「相似(そうじ)」とは、形が同じで、大きさだけが違う関係のことです。見た目が似ているだけではなく、図形として「同じ形」と言えるための条件があります。
相似の図形には、主に次の2つのポイントがあります。
この2つがそろうと、図形は相似になります。たとえば、同じデザインの三角形や四角形でも、拡大コピーしたものは「形は同じでサイズだけが違う」ので相似です。逆に、縦だけ伸ばしたり、横だけ縮めたりすると比が崩れるため、見た目は似ていても相似とは言えません。
相似は数学の問題だけの話ではなく、実は日常のいろいろな場面で自然に使われています。地図、写真、紙のサイズ、模型、画面表示など、意外なほど多くの場面で相似の考え方が役立っています。ここでは、身近な例をできるだけ具体的に紹介します。
地図は、実際の街や地形を小さく表したものです。道路や建物の配置、川の流れ、駅の位置などは、実際の街と同じ形を保ちつつ、全体が小さくなっています。
つまり、地図の街と本物の街は相似の関係になっています。縮尺が正しく保たれているからこそ、地図は道案内に使えますし、複数の場所を比較するときにも正確に判断できます。
また、紙の地図だけでなく、スマホの地図アプリでも同じです。表示を拡大しても縮小しても、地図の形がゆがまないのは、一定の比率で拡大縮小している(相似を保っている)からです。
スマホで撮った写真を編集して、拡大したり縮小したりすることはよくあります。このとき「形がゆがまない」なら、相似の考え方が働いています。
画像編集で「縦横比を固定する(比率を保つ)」という設定がありますが、これは相似を保って自然な見た目にするための機能です。縦横比を固定せずに編集すると、人の顔が細長くなったり、文字がつぶれて読みにくくなったりすることがあります。これは、相似の条件である「比が一定」が崩れてしまった状態です。
さらに、写真をSNSに投稿する際の「正方形トリミング」なども、切り取り方によっては相似の考え方が関係します。全体を同じ割合で縮めるのは相似ですが、横だけ詰めて正方形にすると相似ではなくなり、見た目が変わってしまいます。
コピー用紙のA判(A4、A3など)は、基本的に縦横比が一定になるように作られています。これが相似の仕組みを日常で活用している代表例です。
学校や職場で「A4の資料をA3に拡大して配布する」ことがありますが、文字や図の配置がそのまま保たれるのは、用紙が相似の関係にあるからです。もし縦横比が違う紙へ無理に拡大縮小すると、左右に余白が出たり、上下が切れたりして、資料が見づらくなってしまいます。
B判も同様で、B5からB4、B4からB3などへ拡大しても、比率が保たれます。つまり、「用紙サイズが変わっても同じレイアウトで使える」こと自体が、相似のありがたさと言えます。
晴れた日にできる「影」は、太陽の光がほぼ同じ方向から当たるため、相似の考え方が使えます。影と物体は、同じ角度の光によって形ができるので、相似な三角形が成立します。
たとえば、
これらを比べると、相似の関係から高さを推測できます。
例:
このような方法は、実際に測量や理科の学習でも使われる基本的な考え方で、相似の代表的な活用例です。特別な道具がなくても推測できる点も、相似の特徴です。
同じ映像をスマホでもテレビでも見られるのは、画面が同じ比率(例:16:9)で作られているからです。画面の大きさが違っても、比率が同じなら形が保たれ、相似の関係になります。
画面の「インチ数」は大きさの違いを表しているだけで、比率が同じなら相似の関係です。比率が合わない場合に黒帯が出るのも、相似が成り立たないためです。
プラモデル、建築模型、鉄道模型などは、実物を一定の割合で小さくしたものです。これも相似の代表例です。
模型を見ることで、実物の大きさや構造を想像しやすくなります。建築や工学の分野でも、相似は重要な考え方です。
企業ロゴやアプリのアイコン、公共施設のピクトグラムは、さまざまなサイズで表示されます。
サイズが変わっても形が崩れないのは、拡大縮小しても比率が一定になるよう設計されているからです。これにより、どの大きさでも同じ意味を正確に伝えられます。
相似の考え方が身につくと、日常生活の中で次のようなことが理解しやすくなります。
相似は「なんとなく似ている」という意味ではありません。
これらは比が一定でないため、相似とは言えません。
相似は、地図、写真、用紙、影、画面、模型、ロゴなど、私たちの身近な場面に数多く使われています。
「形が同じで大きさだけが違う」「比が一定」という考え方を意識すると、日常の道具やしくみが、より分かりやすく見えてくるようになります。