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コメ・関税率・日本

コメ・関税率・日本

🇯🇵日本のコメ関税は本当に778%なのか?

「日本のコメには700%を超える関税がかかっている」という話、聞いたことはありませんか?アメリカのトランプ大統領やホワイトハウスの報道官が名指しで非難したこともあり、この数字が一人歩きしている現状があります。

しかし実際には、その数字には誤解があり、意図的な誇張や思い込みも含まれていることがわかってきました。本記事では、関税の仕組みから、なぜ「778%」という数字が生まれたのか、そして実際の関税はどれくらいなのかを、丁寧にわかりやすく解説していきます。


✅そもそも「関税」とは?

関税には大きく分けて2つの種類があります:

  • 従価税(じゅうかぜい):輸入品の価格に対して何%という形で課税する方式。
  • 従量税(じゅうりょうぜい):輸入品の量(キログラムやリットルなど)に対して一定の金額を課す方式。

日本のコメに課されているのは従量税であり、価格に関係なく「1キロあたり341円」が固定で課税されます。


📊実際の日本のコメ関税は「341円/kg」

現在、日本における精米の輸入関税は、1キロあたり341円の従量税です。

例えば、外国からの輸入米が1キロあたり100円で仕入れられた場合、関税を含めた最終コストは441円になります。これを「税率(%)」で換算すれば、341÷100×100=341%の関税率ということになります。

しかし、米の価格が仮に200円だった場合、同じ関税額であっても341÷200×100=**170%**となり、見かけ上の「税率」は下がります。このように、従量税である限り、「関税率」は計算方法や比較対象によって大きく変わるのです。


💥ではなぜ「778%」などという超高関税の話が出てきたのか?

この「778%」という数字は、実は2005年当時のWTO(世界貿易機関)交渉の際に農林水産省が示した計算に由来しています。

当時、コメの国際価格は1キロあたり約44円と非常に安価であり、それを基準に341円の関税を税率換算した結果が:

341 ÷ 44 × 100 = 約778%

この数字は特定の条件下における試算に過ぎず、一時的かつ極端な前提によって導かれたものでした。にもかかわらず、この数字だけが独り歩きし、日本国内でも「日本のコメ関税は700%を超えている」と誤認されたまま広まりました。


📉農水省が「280%」へと見解を修正した事実

2013年、日本経済新聞がスクープしたように、農林水産省は突如として「778%」という説明を「280%」に修正しました。これは、国際価格の基準をより新しいデータに更新した結果です。

2009年の国際米価格(1キロあたり122円)を使って再計算したところ、

341 ÷ 122 × 100 = 約280%

となったためです。このことから分かるのは、従量税という制度の性質上、関税率(%)は相対的で変動的であり、固定された「778%」という数字は存在しないということです。


🕵️‍♂️なぜ農水省は「高関税」を強調したのか?

関係者や識者の間では、農林水産省があえて「778%」という高い数字を用いていた背景には、国内の農家保護政策を正当化する狙いがあったと見られています。

  • 「これだけ高い関税があるから、日本の農業は守られている」
  • 「外国産米が入ってこられないのは関税のおかげだ」

という説明は、国内向けの政策説明として非常に都合が良かったのです。

しかし一方で、TPPなどの国際交渉の場では、「280%」というより実態に近い数字を使って説明するという“使い分け”が行われていたという点が、問題視されています。


🌐ミニマム・アクセスとSBS方式

日本はWTOルールのもとで、年間約77万トンのコメをミニマム・アクセス(MA)枠として輸入しています。この枠内のコメには関税はかかりません。

  • このうち34万トン以上(2023年度)はアメリカ産。
  • 主に加工食品業者や外食産業向けに流通。

また、**SBS方式(Simultaneous Buy and Sell)**という枠組みでは、日本人の好みに合った外国産米が選ばれて輸入されるため、品質も向上しています。

🧾SBS米の実例(2024年10月の例)

  • アメリカ産うるち精米短粒種:
    • 買取価格:60kgで10,347円 → 約172円/kg
    • 売渡価格:60kgで13,425円 → 約224円/kg

つまり、国際米が極端に安いわけではなく、国産米に匹敵する価格帯にまで上昇してきているのです。


🔎まとめ:コメの「778%関税」は都市伝説だった?

結論として、こう言えるでしょう:

項目 実態
実行関税額 341円/kg(固定)
税率換算(目安) 国際価格により170〜350%程度
「778%」の由来 2005年のWTO交渉における試算
現在の想定税率 約280%(2013年時点)
ミニマムアクセス 年間約77万トン、主に米国から
SBS米価格帯 170〜220円/kg前後

✍️補足:なぜこの問題が再燃したのか?

2025年3月、トランプ氏の報道官レビット氏が再び「日本のコメ関税は700%だ」と非難したことで、問題が再燃しました。

しかし、その根拠となった数字は、過去の一時的な試算であり、現在の実態とは大きくかけ離れていることが、改めて指摘されるべきです。


🧭今後どうすべきか?

  • 誤解を正すためには、「実行関税=341円/kg」という事実を共有すること。
  • 数字の独り歩きを防ぐために、農政関係者・メディアが丁寧な説明を行う必要がある。
  • 国際交渉の場では、透明性のあるデータを用いることが信頼性の担保につながる。

📌関税率の本当の意味を知ることは、農政の未来を考える第一歩です。

この記事が、正しい情報に基づいた理解と議論の一助となれば幸いです。

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