原核生物の例

原核生物とは？高校生物でわかる具体例としくみ

生物の世界には、目に見えるものから目に見えないほど小さなものまで、実にさまざまな生き物が存在しています。その中でも**「原核生物（げんかくせいぶつ）」**は、地球上で最も古くから存在すると考えられている生物であり、生命の進化を理解するうえで欠かせない存在です。

現在地球に存在するすべての生物は、長い時間をかけた進化の結果として生まれてきました。その最初の段階に登場したのが原核生物であり、生命の歴史の出発点ともいえる存在です。原核生物を理解することは、生物全体の仕組みを理解する第一歩とも言えるでしょう。

高校生物では、原核生物と真核生物の違いを正しく理解することが重要です。単なる暗記ではなく、「なぜそのような違いが生まれたのか」「その違いがどのような意味をもつのか」「私たちの生活とどう関係しているのか」を意識することで、知識がより深く定着します。

この記事では、

• 原核生物とは何か
• 原核生物の構造と特徴
• 原核生物の代表的な例
• 原核生物と人間の生活との関わり

といったポイントを中心に、高校生物の学習に役立つよう、できるだけわかりやすく丁寧に解説していきます。

原核生物とは？

原核生物とは、核（かく）をもたない細胞からできている生物のことです。

私たち人間や動物、植物は「真核生物（しんかくせいぶつ）」と呼ばれ、細胞の中にDNAを包む「核」をもっています。一方、原核生物には核が存在せず、DNAは細胞質の中にむき出しの状態で存在しています。

この違いは見た目以上に重要です。核をもたないことで細胞の構造は単純になりますが、その分、増殖のスピードが速く、環境の変化にも柔軟に対応できます。そのため、原核生物は地球上のさまざまな環境に広く分布しています。

原核生物は、地球誕生から間もない時期に誕生したと考えられており、長い進化の歴史の中で現在の多様な生物の基礎をつくりました。

原核生物の基本的な特徴

原核生物には、次のような共通した特徴があります。

• 核をもたない
• ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官をもたない
• 体は基本的に1つの細胞だけでできている（単細胞生物）
• 大きさは非常に小さく、約1〜5μmほど
• 主に二分裂によって増える

構造は非常にシンプルですが、その分エネルギー効率がよく、さまざまな環境に適応できます。高温・低温・高塩分・強い酸性など、他の生物が生きられない環境でも生存できる種類が存在します。

この高い適応能力こそが、原核生物が何十億年ものあいだ地球上で生き続けてきた理由の一つです。

原核生物の代表的な仲間

原核生物は、大きく次の2つに分類されます。

• 細菌（バクテリア）
• 古細菌（アーキア）

高校生物では主に「細菌」を中心に学習しますが、近年では古細菌の研究が進み、生命の起源や進化の研究において重要な存在とされています。

原核生物の具体例①：大腸菌

**大腸菌（だいちょうきん）**は、最もよく知られている原核生物の一つです。

特徴

• 人や動物の腸内に生息している
• 食べ物の消化を助ける働きがある
• 一部は食中毒の原因になる

多くの大腸菌は人体にとって無害で、腸内環境を整える重要な役割を果たしています。ビタミンの合成を助けるものもあり、私たちの健康維持に貢献しています。

一方で、O157などの一部の大腸菌は強い毒素を出し、激しい腹痛や下痢、発熱などを引き起こすことがあります。このように、同じ「大腸菌」でも性質が大きく異なる点は重要な学習ポイントです。

原核生物の具体例②：乳酸菌

乳酸菌は、私たちの食生活と非常に深く関わる原核生物です。

特徴

• ヨーグルト、チーズ、味噌、漬物などに含まれる
• 糖を分解して乳酸を作り出す
• 腸内環境を整える働きがある

乳酸菌は腸内で悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やす働きをします。そのため、腸内環境の改善や免疫力の維持にも関係していると考えられています。

発酵食品は、原核生物の働きを人間が上手に利用してきた代表的な例といえるでしょう。

原核生物の具体例③：納豆菌

日本の食文化を代表する発酵食品といえば納豆です。この納豆を作っているのが納豆菌です。

特徴

• 大豆を発酵させる
• 独特のネバネバ成分を作り出す
• たんぱく質を分解して栄養価を高める

納豆菌の働きによって、大豆は消化しやすくなり、ビタミンKなどの栄養素も増加します。納豆が健康食品として注目される理由の一つです。

原核生物は、目に見えない存在でありながら、私たちの食生活を支える重要な役割を果たしています。

原核生物の具体例④：シアノバクテリア（藍藻）

シアノバクテリアは、見た目が植物に似ていますが、実際には原核生物に分類されます。

特徴

• 光合成を行う
• 酸素を作り出す
• 地球の大気中の酸素量を増やしたと考えられている

太古の地球では酸素はほとんど存在していませんでした。しかし、シアノバクテリアが光合成を行うことで酸素が放出され、大気中の酸素濃度が上昇しました。その結果、酸素を利用する生物が誕生し、現在の多様な生態系が生まれました。

原核生物の具体例⑤：古細菌（アーキア）

古細菌は、非常に厳しい環境でも生きることができる生物です。

例

• 高温の温泉
• 強い酸性の場所
• 塩分濃度が極端に高い湖

これらの環境は多くの生物にとって生存が困難ですが、古細菌は特殊な酵素や細胞構造を持つことで生き延びています。この特徴は、生命の進化を考える上で重要な手がかりとなります。

原核生物と真核生物の違い

この表の違いを理解することで、生物の分類がより整理しやすくなります。

原核生物は私たちの生活にどう関係している？

原核生物は目に見えない存在ですが、私たちの生活をさまざまな面で支えています。

• 食品の発酵（ヨーグルト、納豆、味噌、醤油など）
• 腸内環境の維持と健康管理
• 土壌中での栄養循環
• 汚れた水を分解してきれいにする働き

このように、原核生物は自然環境の維持にも大きく関わっています。一方で、病原菌として病気を引き起こす種類も存在するため、正しい知識を持つことが大切です。

まとめ

原核生物は、

• 核をもたない単細胞生物である
• 地球上で最も古い生命の形である
• 私たちの生活や自然環境と深く関わっている

という特徴をもっています。

高校生物では、原核生物と真核生物の違いを正確に理解すること、そして具体例と結びつけて学ぶことが重要です。

身近な食品や自然現象と関連づけて考えることで、生物の世界がより身近で興味深いものになるでしょう。