南鳥島(みなみとりしま)沖の海底には、レアアース(希土類)を多く含む「レアアース泥」が広範囲に堆積していることが、これまでの調査や研究によって明らかになっています。レアアースは、EV(電気自動車)の駆動用モーター、風力発電設備の発電機、スマートフォンやパソコンなどの電子機器、さらには先端製造装置や防衛関連分野にまで幅広く使われており、現代社会を支える重要資源の一つです。
一方で、レアアースの供給は特定の国・地域に偏りやすく、国際情勢や輸出規制、外交関係の変化によって調達が不安定になるリスクを抱えています。こうした背景から、日本では近年、「レアアースの国産化」や「供給源の多角化(脱・特定国依存)」が国家レベルの課題として強く意識されるようになりました。
そこで大きな注目を集めているのが、南鳥島沖で進められている深海レアアース泥の採鉱(採掘)プロジェクトです。これは、日本の排他的経済水域(EEZ)内に存在する資源を活用しようとする試みであり、資源安全保障の観点からも象徴的なプロジェクトと言えます。
では、南鳥島レアアースの採掘(採鉱)は、実際にいつから始まるのか? この記事では、探査船「ちきゅう」による試験の位置づけから、本格的な採鉱試験、そして商業化に至るまでの流れを、時系列に沿って丁寧に解説していきます。
南鳥島沖のレアアースについて、「もうすぐ大量に採れるのでは?」といったイメージを持つ人もいますが、実際にはいきなり商業採掘が始まるわけではありません。深海という過酷な環境で資源を回収するため、計画は慎重に、段階を踏んで進められています。
大きな流れとしては、次の3段階に整理できます。
現在、ニュースや報道で注目されているのは、まさにこのうちの**「1) 試験(技術実証)」の段階**です。ここで技術的な成立性が確認されなければ、次の段階へ進むことはできません。

南鳥島レアアースに関する報道では、「採掘」「採鉱」「試験採掘(試験採鉱)」といった似た言葉が使われています。これらは意味が近いものの、文脈によってニュアンスが異なります。
南鳥島沖は水深およそ6000mという超深海です。そのため最大の技術的課題は、**「レアアースを含む泥を、長時間・連続的に安全に揚泥(ようでい=泥を引き上げる)できるか」**という点にあります。この部分が成立しなければ、商業化の議論に進むことはできません。

南鳥島沖のレアアース泥が注目されるようになったのは2010年代に入ってからです。それ以降、大学や研究機関、公的機関を中心に、資源量の把握、泥の性質の分析、回収方法の検討などが長年にわたって行われてきました。
深海での採鉱は、陸上鉱山とは根本的に条件が異なります。
こうした課題があるため、研究・準備期間は必然的に長くなりました。
直近の大きな節目となるのが、2026年1月11日〜2月14日にかけて実施される試験です。この期間に行われるのは、いわゆる「商業採掘」ではなく、技術実証を目的とした試験作業です。
この試験の主なポイントは次の通りです。
さらに重要なのが、採鉱作業と並行して**海洋環境モニタリング(観測)**が行われる点です。単に「泥が取れたか」だけではなく、周囲の海洋環境にどのような影響が出るのかも含めて確認する必要があります。
✅ この段階は、報道では「試験採掘」「試験採鉱」と表現されることがありますが、実際の目的は 機器・揚泥管・運用全体が成立するかどうかの確認にあります。
公的な資料や計画では、2026年初頭の試験は、2027年2月に予定されている「本格的な採鉱試験」への第一歩と位置づけられています。
この段階になると、
などが重視されるようになります。一般の人がイメージする「採掘にかなり近い状態」に、ようやく近づくのがこのタイミングです。
✅ 時系列で整理すると、
- 2026年:接続・作動確認を中心とした技術実証
- 2027年:本格的な採鉱試験(次段階) という流れになります。
多くの人が最も知りたいのは、「実際に事業として採掘が始まるのはいつか」という点でしょう。しかし結論から言えば、商業化の開始時期は現時点では明確に決まっていません。
その理由は、深海レアアース採鉱が、次のような複数の条件をクリアして初めて事業として成立するからです。
2026年の試験、2027年の本格試験を経たうえで、これらの条件が整って初めて、商業化の議論が本格化すると考えられます。
ニュースの見出しでは、「南鳥島でレアアース採掘開始」といった強い表現が使われることがあります。しかし、その多くは試験段階を指しているケースです。
精製設備の整備やコスト、環境対応などを含めると、商業化までにはなお時間がかかる可能性があります。この点を理解しておくと、情報を冷静に受け取ることができます。
「南鳥島レアアース採掘はいつから?」という疑問を追い続けるには、次のような発表や報道に注目すると分かりやすくなります。
最後に、この記事の要点を整理します。
「南鳥島でレアアースが採れる」という話題に触れたときは、 “試験段階 → 本格試験 → 商業化”のどこを指しているのかを意識することで、ニュースや報道をより正確に理解できるようになります。