紅白歌合戦・外国人
紅白歌合戦と外国人アーティスト・歌手――徹底一覧
大みそかの風物詩・NHK紅白歌合戦。長い歴史のなかで、多くの日本人歌手が名場面を残してきましたが、実は外国人アーティストも何度も紅白のステージに登場しています。
しかし、誰がいつ出場したのかをまとめた資料は少なく、しかも「KISS や シンディ・ローパー、クイーン+アダム・ランバートまできちんと入った一覧」を探そうとすると、なかなか見つかりません。
そこで本記事では、公開情報をもとに次の3つを整理し、できる限り網羅的な「紅白に登場した外国人・海外アーティスト一覧」としてまとめます。
- ① 正式な「出場歌手」としてカウントされている外国人歌手・グループ
- ② K-POP など、多国籍グループとして紅白に出場した海外アーティスト
- ③ 特別企画・中継・コラボ枠で登場した海外アーティスト(KISS、クイーンなど)
※NHKが「外国人出演者の公式完全リスト」を公表しているわけではないため、本記事は「主要メディアや公式発表に名前が載っているアーティストを、人・グループ単位で拾い集めた一覧」です。
1.正式出場の「外国人歌手」一覧(1970〜2010年代前半)
まずは、紅白の出場歌手として正式にカウントされている外国人歌手・グループを、年代順に整理します。ここでは「初出場時の代表曲」を中心に載せています。
■ 1970年代
- ロザンナ(イタリア)… デュオ「ヒデとロザンナ」のボーカル。1970年「愛は傷つきやすく」
- 欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)(台湾)… 1972年「恋の追跡(ラブ・チェイス)」
- アグネス・チャン(香港出身)… 1973年「ひなげしの花」
- ジュディ・オング(台湾生まれ)… 1979年「魅せられて」
■ 1980年代
- テレサ・テン(鄧麗君)(台湾)… 1985年「愛人」
- チョー・ヨンピル(趙容弼)(韓国)… 1987年「窓の外の女」
- ケー・ウンスク(桂銀淑)(韓国)… 1988年「すずめの涙」
- キム・ヨンジャ(金蓮子)(韓国)… 1989年「朝の国から」
■ 1990年代
1990年前後は、紅白史上もっとも外国人歌手の出演が多かった時期です。
- オユンナ(モンゴル)… 1990年「天の子守歌」
- マルシア(ブラジル)… 1990年「ふりむけばヨコハマ」
- シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)(アメリカ)… 1990年「I Drove All Night」
- ガリー・バレンシアーノ(Gary Valenciano)(フィリピン)… 1990年「I Know What You Want」など
- アリスン・ウィリアムズ(Alison Williams)(アメリカ)… 1990年「Forever Yours」
- アレキサンドル・グラツキー(Aleksandr Gradsky)(旧ソ連)… 1990年、クラシック寄りの楽曲で出演
- ポール・サイモン(Paul Simon)(アメリカ)… 1990年「明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)」
- ライマ(Laima)(ラトビア)… 1991年「VERNISAGE~ELIZABET~」
- サラ・ブライトマン(Sarah Brightman)(イギリス)… 1991年「オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)」
- スモーキー・マウンテン(Smokey Mountain)(フィリピン)… 1991年「TO YONA!(COME ON!)」
- ザ・ベンチャーズ(The Ventures)(アメリカ)… 1991年「十番街の殺人~ダイヤモンド・ヘッド~パイプライン」
- アンディ・ウィリアムス(Andy Williams)(アメリカ)… 1991年「ムーン・リバー」
- マーク・パンサー(Mark Panther)(フランス出身)… 1996年、globe のメンバーとして「DEPARTURES」など
- ビビアン・スー(Vivian Hsu)(台湾)… 1998年、ブラックビスケッツとして「Timing」など
■ 2000年代
- BoA(韓国)… 2002年「VALENTI」。その後も複数回出場し、K-POPブームの先駆け的存在に。
- アルフレド・カセーロ(Alfredo Casero)(アルゼンチン)… 2002年「島唄」(THE BOOM のカバー)
- 女子十二楽坊(Twelve Girls Band)(中国)… 2003年「自由」
- Ryu(リュウ)(韓国)… 2004年「最初から今まで」(ドラマ『冬のソナタ』主題歌)
- イ・ジョンヒョン(Lee Jung-hyun)(韓国)… 2004年「Heaven 2004」
- Shen(シェン)(ハワイ出身)… 2005年、Def Tech として「My Way」
- リア・ディゾン(Leah Dizon)(アメリカ)… 2007年「恋しよう♪」などのメドレー
- 東方神起(TVXQ!)(韓国)… 2008年「Purple Line~どうして君を好きになってしまったんだろう?」
- ジェロ(Jero)(アメリカ出身の日系)… 2008年「海雪」
- スーザン・ボイル(Susan Boyle)(イギリス)… 2009年「夢やぶれて(I Dreamed a Dream)」
■ 2010年代前半(〜2013年)
- KARA(韓国)… 2011年「KARA 2011 スペシャルメドレー」
- 少女時代(Girls’ Generation)(韓国)… 2011年「GENIE」
- クリス・ハート(Chris Hart)(アメリカ出身)… 2013年、松田聖子とのデュエットで出場
ここまでが、「正式な出場歌手」として数えられている外国人歌手の主な一覧です。
2.K-POP・多国籍グループとしての外国人出場
2010年代後半以降、紅白は一気にグローバル化し、とくに K-POP や多国籍アイドルグループが毎年のように登場するようになりました。
- TWICE(韓国発/韓国人5・日本人3・台湾人1)… 2017年以降、複数回出場。「TT -Japanese ver.-」ほか。
- IVE(韓国)… 2022年に初出場。
- LE SSERAFIM(韓国/多国籍)… 2022年・2023年などに出場。
- NiziU(日韓合同プロジェクトのガールズグループ)… デビュー直後から紅白常連に。
- NewJeans(韓国)… 2023年、第74回紅白で特別企画として出演。
- MISAMO(TWICE日本人メンバーのユニット)… 2023年紅白で「Do not touch」
- ILLIT(韓国/多国籍)… 2024年以降の紅白で出場。
- aespa、&TEAM など… 2020年代半ば以降、紅白出場が発表されているグローバルグループ。
これらは「韓国発のグローバルグループ」として、公式発表や音楽メディアでも「海外アーティスト」として扱われることが多くなっています。
3.特別企画・中継・コラボで登場した海外アーティスト
つづいて、「正式な出場歌手リストには入っていないものの、紅白のステージで歌った・演奏した海外アーティストたち」をまとめます。
■ 欧米のポップス/クラシック系アーティスト
- エンヤ(Enya)(アイルランド)… 2008年、第59回紅白。アイルランドの城から衛星中継で出演。
- サラ・ブライトマン(Sarah Brightman)(イギリス)… 1991年に加え、2018年には YOSHIKI と「Miracle」を披露。
- マライア・キャリー(Mariah Carey)(アメリカ)… 2001年、ニューヨークからVTR出演。
- will.i.am(アメリカ)… 特別企画枠のコラボレーションで出演。
- Richard Carpenter(アメリカ)… カーペンターズ関連の企画で登場。
- サラ・オレイン(Sarah Àlainn)(オーストラリア出身)… NHKの音楽番組と連動した形で出演。
■ ロックバンド:KISS と クイーン+アダム・ランバート
ご指摘のとおり、ロック界のレジェンドも紅白に登場しています。
- KISS(キッス)(アメリカ)… 2019年・第70回紅白。「YOSHIKI feat. KISS<YOSHIKISS>」として出演。「Rock And Roll All Nite」などを披露。
- クイーン+アダム・ランバート(Queen + Adam Lambert)(イギリス+アメリカ)… 2023年・第74回紅白。「Don’t Stop Me Now」ほかを披露。
これらは「正式な出場歌手一覧」には含まれていないことが多いものの、実質的には紅白でパフォーマンスした外国人アーティストとして非常に重要な存在です。
4.「完全なリスト」が難しい理由
ここまでかなり細かく拾ってきましたが、正直なところ「これで100%の完全版です」とは言い切れません。その理由は大きく3つあります。
- NHKが「歴代外国人出演者だけの公式リスト」を出していない
- ゲストコーラスや短いVTR出演が、報道によって扱いがまちまち
- 日本のグループでもメンバーが多国籍な場合、「外国人歌手」と呼ぶかどうかが揺れる
たとえば、
- ジュディ・オングやクリス・ハートのように、のちに日本国籍を取得した歌手
- globe や Black Biscuits のように、日本のグループの中に外国人メンバーがいるケース
- TWICE・NiziU・LE SSERAFIM のように「多国籍だけれど日本市場を主戦場にしている」グループ
などは、「日本の芸能界の一員」として見るのか、「海外アーティスト」として見るのかで解釈が変わってきます。
本記事では、
- 年末特集や音楽メディアが「外国人歌手」として明確に名前を挙げている人・グループ
- NHK公式の出場歌手リストで、海外出身が強調されているアーティスト
を中心に拾い上げ、「少なくともこの人たちは紅白に出たと言える」範囲を整理しました。
5.まとめ:紅白と外国人アーティストの関係
最後に、ざっくりと流れを振り返ると、紅白と外国人アーティストの関係は次のように変化してきました。
- 1970〜80年代: 欧陽菲菲、アグネス・チャン、テレサ・テンなど、アジア出身歌手が中心。
- 1990年代: シンディ・ローパー、ポール・サイモン、サラ・ブライトマン、アンディ・ウィリアムスなど欧米の大物が一気に登場。
- 2000年代: BoA、東方神起、Ryu、スーザン・ボイルなど、K-POP・ワールドミュージック・欧米ポップスが入り混じる時代。
- 2010年代〜: KARA・少女時代を経て、TWICE、IVE、LE SSERAFIM、NewJeans などK-POP勢が常連化。ロックではKISSやクイーン+アダム・ランバートも紅白に登場。
紅白歌合戦は「日本の歌番組」であり続けながら、時代とともに少しずつ世界との距離を縮めてきました。特にここ十数年は、
- 世界的ロックバンド(KISS、Queen)
- グローバルなK-POP/多国籍グループ
が大晦日のテレビをにぎわせるようになり、「紅白=邦楽だけ」というイメージはかなり変わってきています。
今後も、紅白歌合戦は「日本の音楽シーンの1年を振り返る番組」であると同時に、「日本と世界の音楽が交差するステージ」として進化していくのかもしれません。