かつて「技術の日産」と呼ばれ、世界中で評価されてきた日産自動車が、近年では連続して赤字決算を繰り返し、厳しい経営状態に陥っています。「なぜ日産は赤字になったのか?」という疑問に対しては、複数の要因が複雑に絡んでいます。
本記事では、最新の決算情報や業界全体の動き、日産の戦略の変遷をもとに、赤字の背景と今後の見通しについて、丁寧に解説していきます。
2025年7月、日産は2025年度第1四半期(4月~6月)に約791億円の営業赤字を計上したと発表しました。これにより、日産は4年ぶりの四半期ベースの赤字に転落しました。
また、2024年度通期の決算では、最終損益が6,709億円の赤字となり、リーマンショック時を上回る歴史的な赤字額となりました。これは一時的な損失というより、日産の構造的な問題を反映した結果と考えられます。
アメリカは近年、自国の自動車産業保護を目的として、外国車に対する関税を引き上げました。特に日本や韓国からの完成車には25%以上の関税が課されるようになり、これが日産の北米事業に大きな打撃を与えました。
日産は北米市場での販売に大きく依存しており、関税の増加は利益率の低下を招きました。
日産の販売台数はここ数年で大幅に減少しています。とくに以下の地域で顕著です。
ディーラーの利益率も大きく低下しており、一部地域では販売店の閉鎖も相次いでいます。
かつては「技術の日産」と呼ばれた同社ですが、近年では新型車の開発ペースが落ち、競合他社に比べて商品力が低下しています。
消費者のニーズに合致しない商品ラインアップは、販売減少に直結しています。
2018年に発覚したカルロス・ゴーン氏による不正会計事件以降、日産の経営は混乱を続けています。
この混乱が続くことで、投資家・消費者・取引先の信頼を失い、長期的なブランド価値の低下につながっています。
日産は世界各地で事業再編を進めており、これに伴って減損損失が発生しています。
これらが一時的とはいえ大きな損失をもたらし、決算を圧迫しています。
日産は「Re:Nissan」と呼ばれる構造改革プランの一環として、グローバルでの工場削減を進めています。
日産はアメリカや日本の不振を補うべく、新興市場への注力を強めています。
競合がEVやハイブリッド車で先行する中、日産も技術投資を再加速しています。
今後の日産再建には以下の課題が残されています。
日産が赤字に転落した理由は、単なる一時的な不調ではなく、構造的な問題が蓄積した結果です。
現在は大規模な再建プランが進行中ですが、成功には消費者の信頼回復と、変化に柔軟に対応できる経営が不可欠です。