選挙のニュースでよく耳にする「比例代表制」。しかし、「小選挙区と何が違うのか」「比例代表制にはどのようなメリットやデメリットがあるのか」と疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。
比例代表制は、政党などが獲得した票の割合に応じて議席を配分することを基本とした選挙制度です。小さな政党を支持する人の票も議席につながりやすく、多様な民意を国会に反映しやすいという特徴があります。
一方で、政党が増えすぎると政権が不安定になりやすいことや、有権者と議員との距離が遠くなりやすいといった問題も指摘されています。
この記事では、比例代表制の仕組みとメリット・デメリットについて、小選挙区制との違いも含めてわかりやすく解説します。

比例代表制とは、各政党が獲得した票の割合に応じて、議席を配分する選挙制度です。
例えば、100議席を比例代表で決める選挙があり、ある政党が全国の票の30%を獲得したとします。単純化して考えれば、その政党はおおむね30%に相当する議席を獲得することになります。
実際の選挙では議席を整数で配分する必要があるため、一定の計算方法を使って議席数を決定します。日本の国政選挙では「ドント式」と呼ばれる方法が採用されています。
比例代表制の最大の特徴は、「どの地域で1位になったか」よりも、「どれだけ多くの票を集めたか」が議席数に反映されやすいことです。
日本の国政選挙では、比例代表制だけで議員を選んでいるわけではありません。
衆議院議員選挙では「小選挙区比例代表並立制」が採用され、小選挙区で選ばれる議員と比例代表で選ばれる議員がいます。
この制度は、候補者や政党をある程度絞り込む「民意の集約」という小選挙区制の性格と、多様な意見を議席に反映する「民意の反映」という比例代表制の性格を組み合わせたものと考えることができます。
参議院議員選挙でも、選挙区選挙とは別に比例代表選挙が行われます。

比例代表制の大きなメリットは、政党の得票率と獲得議席の割合が比較的近くなりやすいことです。
例えば小選挙区制では、ある候補者が49%の票を獲得しても、別の候補者が51%を獲得すれば49%側の候補者は当選できません。
これに対して比例代表制では、一定数の票を獲得すれば、その票が議席につながる可能性があります。
選挙で投票しても、結果として議席の獲得につながらなかった票を一般に「死票」と呼ぶことがあります。
小選挙区では基本的に1つの選挙区から1人しか当選しないため、落選した候補者に投じられた票は議席には直接結び付きません。
比例代表制では、広い地域で集めた票を合計して議席に反映させるため、小選挙区制と比べると死票が少なくなりやすいというメリットがあります。
一定の支持を集めているものの、各地域で1位になるほどの支持はない政党でも、比例代表制であれば議席を獲得できる可能性があります。
例えば全国で10%程度の支持を持つ政党があったとしても、小選挙区だけで選挙を行えば、各選挙区で2位や3位になり続け、議席をほとんど獲得できない可能性があります。
比例代表制なら、その10%程度の支持が議席として反映されやすくなります。
社会には、経済政策、社会保障、教育、外交、安全保障、環境問題などについてさまざまな考え方があります。
比例代表制では複数の政党が議席を獲得しやすいため、多様な政治的意見を議会に反映しやすくなります。
多数派だけでなく、比較的小規模な政治勢力を支持する有権者の声も議会に届きやすいという点は、比例代表制の重要な特徴です。
小選挙区では選挙区ごとに当選者を決めるため、同じ政党への票でも地域によって議席への結び付き方が大きく異なることがあります。
比例代表制では、より広い範囲の票をまとめて議席に反映させるため、特定地域で1位になれなくても、広く支持を集めている政党が議席を獲得できます。

小さな政党でも議席を獲得しやすいことは比例代表制のメリットですが、同時にデメリットになることもあります。
多数の政党が議席を獲得すると、国会が細かく分かれ、単独で多数を確保できる政党が現れにくくなる可能性があります。
このような状態を「小党分立」と表現することがあります。
1つの政党だけで過半数を確保できなければ、複数の政党が協力して政権をつくる「連立政権」が必要になることがあります。
連立政権そのものが悪いわけではありません。複数の意見を調整しながら政治を進められるという長所もあります。
しかし、政策について政党間の意見が大きく異なれば、意思決定に時間がかかったり、連立の組み替えなどによって政権が不安定になったりする可能性があります。
多数の政党が参加する政治では、政策が成功した場合も失敗した場合も、「どの政党が責任を負うのか」が分かりにくくなることがあります。
これに対して小選挙区制では、大きな政党が議席の多数を獲得しやすいため、政権を担当する政党と野党の区別が比較的明確になりやすいとされています。
小選挙区では地域ごとに議員を選ぶため、「自分の地域を代表する国会議員」が比較的分かりやすいという特徴があります。
一方、比例代表制は広い地域を単位として議員を選ぶため、特定の地域と議員との結び付きが弱くなる場合があります。
そのため、地域特有の問題について「誰に相談すればよいのか分かりにくい」と感じる人が出てくる可能性があります。
比例代表制では、個々の候補者だけでなく政党そのものへの支持が重要になります。
制度の種類によっては、候補者の当選順位に政党側の判断が大きく影響します。そのため、「有権者ではなく政党が議員を選んでいるように見える」という批判が出ることがあります。
ただし、日本の比例代表選挙でも衆議院と参議院では仕組みに違いがあり、すべての比例代表制で候補者の選ばれ方が同じというわけではありません。
| 項目 | 比例代表制 | 小選挙区制 |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 得票に応じて議席を配分 | 各選挙区で最も多く票を得た候補者が当選 |
| 民意の反映 | 比較的反映されやすい | 票と議席に差が生じやすい |
| 死票 | 比較的少ない | 多くなりやすい |
| 小政党 | 議席を獲得しやすい | 議席を獲得しにくい |
| 政権 | 連立政権になりやすい場合がある | 大政党による政権が成立しやすい |
| 地域との結び付き | 比較的弱くなりやすい | 強くなりやすい |
選挙制度を考える際に重要なのが、「民意をできるだけ正確に議席へ反映すること」と「安定した政権をつくること」のバランスです。
比例代表制は前者、つまり多様な民意を議席へ反映することを重視した制度といえます。
一方、小選挙区制は、有権者の支持をある程度大きな政治勢力へ集約し、政権を選びやすくする機能が比較的強い制度です。
どちらが絶対的に優れているというわけではなく、何を重視するかによって評価が変わります。
例えば、全国的に15%の支持を集めている政党があるとします。
小選挙区だけで選挙を行った場合、この政党がすべての選挙区で15%程度の得票しか得られなければ、どの選挙区でも1位になれず、議席を獲得できない可能性があります。
ところが比例代表制なら、15%という支持そのものが議席配分に反映されるため、相応の議席を獲得できる可能性があります。
この違いが、比例代表制が「少数意見を議会に反映しやすい」といわれる理由です。
比例代表制であっても、得票率と議席率が完全に一致するわけではありません。
議席数には限りがあり、議席の配分方法や選挙区の大きさなどによって結果が変わるためです。
一般に、1つの比例選挙区から選ばれる議員数が多いほど、小さな政党でも議席を獲得しやすくなります。反対に、配分される議席数が少なければ、ある程度の票を獲得しても議席を取れない場合があります。
つまり、「比例代表制」という名称だけではなく、具体的に何議席をどのような単位で、どの方法を使って配分するのかも重要なのです。

比例代表の議席数を減らした場合、一般的には少数政党が議席を獲得するためのハードルが高くなる方向に働きます。
その結果、大きな政党に議席が集まりやすくなり、政治の意思決定や政権選択という面では分かりやすくなる可能性があります。
一方で、少数政党を支持する有権者の票が議席へ反映されにくくなり、多様な民意を国会へ届ける比例代表制の機能が弱まる可能性があります。
そのため、比例代表の定数をどうするかという問題は、単なる「国会議員の人数」の問題ではありません。どの程度まで民意の多様性を議席に反映させるのかという、選挙制度そのものに関わる問題でもあります。
比例代表制の主なメリットは、得票率を議席に反映しやすいこと、死票を減らしやすいこと、小政党でも議席を獲得できること、多様な意見を国会に届けやすいことです。
これに対して、比例代表制の主なデメリットは、小党分立が起こる可能性があること、連立政権になりやすいこと、政治的な責任の所在が分かりにくくなる場合があること、地域と議員との結び付きが弱くなりやすいことなどです。
比例代表制と小選挙区制の違いを非常に簡単に表現すれば、比例代表制は「多様な民意をできるだけ議席に反映すること」を重視し、小選挙区制は「民意を集約して政権を選びやすくすること」を重視した制度といえるでしょう。
日本の衆議院選挙が小選挙区と比例代表を組み合わせているのも、この2つの機能を両立させようとする考え方によるものです。
選挙制度について考える際には、単に「比例代表制は良い」「小選挙区制は悪い」と考えるのではなく、「民意の反映」と「政治の安定・政権選択」のどちらをどの程度重視するのかという視点から見ることが重要です。