刻な影響を与えました。

新燃岳はマグマだまりを持つ火山で、噴火前には火山性地震が頻発し、火山体の膨張が観測されることが多いのが特徴です。


新燃岳の噴火の原因とは?

新燃岳の噴火の原因もプレート運動に関わっています。フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことで、地下深くでマグマが生成され、それが上昇することで噴火を引き起こします。

特に新燃岳周辺は、火山性地震や地殻変動の観測体制が整っており、噴火の予兆が比較的捉えやすい火山です。しかし「噴火するか否か」「いつ噴火するか」の精密予測は依然として困難です。


トカラ列島群発地震と新燃岳噴火──距離的関係は?

トカラ列島と新燃岳の距離は直線で約200kmほど離れています。地図上ではそこまで遠くはありませんが、地震や火山の活動において200kmという距離は微妙なラインです。

プレート運動によって九州南部から南西諸島にかけての広範囲で同時に応力変化が起きる可能性はありますが、一方の現象が直ちにもう一方を誘発するという因果関係を裏づけるデータは現在ありません。

とはいえ、火山研究者や地震学者の中には「地殻全体の応力場が変わることで、離れた火山活動に影響を及ぼす可能性は否定できない」と指摘する人もいます。


両者に関連性を指摘する声も

地震と火山は、どちらも地球内部の活動が表面に現れる現象です。そのため、「一方が他方に影響を及ぼす可能性がある」という仮説は古くから繰り返し議論されてきました。

地震が火山活動に影響するケース

実際、以下のようなケースでは、地震が火山に影響を与えた可能性が指摘されています。

  • 2011年 東日本大震災の後
    東北地方から関東・中部の複数の火山で、火山性微動や地殻変動が増加した例があります。必ずしも噴火には至りませんでしたが、地下のマグマの動きに変化が起きた可能性が示唆されています。
  • 1991年 フィリピン・ピナトゥボ火山
    大規模な地震活動の後、噴火に至った例として有名です。

ただ、これらの事例も「必ず地震→噴火」という一対一の関係ではなく、もともと火山内部に噴火の準備が整っていたところへ、地震が最後の“引き金”を引いた可能性が高いと考えられています。


九州南部の地殻環境

九州南部は、フィリピン海プレートの沈み込みが活発な地域であり、霧島火山帯、桜島、諏訪之瀬島、さらにはトカラ列島付近まで、多くの火山が連なっています。

プレート境界での巨大地震はもちろん、局所的な応力変化でも広範囲に影響を及ぼす可能性があり、全く無関係とは言い切れません。ただし、地震や噴火のタイミングがたまたま重なっただけという場合も多いのです。


トカラ列島群発地震と新燃岳噴火の関係

さて、改めて今回のテーマであるトカラ列島の群発地震と新燃岳の噴火について。

科学的には「直接の証拠なし」

現時点で、トカラ列島の群発地震が新燃岳の噴火を直接誘発したという科学的データは見つかっていません。

  • 群発地震の震源は多くが浅く局所的。
  • 新燃岳のマグマだまりは霧島火山帯に属しており、局地的な地殻活動による影響が大きい。
  • 地下のマグマや熱水系は、数十〜数百キロ離れるとすぐには連動しにくい。

したがって、トカラ列島の地震が新燃岳の噴火を起こした、というような単純な因果関係は立証されていません。


間接的な関連の可能性は?

ただし、間接的に関連している可能性は完全には否定できません。

例えば:

  • プレート全体の運動が活発化すると、九州南部の地殻全域で応力のかかり方が変わる。
  • トカラ列島近海で群発地震が起きるほどの応力変化が、九州本土の火山帯にも影響を及ぼす可能性がある。

現代の地震学や火山学でも「遠方誘発効果」は注目されており、今後さらに観測技術が進めば新たな関連性が見えてくるかもしれません。


専門家の慎重な見解

気象庁や火山学者は、「群発地震や火山噴火が同時期に起きたからといって、必ずしも原因がつながっているとは限らない」と繰り返し強調しています。

ただし、以下のように指摘する専門家もいます。

「地震と火山活動は、同じプレート運動の結果として同時期に活発化することは十分あり得る。ただ、それを直接結びつけるにはさらなる科学的検証が必要だ。」

つまり、両者が全く無関係というわけではなく、広い意味での地殻変動の影響下にあることは否定できません。


結論:今後の注視が必要

現時点の結論をまとめると:

トカラ列島の群発地震と新燃岳の噴火には、直接的な因果関係は確認されていない。

ただし、九州南部全体の地殻環境が同じプレート運動の影響下にあり、間接的に関連する可能性は残されている。

今後も観測データを集めることで、新たなつながりが見えてくる可能性がある。

火山も地震も、私たちの生活に大きな影響を及ぼす自然現象です。だからこそ、専門家が発表する情報を正確に受け取り、冷静に行動することが何より大切です。


最後に

トカラ列島も新燃岳も、九州南部に暮らす人々にとっては決して他人事ではありません。これからも正確な情報を注視しつつ、噴火や地震への備えを怠らないようにしたいものです。

「もしかして関連しているのでは?」と感じたときこそ、根拠あるデータに基づいて判断することが大切です。今後も研究の進展を見守りましょう。

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