「食品消費税がゼロの国」というテーマは、近年の物価高やエネルギー価格の上昇、世界的なインフレの影響を受け、改めて注目を集めています。とりわけ食料品は、生活する上で欠かすことのできない必需品であり、その価格にどの程度の税金が上乗せされるかは、家計の負担に直結します。
消費税や付加価値税は、税制として安定した税収を確保できる一方で、所得の低い層ほど負担が重くなる「逆進性」が指摘されてきました。そのため、多くの国では生活必需品である食品について、税率をゼロにしたり、非課税としたりする特別な配慮が行われています。
本記事では、食品に消費税(付加価値税・VAT・GSTなど)が課されていない国や、制度上は課税が存在するものの、実質的にゼロに近い扱いをしている国を中心に取り上げます。あわせて、そうした制度が採用されている背景や、メリット・デメリット、日本との違いについても、できるだけ丁寧に整理していきます。
まず前提として、多くの国では、日本の「消費税」に相当する税が導入されていますが、その名称や仕組みは国によって異なります。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
これらはいずれも、商品やサービスの消費に対して広く薄く課税する間接税ですが、食品に対する扱いには大きな違いがあります。
国ごとの制度は大きく分けると、次のようなタイプに分類できます。
特に食品については、「生きていくために不可欠なもの」という性質から、税負担を軽減する政策が採られることが多いのが特徴です。

ここでは、食品に対して消費税・VATが原則としてかからない国、あるいは法律上ゼロ税率が明確に適用されている国を紹介します。
イギリスは、食品のゼロ税率を語る際に必ずと言っていいほど取り上げられる国です。多くの基本的な食料品がVATゼロ税率となっています。
これらはVATが0%です。一方で、
などは標準税率が課されます。何が「必需品」で、何が「嗜好品」かを明確に分ける考え方が、制度の根底にあります。
アイルランドもイギリスと非常に近い制度を採用しており、
となっています。EU加盟国でありながら、食品の税率がゼロである点は特徴的です。家計負担の軽減と社会的弱者への配慮を重視した税制といえます。
マルタでは、
が適用されています。島国であり、食料の多くを輸入に頼っているため、食品価格が上昇しやすい事情があります。そのため、税制面で価格を抑える工夫がなされていると考えられます。
カナダでは、連邦レベルの税であるGSTにおいて、
が適用されます。ただし、
などは課税対象となります。食品であっても一律に非課税ではなく、生活必需性の高いものに限定している点が特徴です。

次に、法律上は消費税やGSTが存在するものの、生活必需品については非課税または大幅に軽減されており、実質的に食品消費税がゼロに近い国を見ていきます。
オーストラリアでは、
についてはGSTが非課税とされています。加工度の低い食品ほど税負担が軽くなる仕組みで、健康志向や公衆衛生政策とも関係しています。一方、加工食品や外食には課税されるため、線引きは比較的細かくなっています。
ニュージーランドは、やや異なるアプローチを取っている国です。原則として、
しています。その代わりに、社会保障や給付、税額控除などによって、低所得層を支える仕組みを整えています。このため、食品税をゼロにする代わりに、再分配政策で対応する国の代表例といえます。

食品消費税をゼロにする制度には、さまざまな利点があります。
特に、所得にかかわらず同じ税率がかかる消費税においては、食品ゼロ税率は公平性を高める有効な手段とされています。
一方で、食品消費税をゼロにすることには課題も存在します。
例えば、健康食品やサプリメント、調理済み食品などを食品とみなすかどうかは、国によって判断が分かれやすい点です。制度が複雑になりすぎると、分かりにくさが新たな問題になることもあります。
日本では現在、
という仕組みが採用されています。食品が非課税やゼロ税率である国と比べると、日本の食品税率は依然として高い水準にあります。
その背景には、
があります。現在高市首相が消費税をゼロにする事を検討している事を表明しましたましたが、日本は元もと食品税をゼロにする代わりに、給付金や社会保障制度を通じて再分配を行うという考え方を重視していたといえます。
食品消費税がゼロ、あるいは実質的にゼロに近い国は世界に複数存在し、特に欧州諸国や英連邦諸国に多く見られます。
それぞれの社会的背景や価値観によって、選ばれる制度は異なります。食品消費税ゼロという政策は、単なる減税ではなく、その国がどのような生活水準を守ろうとしているのかを示す指標ともいえるでしょう。
今後、日本で食品消費税のあり方が議論される際には、海外の事例を表面的に見るだけでなく、その背景にある考え方まで含めて理解することが重要になります。