2026年8月、東京高等検察庁の新しい検事長に就任した松本裕(まつもと・ゆたか)氏。
東京高検検事長は、全国の検察組織の中でも極めて重要なポストです。松本氏はこれまで、地方検察庁での捜査・公判実務だけでなく、法務省、最高検察庁、出入国在留管理庁、さらに海外の日本大使館など幅広い分野を経験してきました。
近年は福岡高検検事長、名古屋高検検事長を歴任し、2026年8月12日付で東京高検検事長に就任。検察首脳の一人としてさらに注目される存在となっています。
この記事では、松本裕氏の経歴や学歴、これまでに務めた主要ポストについて詳しく紹介します。
松本裕氏は大阪大学法学部を卒業しています。
1989年に大阪大学法学部を卒業。その後、司法修習を経て1991年に検事として任官しました。
大阪大学法学部は、裁判官・検察官・弁護士をはじめ、法曹界や官界に多くの人材を送り出してきた国立大学の法学部です。
松本氏は大学卒業後から長年にわたり検察・法務行政の世界を歩み、2026年時点で検事任官から約35年となります。
松本裕氏は1991年に検事に任官しました。
キャリアの初期には神戸地方検察庁などで勤務し、その後、大阪地方検察庁をはじめ各地の検察庁や法務省で経験を積んでいきます。
松本氏の経歴で特徴的なのは、一般的な検察実務だけではなく、法務行政や外交、入国管理など非常に幅広い分野を経験していることです。
松本氏は検察官としての勤務だけでなく、外務省に出向し、在ドイツ日本国大使館の一等書記官を務めた経験があります。
検察官が海外の日本大使館などで勤務するケースはあり、国際的な法律問題や司法協力などに関する経験を積むことになります。
松本氏が後に法務省や出入国在留管理庁の重要ポストを務めた背景を考えるうえでも、海外勤務経験は注目される経歴の一つです。
帰国後も松本氏は、検察庁だけでなく法務省の重要ポストを歴任しました。
法務省大臣官房参事官や大臣官房司法法制部司法法制課長などを務め、司法制度に関する政策や法制度の整備にも携わっています。
司法法制課長時代には、法曹養成制度改革などに関係する業務にも関わっていました。
つまり松本氏は、刑事事件の捜査や公判を担当する「現場の検事」としてだけではなく、国の司法制度を運営する行政官としても長い経験を持っていることになります。

松本氏は福島地方検察庁次席検事や東京地方検察庁総務部長なども歴任しました。
次席検事は地検のナンバー2にあたる重要ポストです。
また、国内最大規模の検察庁である東京地検で管理職を経験したことも、その後の検察幹部としてのキャリアにつながったとみられます。
2016年には法務省大臣官房秘書課長に就任しました。
秘書課は法務省の人事などを担当する中枢部門です。そのトップである秘書課長は、法務・検察組織の人事行政に深く関わる重要ポストです。
検察官としての実務に加えて法務省の組織運営にも携わったことは、松本氏の経歴を語る上で重要なポイントといえるでしょう。
2019年1月、松本裕氏は津地方検察庁検事正に就任しました。
検事正は各地方検察庁のトップです。
それまで法務省を中心に要職を経験してきた松本氏にとって、津地検検事正への就任は地方検察庁トップとして組織全体を指揮する立場になったことを意味します。
2020年には出入国在留管理庁次長に就任しました。
出入国在留管理庁は、外国人の出入国審査、在留管理、難民認定などを担当する法務省の外局です。
次長は長官を支える最高幹部の一人であり、松本氏が検察だけでなく入国・在留行政にも携わったことを示しています。
2021年9月には法務省大臣官房長に就任しました。
大臣官房長は、法務省全体の政策調整、人事、予算、組織運営などに関わる重要ポストです。
法務省の中枢を担う官房長への就任によって、松本氏は法務・検察組織の代表的な幹部の一人となりました。
2023年1月には最高検察庁監察指導部長に就任しました。
最高検察庁は全国の検察庁を統括する組織です。
監察指導部は、検察組織内部の監察や業務運営の適正化などに関係する部門であり、そのトップを務めることは全国の検察組織を監督する立場の一つとなったことを意味します。
松本氏はその後、最高検察庁公安部長も務めました。
公安部は公安関係事件などを扱う重要部門です。
地方検察庁、法務省、出入国在留管理庁、最高検と幅広い組織を経験した松本氏は、この頃には検察首脳候補の一人として重要なポストを続けて担当するようになっていました。
2024年7月9日、松本氏は福岡高等検察庁検事長に就任しました。
高等検察庁は全国に8庁あり、高検検事長はその地域の検察組織を統括する最高責任者です。
福岡高検は九州・沖縄地域を管轄しており、松本氏は管内の地方検察庁を指導・監督する立場となりました。
着任時には、犯罪の態様や背景となる組織が変化していく中で、法律を柔軟に駆使して対応していく姿勢を示しています。
2025年7月17日には、福岡高検検事長から名古屋高等検察庁検事長に就任しました。
名古屋高検は愛知県、三重県、岐阜県、福井県、石川県、富山県などを管轄します。
福岡に続いて名古屋でも高検検事長を務めたことで、松本氏は全国の検察首脳の中でも特に重要な位置を占めるようになります。
そして2026年8月12日、松本裕氏は東京高等検察庁検事長に就任しました。
前任の川原隆司氏が、女性初の検事総長を務めた畝本直美氏の後任として検事総長に就任したことに伴う人事です。
松本氏は名古屋高検検事長から東京高検検事長へと異動しました。
東京高検は、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、新潟、静岡の各地域を管轄する巨大な高等検察庁です。
そのトップである東京高検検事長は、一般に「検察ナンバー2」とも呼ばれる極めて重要なポストです。
歴代の東京高検検事長から検事総長に就任する例も多く、検察人事の中では特に注目されるポストとなっています。
2026年8月17日、松本氏は東京高検検事長として就任会見を行いました。
松本氏は、事案の真相を解明することに加え、犯罪被害者の支援や犯罪を犯した人の再犯防止も検察の重要な役割であるとの考えを示し、検事長として職務に力を尽くす姿勢を示しました。
一方、近年は検察官の取り調べ方法や事件関係者との不適切な関係など、検察組織への信頼を揺るがす問題も相次いでいます。
松本氏はこうした問題について、検察に対する国民の信頼を損なうものだとの認識を示し、日々の業務を誠実に積み重ねて信頼回復を図る必要性を強調しました。
さらに、大阪地検の証拠改ざん事件を契機として策定された「検察の理念」が現在も実践されているか、一人ひとりの検察官が自ら問いかけることが重要だとの考えも示しています。
松本氏のキャリアを見ると、大きく3つの特徴があります。
地方検察庁の検事や次席検事、検事正を経験する一方で、法務省の司法法制課長、秘書課長、大臣官房長などを歴任しています。
捜査・公判を担当する検察官としての経験と、法務行政を担う官僚としての経験を併せ持っています。
在ドイツ日本大使館での勤務や出入国在留管理庁次長を経験している点も特徴的です。
国内の刑事司法だけでなく、国際関係や外国人政策に関連する行政にも携わっています。
2024年の福岡高検、2025年の名古屋高検、そして2026年の東京高検と、3つの高等検察庁で検事長を務めています。
特に東京高検検事長への就任によって、松本氏は現在の日本の検察組織を代表する最高幹部の一人となりました。
東京高検検事長への就任によって、今後注目されるのが松本裕氏が将来、検事総長に就任する可能性があるのかという点です。
東京高検検事長は歴代の検事総長を多数輩出してきたポストであり、検事総長への有力な登竜門の一つとされています。
実際、松本氏の前任である川原隆司氏も、東京高検検事長から2026年8月に検事総長へ就任しています。
ただし、検事総長人事は年齢や退官時期、他の検察幹部との人事バランスなどにも左右されます。そのため、現時点で松本氏の将来の検事総長就任が決まっているわけではありません。
それでも、東京高検検事長にまで就任した松本氏が、今後の検察首脳人事を考える上で重要な人物であることは間違いありません。
松本裕(まつもと・ゆたか)氏は、兵庫県出身で大阪大学法学部を卒業し、1991年に検事に任官した検察官です。
大阪地検などでの検察実務に加え、在ドイツ日本大使館、法務省、出入国在留管理庁、最高検察庁などで幅広い経験を積んできました。
その後、津地検検事正、法務省大臣官房長、最高検監察指導部長、最高検公安部長を経て、福岡高検検事長、名古屋高検検事長を歴任。
2026年8月12日には東京高検検事長に就任しました。
検察への信頼回復が大きな課題となる中、検察組織の最高幹部の一人となった松本氏が、東京高検をどのように率いていくのか。そして今後さらに検事総長へと進む可能性があるのかについても注目されます。