イランと取引のある国
イラン貿易相手国リスト|トランプ「25%関税」発言で何が起きる?
はじめに:なぜ今「イランの貿易相手国」がこれほど注目されるのか
2026年1月、ドナルド・トランプ米大統領が「イランと取引のある国に対して25%の関税を課す」と表明したことで、**“イランと貿易関係を持つ国=100カ国超に及ぶ可能性”**という点が一気に国際的な注目を集めました。
イランは長年、国際制裁の対象となってきた国ですが、それでも実際には世界各地の多くの国と何らかの形で貿易関係を維持しています。今回の発言がもし文字通り実行される場合、イランとの貿易額が大きい国だけでなく、**貿易額が比較的小さい国(日本を含む)**にまで影響が及ぶ可能性があり、国際貿易や企業活動に混乱をもたらす懸念が強まっています。
本記事では、次の点を軸に整理していきます。
- 「イランと取引のある国」とは、どこまでを指すのか
- イランの主要な貿易相手国とその特徴
- 地域別に見たイラン貿易ネットワークの構造
- いわゆる“二次関税(セカンダリー関税)”が現実化した場合の影響とリスク
ニュースを表面的に追うだけでは見えにくい背景や論点を、できるだけ分かりやすく解説します。
1. 「イランと取引のある国」とは?(定義が極めて重要な理由)
一口に「取引」と言っても、実務や制度の世界ではその意味は決して単純ではありません。実際には、次のような複数の要素が混在しています。
- モノの貿易(輸出・輸入):税関統計などで比較的把握しやすい
- サービス取引:輸送、建設、IT、技術支援など。統計に表れにくい
- 第三国を経由した“迂回取引”:実態は存在するが、書類上は別の国との取引として処理されることも多い
- 金融・保険・海運などの周辺サービス:制裁との関係で最も問題になりやすい分野
今回のトランプ発言では「イランと取引する国」という表現が使われていますが、どこまでを“イランとの取引”とみなすのかは明確に示されていません。この定義が曖昧なままだと、対象国は雪だるま式に増え、各国政府や企業の現場で深刻な混乱が生じる恐れがあります。
2. イランの主要な貿易相手国(2022年時点の代表的データ)
世界銀行系データベース(WITS)などを見ると、2022年時点でのイランの主要な貿易相手国の構図が浮かび上がります。
✅ 輸出(イラン → 相手国)で上位になりやすい国
- 中国
- イラク
- アラブ首長国連邦(UAE)
- (集計方法によっては)トルコ など
✅ 輸入(相手国 → イラン)で上位になりやすい国
補足ポイント:
- **UAEは“中継・再輸出拠点”**としての性格が非常に強く、イランの輸入相手国として統計上大きく見えやすい
- 中国は最大級の貿易相手国であり、原油や石油化学製品を中心に、イラン経済を支える重要な存在となっています
3. 地域別に見る「イランと取引のある国」
ここでは、主要国と代表的な国を中心に、地域別に整理します。 ※実際には100カ国以上が何らかの形で関係すると考えられますが、本記事では 影響が議論されやすい国・地域 に焦点を当てます。
3-1. 中東(湾岸・周辺国)
- UAE(ドバイなど:再輸出のハブ)
- イラク(地理的近接性とエネルギー・生活物資の結び付き)
- オマーン
- カタール
- クウェート
- アフガニスタン
- パキスタン
- シリア(政治的・軍事的文脈でも注目されやすい)
特徴:
- 陸路や短距離の海上輸送による取引が多く、食料、建材、日用品といった生活密着型の品目が中心になりやすい
- 制裁が厳しくなるほど、周辺国の中継・代替機能が強化される傾向があります
3-2. 東アジア・南アジア
- 中国(最大級かつ最重要の相手国)
- インド(食料品、医薬品などで存在感)
- 韓国(過去の取引実績が大きく、制裁との関係で注目されがち)
- 日本(規模は小さいが、取引自体は存在)
- マレーシア/インドネシア/タイ(工業製品・素材など)
特徴:
- エネルギー分野が注目されやすい一方、制裁の影響で公式統計に反映されにくいケースも多い
- 食料、医薬品、工業製品など、非エネルギー分野の取引も継続的に存在します
3-3. 欧州
- ドイツ(機械・工業製品分野での存在感)
- イタリア/フランス/スペイン/オランダ(年ごとに取引規模は変動)
- EU全体としての対イラン貿易も統計として把握されています
特徴:
- 制裁強化局面では貿易額が大きく縮小
- それでも、医療・人道目的など限定分野では取引が残ることがあります
3-4. ロシア・中央アジア
- ロシア
- カザフスタン
- アゼルバイジャン
- アルメニア
- ウズベキスタン
特徴:
- 地政学的な思惑や陸上輸送ルートと密接に結びつきやすい
- 政治情勢の変化によって取引構造が左右されやすい地域です
3-5. アフリカ・中南米(規模は小さくても無視できない)
- 南アフリカ
- ケニア/ナイジェリア(年や品目によって増減)
- ブラジル(食料品など)
- ベネズエラ(政治的連携の文脈で語られることが多い)
特徴:
- 大口取引は少ないものの、特定品目や時期に応じて点在的な取引が確認されます
4. なぜ「イランと取引のある国」が100カ国を超えるのか
「主要相手国」は限られている一方で、貿易統計上は非常に多くの国がイランと取引している形になります。その理由としては、
- 金額が小さくても、年に数回の取引があれば統計に計上される
- UAEなどの中継国を通じ、最終的な取引相手国が広がる
- 医療・食料など、人道目的で制裁の例外となる取引が存在する
といった要因が重なっているためです。結果として、「イランと取引のある国」は100カ国を超える規模になり得ます。
5. 「イラン取引国に一律25%関税」が現実化した場合の影響
ここからは、トランプ発言が実際に政策として動いた場合に、どのような混乱や影響が想定されるかを整理します。
5-1. 取引の定義次第で対象国・対象企業が急拡大
- モノの貿易だけを対象とするのか
- サービス(金融・保険・海運)まで含めるのか
- 第三国経由の迂回取引をどう扱うのか
これらの線引きが曖昧な場合、企業のコンプライアンス負担は急激に増大します。
5-2. 既存関税への「上乗せ」か「別枠」かという問題
- すでに課されている関税に25%を上乗せするのか
- それとも別の新たな関税枠なのか
この違いは、特に米国市場への依存度が高い国や産業(自動車、電子機器、機械など)にとって極めて重要です。
5-3. 間接的にイランと関わる企業への波及
- UAEなどを経由した調達
- 中東地域での合弁事業やプロジェクト
- 海運・保険・金融契約
直接イランと取引していなくても、サプライチェーンのどこかで関係があれば影響を受ける可能性があります。
6. まとめ:鍵を握るのは「主要国」よりも「定義と運用」
- イランと取引のある国は、統計上100カ国規模に広がり得る
- 実態として取引規模が大きいのは 中国、UAE、トルコ、インド、イラクなどに集中
- 今回の議論の核心は、取引の定義と政策運用の具体像にあります
トランプ発言がどのような形で制度化されるかによって、影響の範囲と深刻度は大きく変わります。今後の注目点としては、
- 法的根拠(大統領令、関連法令など)の明示
- 「取引」の具体的な定義
- 医療・人道目的などの例外扱い
- 既存関税への上乗せの有無
といった条文レベルの詳細が示されるかどうかが重要になります。