近年、メジャーリーグを見ていると「ABSチャレンジ」という言葉を目にする機会が増えました。中継を見ていて、打者や捕手がヘルメットや帽子に触れた直後、球場のビジョンに投球の軌道と判定結果が映し出される場面を見て、「これは何だろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。
ABSチャレンジとは、MLBで導入された自動ボール・ストライク判定システムを使い、ボール・ストライクの判定について選手がその場で再確認を求めることができる制度です。従来のように球審がすべてを最終判断する形とは異なり、人間の判定を基本に残しながら、必要な場面だけテクノロジーでチェックできる点が大きな特徴です。
この記事では、absチャレンジとは何か、どのような仕組みなのか、なぜ導入されたのか、完全自動判定と何が違うのかまで、ブログ記事としてわかりやすく詳しく解説します。
absチャレンジとは、**ABS(Automated Ball-Strike System)**を利用して、球審が下したボールまたはストライクの判定について、その直後に選手が異議を申し立て、システム判定で見直してもらう仕組みです。
ここでいうABSは、一般的に「ロボット球審」「自動ボール・ストライク判定」などと呼ばれる技術のことです。ただし、現在のMLBで採用されているのは、毎球すべてを機械が判定する完全自動型ではありません。
あくまでベースは球審の判定であり、
という場面で、限られた回数だけチャレンジできるのが「absチャレンジ」です。
つまり、absチャレンジとは単なる機械判定ではなく、**人間の審判とテクノロジーを組み合わせた“ハイブリッド型の判定制度”**と言えます。
ABSは、Automated Ball-Strike System の略です。
その名の通り、投球がストライクゾーンを通過したかどうかを、カメラやトラッキング技術によって判定する仕組みです。
ただし、MLBで話題になっている「ABSチャレンジ」は、このシステムを全面的に使うのではなく、必要な時だけ呼び出す形になっています。そのため、「ABS=全部ロボット判定」と理解すると少しズレがあります。

では、MLBでは実際にどのように運用されているのでしょうか。
absチャレンジの基本的な流れは次の通りです。
最初の判定は従来通り、ホームプレート後方に立つ球審が行います。つまり、毎球いきなり機械判定になるわけではありません。
判定直後、対象となる選手がすぐにチャレンジの意思を示します。時間をおいてベンチが相談し、あとから覆すような仕組みではありません。まさにその瞬間の判断が求められます。
球場に設置されたトラッキングシステムが、その投球がストライクゾーンを通ったかどうかを判定します。
チャレンジの結果は比較的短時間で示され、最初の判定が正しかったのか、それとも覆るのかがわかります。
このテンポの良さも、absチャレンジの特徴のひとつです。長い中断を挟まず、比較的スムーズにゲームが進むよう工夫されています。

absチャレンジでは、誰でも判定を要求できるわけではありません。
チャレンジできるのは基本的に、その投球に直接関わった選手です。
具体的には、
の3者です。
これはとても重要なポイントです。監督やベンチのコーチ、ほかの野手が外から「今のは入っていた」「今のは外れていた」と伝えてチャレンジすることは認められていません。
つまり、absチャレンジはその場でプレーしている当事者が、瞬時に自分の感覚で判断して行使する制度なのです。
このルールによって、単なるビデオ判定の延長ではなく、選手自身の「ゾーン感覚」や勝負勘も問われる仕組みになっています。
MLBのabsチャレンジでは、各チームに試合開始時点で2回のチャレンジ権が与えられます。
そして、ここにも面白い特徴があります。
チャレンジの結果、最初の判定が覆った場合は、そのチャレンジは成功とみなされ、権利を保持できます。
一方で、判定がそのまま維持された場合は、そのチャレンジは失敗となり、回数を1つ失います。
この仕組みのため、absチャレンジは「とりあえず何でも使う」ものではありません。明らかに勝負どころ、あるいは確信がある場面で切るべき戦略的な権利になります。
終盤の大事な場面まで温存するのか、それとも序盤でも確実にひっくり返せそうな判定で使うのか。この駆け引きも、absチャレンジの見どころになっています。
absチャレンジでは、判定に異議がある場合、打者・投手・捕手が帽子やヘルメットに触れる動作でチャレンジの意思を示すのが基本です。
中継を見ていると、打者がヘルメットのつば付近に触れたり、捕手や投手が帽子に手をやったりする姿が映ることがあります。これがabsチャレンジの合図です。
しかもこの意思表示は、判定直後に即座に行う必要があります。
時間がたってからベンチを見て判断したり、周囲に確認してからアピールしたりすることは原則として認められていません。ここにも、スピード感とゲームの流れを壊さないための工夫が見て取れます。
absチャレンジでは、投球の位置をカメラとトラッキング技術で測定し、ストライクゾーンと照らし合わせて判断します。
MLBで使われているABSは、ホームプレートの幅を基準にした2次元の長方形のゾーンを採用しています。さらに、上下の高さは打者ごとの身長をもとに設定されます。
この仕組みにより、「低めは取る審判」「外角が広い審判」といった人によるクセを減らし、より客観的な判定を目指しています。
一方で、実際の野球では打者の構え方や審判の見え方も絡むため、選手側の感覚とシステム判定が必ずしも完全に一致するとは限りません。このギャップもまた、現在のMLBでabsチャレンジが話題になる理由のひとつです。
absチャレンジ導入の背景には、いくつかの大きな理由があります。
野球では昔から、ボール・ストライク判定をめぐる不満や抗議が絶えませんでした。特にMLBでは、試合の流れを大きく左右する場面での誤審が大きな話題になることが少なくありません。
absチャレンジは、そうした不満をゼロにはできなくても、「本当に重要な場面では確認できる」という安心感をもたらします。
機械がすべてを判定する「完全自動化」には、ファンや選手、関係者の間で賛否があります。野球には、人間が判定するからこその味わいもあると考える人が多いからです。
その点、absチャレンジは球審の役割を残しながら、必要な時だけ技術を使う中間的な制度です。導入のハードルが比較的低く、受け入れられやすいと考えられました。
毎球すべてを自動判定にすると、制度上は公平に見えても、運用や見せ方によってはテンポの問題が出る可能性があります。また、従来の捕手のフレーミングや審判との駆け引きが薄れるという指摘もあります。
そこでMLBは、チャレンジ制を採用することで、重要な場面だけを機械に委ねる形を選びました。
「ABSが入ったなら、もう球審はいらないのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、現在のMLBのabsチャレンジ制度は、そのような単純なものではありません。
この違いは非常に大きいです。現在MLBで導入されているのは後者であり、野球の伝統と技術革新の折衷案として位置づけられています。
absチャレンジの導入は、単に判定精度を高めるだけではありません。試合全体にもさまざまな変化をもたらします。
例えばフルカウント、満塁、終盤の接戦など、1球の重みが非常に大きい場面では、チャレンジの成否が試合結果に直結する可能性があります。
チャレンジ権は無限ではないため、「今の球は本当に外れていたのか」「あれは入っていたはずか」を見極める能力が重要になります。特に捕手の感覚や打者の見極め能力は、今後より注目されるでしょう。
制度上は当事者しかチャレンジできませんが、日頃からチーム内で「どんな場面で使うか」「投手より捕手優先にするか」など方針を共有しているチームもあります。これにより、同じ制度でも運用にはチームカラーが出ます。
チャレンジが入ると、球場ビジョンや中継で投球位置が可視化されるため、ファンも「本当に入っていたのか」をその場で確認できます。判定をめぐる緊張感が、ひとつのエンターテインメント要素にもなっています。
absチャレンジには、次のようなメリットがあります。
重要な誤審をその場で修正できる可能性があるため、試合の公平性向上につながります。
判定に疑問があっても、感情的な抗議だけで終わらず、制度として再確認できる点は大きな利点です。
完全自動化ではなくチャレンジ制であるため、球審の存在感や野球らしい流れをある程度残せます。
映像・データ・トラッキングが当たり前になった現代のスポーツにおいて、野球も少しずつ制度を進化させているといえます。
一方で、absチャレンジには課題もあります。
システムは身長ベースでゾーンを設定しますが、打者は毎回同じ姿勢とは限りません。そのため、選手の体感と判定結果に違和感が出る場合があります。
本当に終盤まで残すべきか、序盤で確実に使うべきかの判断は簡単ではありません。結果論で「ここで使うべきだった」と言われる場面も出てきます。
制度が新しいため、選手やチームによって得意不得意が出ています。今後は「チャレンジがうまい捕手」「見極めが鋭い打者」といった新しい評価軸も生まれるかもしれません。
野球はもともと、人間が裁くスポーツとして発展してきました。そのため、テクノロジー介入そのものに違和感を覚えるファンがいるのも自然なことです。
absチャレンジは、いきなりMLB公式戦に導入されたわけではありません。マイナーリーグでの実験や検証が積み重ねられ、その後にMLBレベルでの試験運用が進められてきました。
こうした段階的な導入は、非常にMLBらしい進め方でもあります。ルール変更が試合全体に与える影響を慎重に見ながら、選手・監督・審判・ファンの反応を確認し、少しずつ制度を整えてきたのです。
その結果として、全面的な「ロボット球審」ではなく、現在のようなチャレンジ型の仕組みが採用される流れになりました。
今後の焦点は、absチャレンジがMLBの中でどの程度定着するかです。
考えられるポイントとしては、
といった点が挙げられます。
現時点では、チャレンジ型が「ちょうどよい落としどころ」として受け止められている面が強く、すぐに完全自動型へ進むとは限りません。むしろ、野球の人間的な面を残しつつ、明らかな疑問判定だけを修正する制度として、しばらくはこの形が注目されていきそうです。
absチャレンジとは、MLBで導入された自動ボール・ストライク判定システム(ABS)を使い、打者・捕手・投手がボール・ストライク判定の見直しを求められる制度です。
ポイントを整理すると、次のようになります。
absチャレンジは、単なる新ルールではありません。野球というスポーツが、伝統を残しながらテクノロジーとどう折り合いをつけていくのかを象徴する制度でもあります。
今後MLBを見る際には、ホームランや三振だけでなく、「この1球でチャレンジを使うのか」という駆け引きにも注目すると、より試合が面白く見えてくるはずです。