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イランと日本の貿易

イランと日本の貿易

規模・主要品目・制裁とトランプ「25%関税」発言の影響

2026年1月、ドナルド・トランプ米大統領が 「イランと取引(doing business)する国に対し、米国との貿易に25%の関税を課す」 と表明したことで、イランとの貿易関係を持つ国々に大きな緊張が走りました。この発言は、イランとの取引規模が大きい国だけでなく、取引規模が比較的小さい国や、間接的に関与している国(日本を含む) にまで影響が及ぶ可能性を示唆しています。

日本の対イラン貿易は世界全体から見れば決して大きくはありません。しかし、

  • 日本は実際にイランとどのようなモノを輸出入しているのか
  • 国連制裁・米国制裁・日本独自措置という複数の制裁枠組みがどう作用しているのか
  • トランプ発言が単なる政治的メッセージではなく、現実の関税・通商コストとして発動した場合、日本企業にどのような影響が及ぶのか

これらを整理することで、ニュースの表層だけでは見えない「実務的なリスク構造」が浮かび上がります。本記事では、日本とイランの貿易関係を軸に、制裁と通商リスクを立体的に解説します。


1. 日本とイランの貿易規模:結論から言えば「小さいが無視できない」

国連COMTRADEや関連統計を基にすると、2024年時点の日本→イラン輸出は約0.9億ドル、イラン→日本の輸入は約0.3億ドルと推計されています。年による増減はあるものの、金額ベースでは数千万〜1億ドル規模にとどまっています。

これは、中国、UAE、トルコ、インドといったイランの主要貿易相手国と比べると、明らかに小さい水準です。そのため、日本の対イラン貿易は長らく「限定的」「周辺的」と認識されてきました。

重要なポイント: **規模は小さいが“ゼロではない”**という点です。トランプ発言のように「取引の有無」そのものを問題視する政策が取られた場合、金額の大小に関わらず日本も射程に入る可能性があります。


2. 日本とイランは何をやり取りしているのか

2-1. 日本→イラン(輸出):医療・計測・産業機器が中心

貿易データ(OECなど)を見ると、日本からイランへの輸出品目としては、

  • 医療機器・医療用器具
  • X線関連装置や検査機器
  • 写真・計測関連材料 といった分野が比較的目立ちます。

これらはいずれも 民生用途・医療用途・産業用途 が中心で、武器や軍需品とは直接関係しないものが大半です。ただし、精密機器や計測装置は「軍民両用(デュアルユース)」と見なされる余地があるため、輸出管理の観点では常に慎重な対応が求められてきました。

2-2. イラン→日本(輸入):少量の食品・繊維などが中心

一方、イランから日本への輸入は、

  • 食品原料
  • 繊維・関連製品 などの小口取引が中心です。

かつて日本とイランの貿易を象徴していたのは イラン産原油 でした。しかし、日本は米国による制裁免除の終了を受け、2019年前後からイラン産原油の輸入を事実上停止しています。その結果、現在の対イラン輸入はエネルギー分野が中心ではなくなっています。


3. 日本企業が直面する「制裁」という多層構造

日本とイランの貿易を理解する上で欠かせないのが、制裁の多層構造です。日本企業は単に商流だけでなく、次のような枠組みを同時に意識する必要があります。

  • 国連安保理決議に基づく制裁
  • 米国独自の対イラン制裁(域外適用の可能性)
  • 日本独自の外為法・輸出管理制度

3-1. 2025年秋:国連制裁の「再適用」が日本企業に与える影響

日本政府は、2025年9月28日をもって、安保理決議2231で一度解除されていた対イラン制裁が再適用されたことを公表しています。これにより、

  • 以前は可能だった取引が再び制限対象となる
  • 輸出許可や事前確認が必要になる品目が増える
  • 資金移転・決済のハードルが上がる

といった変化が生じています。企業にとっては「昔できたから今回も大丈夫」という判断が通用しなくなっている点が重要です。


4. トランプ「イラン取引国に25%関税」発言が日本に与える意味

4-1. 発言の整理:何が分かっていて、何が分かっていないのか

現時点で明らかになっているのは、

  • 対象は「イランと取引する国」
  • 措置は「米国との貿易に25%関税」
  • ただし 法的根拠、適用範囲、運用ルールは未提示

という点です。具体的な大統領令や省庁ガイダンスが示されていないため、実務上の解釈は極めて不透明です。

4-2. 日本にとっての本当のリスクは「定義の広がり」

日本とイランの貿易額そのものは小さいものの、もし米国が

  • 物品貿易だけでなく 金融・海運・保険などのサービス取引 まで含める
  • 第三国(UAEなど)経由の取引も「イランとの関係」とみなす
  • 過去の取引実績や関係性そのものを問題視する

といった広い定義を採用すれば、影響は 金額ではなく「関与の有無」 で判断されることになります。

4-3. 日本企業に想定される具体的影響

  1. 米国向け輸出に対する 追加関税リスク
  2. 米国企業・金融機関からの 取引精査(デューデリジェンス)強化
  3. イランとの関係を持つ企業に対する 信用・レピュテーションリスク
  4. 契約書における制裁条項・関税負担条項の見直し要求

特に米国市場への依存度が高い企業ほど、「取引額が小さいイラン取引」を戦略的に見直す判断を迫られる可能性があります。


5. 企業・実務担当者が最低限確認すべきポイント

※以下は一般的な論点整理であり、法務・税務アドバイスではありません。

(1) 取引関係の棚卸し

  • 直接の輸出入
  • イラン由来の原料・部材
  • イラン関連企業との金融・物流・保険取引
  • 第三国経由の間接取引

(2) 品目と用途の再確認

  • デュアルユース該当性の有無
  • 輸出許可・届出の要否
  • エンドユーザー・最終用途の確認

(3) 決済・物流面のリスク

  • 決済停止や遅延の可能性
  • 保険・船舶契約に含まれる制裁条項

(4) 米国ビジネスへの影響試算

  • 仮に25%関税が課された場合の利益率への影響
  • 価格転嫁・取引条件変更の余地

まとめ:日本×イラン貿易は「小規模だが制度変更に弱い」

  • 日本とイランの貿易規模は 国際的に見れば小さい水準 にとどまる
  • しかし、制裁や関税のルールが変わると、商流・決済・信用 が一気に影響を受ける
  • トランプ発言の核心は、関税率そのものより 「取引の定義と運用」 にある

今後は、

  • 大統領令や公式ガイダンスが実際に出るのか
  • 「取引」の範囲がどこまで拡張されるのか
  • 既存関税への上乗せか、新設関税か

といった点が、日本企業にとって極めて重要な判断材料になります。


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