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阪神・淡路大震災と大地の変化

地震(大震災)

阪神・淡路大震災と大地の変化

地形・地盤はどう動いたのか

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)は、多くの建物や交通網に被害を与えた巨大地震として知られています。一方で、この地震は「大地そのもの」を動かし、地面の高さや位置、地盤の状態を変化させました。地震は揺れだけの現象ではなく、地下の岩盤が急にずれて地表の形をつくり変える“地形の出来事”でもあります。

この記事では、阪神・淡路大震災で観察された代表的な「大地の変化」を、場所の例とあわせて整理します。


1.なぜ地震で大地が変わるのか

阪神・淡路大震災は、地下の活断層がずれ動くことで発生した典型的な「内陸直下型」の地震でした。地下の岩盤がずれると、その動きが地表にまで及び、

  • 地面が左右にずれる(横ずれ)
  • 地面が上下にずれる(隆起・沈降)
  • 地盤がゆるみ、砂と水が動いて地面が沈下する(液状化)

といった形で、土地の形や性質が変化します。


2.淡路島:地表に現れた断層(野島断層)

阪神・淡路大震災の「大地の変化」を最も分かりやすく示したのが、淡路島北部に現れた野島断層です。

地面が“線”でずれ、段差や食い違いができた

地震によって断層が動き、そのずれが地表に達すると、地面に一直線の割れ目(断層の線)が現れます。野島断層周辺では、

  • 道路・畑・用水路がずれてつながらなくなる
  • 塀や石垣が食い違う
  • 地面に段差ができる

といった「ずれの痕跡」が残りました。これは、地震が“地面を揺らした”というより、**大地を“ずらした”**ことを示すものです。

横ずれ+上下のずれ

この地震では、左右方向のずれ(横ずれ)が大きく、場所によって上下のずれも伴いました。地表に現れた断層は、地形が変わる瞬間をそのまま保存したような存在で、現地では断層を観察できる施設も整備されています。


3.神戸:七つの言葉でまとめる「土地の変化」

神戸

神戸側で目立った大地の変化は、次の7つに整理できます。

  1. 断層運動による地殻変動(地面の位置が動く)
  2. 地盤の沈下(沈降)
  3. 液状化による沈下・噴砂
  4. 地割れ(地面の亀裂)
  5. 岸壁・護岸の変形(港の地形が変わる)
  6. 盛土・埋立地の変形(人工地盤の弱さが表面化)
  7. 斜面の崩れ・小規模な地すべり(場所によって発生)

このうち、阪神・淡路大震災の特徴として特に重要なのが、埋立地(人工島・港湾部)での液状化と沈下です。


4.港と人工島:液状化で「地面が沈む」「水や砂が噴き出す」

神戸の港湾部には、埋立によってつくられた人工島や、埋立地の岸壁が広く分布しています。阪神・淡路大震災では、こうした埋立地で液状化が起こり、地面の状態が大きく変化しました。

代表的な場所

  • ポートアイランド
  • 六甲アイランド
  • 神戸港の埠頭(ふとう)・岸壁周辺

液状化が起きると何が変わるのか

液状化では、砂地盤が強い揺れで一時的にゆるみ、砂粒の間にある水の圧力が上がって、地盤が支える力を失います。その結果、

  • 地面が沈下して、地表が低くなる
  • 地面が不均一に沈むことで、地表が凸凹になる
  • 砂と水が地上に噴き出して「噴砂」ができる
  • 道路や歩道が波打つように変形する

といった変化が起こります。

「港の形」が変わる:岸壁のはらみ出し・沈下

港では、岸壁そのものが変形して、海側へ押し出されたり、沈んだりすることがあります。これは、岸壁の背後地盤がゆるみ、構造物と地面が同時に動くためです。

その結果、

  • 岸壁が使えなくなる
  • 水際の高さや位置が変わる
  • 港の機能(荷役・係留)が大きく低下する

といった「地形変化がそのまま社会機能の変化」につながる現象が起こりました。


5.道路・鉄道・橋:地面の変形が“線状”に被害を出す

地震時に地面がずれたり沈んだりすると、道路や鉄道のような「線でつながる施設」は影響を強く受けます。阪神・淡路大震災では、

  • 路面に段差ができる
  • 盛土の部分が沈み、道が波打つ
  • 橋の取り付け部(橋台周辺)が沈下して、継ぎ目に段差ができる

など、地面の変化がそのまま通行不能の原因になりました。

また、地震で地面が水平に動くと、橋の距離関係が変わることがあります。たとえば明石海峡大橋は建設中に地盤の水平変位が起き、構造上の対応が必要になったというエピソードが知られています。これは、地震が「構造物を壊す」だけでなく、“位置関係”そのものを動かすことの象徴的な例です。


6.山側と海側で違う:神戸の地形が影響を分けた

神戸周辺は、南に海(大阪湾)、北に六甲山地が迫り、短い距離で地形が大きく変わります。この地形は、地震のときの大地の変化にも影響します。

山に近い側

  • 斜面が急な場所では、崩壊・落石・小規模地すべりが起こりやすい
  • 谷沿いでは土砂が動き、道路や住宅地を変形させることがある

海に近い側(沖積低地・埋立地)

  • 砂や水分の多い地盤で液状化が起こりやすい
  • 地盤沈下が起こりやすく、地表が低くなる
  • 港湾施設・護岸が変形しやすい

同じ都市圏でも、地形と地盤の違いが「大地の変化の種類」を分けるという点が、阪神・淡路大震災から学べる重要なポイントです。


7.地震後も続く「大地の変化」:復旧と地盤対策

地震による大地の変化は、地震が終わった瞬間で止まるとは限りません。液状化でゆるんだ地盤や、崩れやすくなった斜面は、その後の雨や余震、地下水の変化で、追加の沈下や崩れを起こすことがあります。

阪神・淡路大震災の復旧・復興では、

  • 埋立地での地盤改良(締固め、砂杭、地中の排水など)
  • 岸壁の耐震化
  • 橋や高架の耐震補強
  • 斜面や擁壁の点検・補強

といった「地面が変わる前提」に立った対策が進みました。大地の変化を理解することは、建物だけでなく、都市全体の安全性を高めることにつながります。


まとめ:阪神・淡路大震災は“地形が動いた地震”だった

阪神・淡路大震災では、

  • 淡路島の野島断層で地表に断層が現れ、地面がずれた
  • 神戸港や人工島で液状化が起き、地盤沈下や地表の凸凹が生じた
  • 岸壁・護岸が変形し、港の水際の形や高さに影響が出た
  • 道路や橋など、線状施設は地面の段差・沈下の影響を強く受けた

といった形で、大地そのものが変化しました。

地震の被害を「建物の倒壊」だけで捉えると、地盤や地形の変化が見落とされがちです。しかし、都市を支える基盤は地面そのものであり、地震はその基盤を動かします。阪神・淡路大震災は、地面の性質(山・低地・埋立地)と、断層運動・液状化が重なったときに何が起きるのかを、非常に具体的に示した出来事でした。

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