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メジャーリーグのドーム球場

メジャーリーグのドーム球場

はじめに

メジャーリーグ(MLB)といえば、青空の下でプレーする開放的な球場を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、北米は地域ごとの気候差が非常に大きく、夏の酷暑や冬の寒波、頻繁な降雨などが試合の開催に影響を与えることもあります。そうした中で誕生したのが、「屋根付き球場」や「開閉式ドーム球場」です。これらのスタジアムは、選手と観客を守りつつ、年間を通じて快適に試合を楽しめるように設計されています。

本記事では、2025年時点で現役のメジャーリーグ・ドーム球場を一覧で紹介し、それぞれの特徴、建設の背景、そして“なぜその都市でドーム球場が採用されたのか”という理由まで掘り下げて解説します。


MLB・ドーム球場一覧(現役・2025年現在)

合計:8球場(固定屋根:1、開閉式屋根:7)

球場名 所属チーム 所在地 開場年 屋根タイプ 主な特徴
トロピカーナ・フィールド(Tropicana Field) タンパベイ・レイズ フロリダ州セントピーターズバーグ 1990 固定式 MLBで唯一の完全固定式ドーム。悪天候の影響ゼロ。照明環境や天井構造が独特で、打球がキャットウォークに当たる珍しい設計。内部はやや暗めだが空調完備で快適。
ロジャース・センター(Rogers Centre) トロント・ブルージェイズ オンタリオ州トロント(カナダ) 1989 開閉式 世界初の本格的可動式屋根。CNタワーの隣に位置し、ホテルの客室から試合観戦可能。近年の大規模リノベーションにより、ファン体験が劇的に改善。
T-モバイル・パーク(T-Mobile Park) シアトル・マリナーズ ワシントン州シアトル 1999 開閉式 “雨よけの巨大傘”のように機能する屋根。完全な密閉ではなく外気を取り込み、自然光の下で試合を行える。雨の多いシアトルに最適な設計。
チェース・フィールド(Chase Field) アリゾナ・ダイヤモンドバックス アリゾナ州フェニックス 1998 開閉式 砂漠地帯の高温対策として建設。冷房完備で屋内温度を一定に保つ。外野にプール席があり、ファンに人気の観戦スポット。
ミニッツメイド・パーク(Minute Maid Park) ヒューストン・アストロズ テキサス州ヒューストン 2000 開閉式 旧ユニオン駅の建物を活用したレトロモダンなデザイン。開閉式屋根と巨大ガラス壁により自然光を確保。かつての“タルズ・ヒル”はファンに惜しまれつつ撤去。
アメリカン・ファミリー・フィールド(American Family Field) ミルウォーキー・ブルワーズ ウィスコンシン州ミルウォーキー 2001 開閉式 扇状(ファン型)屋根を採用。寒冷地でも快適に観戦可能。屋根の開閉は約10分で完了し、冬でも室温を保つ。名物“バーニーの滑り台”は地元ファンに人気。
ローンデポ・パーク(loanDepot Park) マイアミ・マーリンズ フロリダ州マイアミ 2012 開閉式 南国気候に合わせた近未来的デザイン。全面ガラス壁で自然光を取り込み、外観はアート作品のよう。WBC決勝戦など国際大会の開催実績多数。
グローブライフ・フィールド(Globe Life Field) テキサス・レンジャーズ テキサス州アーリントン 2020 開閉式 MLBで最も新しい屋根付き球場。酷暑対策の冷房完備スタジアムで、開閉式屋根の可動範囲が広く、快適性・視界の良さともに高水準。

これらの球場は、気候や地域性に応じて設計思想が異なり、それぞれの都市の文化や経済状況も反映されています。


用語の整理:ドームと“屋根付き”の違い

メジャーリーグでは「ドーム」と「開閉式屋根球場」は必ずしも同義ではありません。以下のように分類できます。

  • 固定式ドーム:完全に屋内型。外気や日光の影響を受けない(例:トロピカーナ・フィールド)。
  • 開閉式屋根(リトラクタブル・ルーフ):天候・気温に合わせて開閉可能(例:ロジャース・センター、アメファミ・フィールドなど)。
  • セミドーム型:屋根を閉じても側面が開放的で、屋内すぎない構造(例:T-モバイル・パーク)。

これにより、MLBの「ドーム球場」という表現には、技術的にも多様な意味合いが含まれています。


かつて存在した名ドーム球場(歴史的役割)

かつてMLBでは、現在よりも多くのドーム球場が使用されていました。

  • アストロドーム(Astrodome/ヒューストン・アストロズ):1965年開場、世界初のドーム球場。人工芝の導入や屋内照明など、後の球場建設に大きな影響を与えた“元祖ドーム”。
  • キングドーム(Kingdome/シアトル・マリナーズ):1976年開場。T-モバイル・パーク完成後に解体。広い屋根構造は当時の技術の象徴だった。
  • メトロドーム(Hubert H. Humphrey Metrodome/ミネソタ・ツインズ):1982年開場。空気圧で屋根を支える“エアドーム”方式を採用。コスト削減と寒冷地対応を両立した実験的設計。

これらの球場は現存しないものの、今日の屋根技術や設計思想に大きく貢献しました。


小ネタ&観戦メモ

  • 気候との戦い:フロリダやテキサスでは、夏場の試合中気温が40℃を超えることもあり、屋根付き球場は選手の健康を守る重要な存在です。
  • 芝の種類の工夫:採光条件や湿度に合わせて、人工芝・天然芝・ハイブリッド芝が使い分けられています。アメファミ・フィールドではハイブリッド芝を採用し、屋根を閉じても自然な打球感を実現。
  • 開閉システムの進化:かつては手動・半自動だった屋根開閉も、現在ではコンピュータ制御で風速や湿度を感知し自動判断する仕組みに進化。
  • 観光資源化:ロジャース・センターやローンデポ・パークなどは、野球以外のイベント(コンサートやNFL国際試合など)にも活用され、地域経済に大きく貢献。

まとめ

MLBにおけるドーム球場は、単なる「屋根付き」施設ではなく、地域の気候・文化・都市設計の結晶です。悪天候による試合中止を防ぐだけでなく、快適な観戦体験と都市のシンボル的存在としての役割も担っています。さらに近年は、環境に配慮した省エネ設計やリサイクル素材の使用など、サステナブルな建築としての注目も高まっています。

2025年現在、MLBでは8つの屋根付き球場が稼働中ですが、今後も技術の進化とともに、新たなスタジアムの建設や改修が進むと予想されます。屋根の開閉による戦略的な演出や、地域文化を取り入れた設計がどのように発展するのか、今後の展開にも注目です。


メジャーリーグのドーム球場に関するトリビア

メジャーリーグ(MLB)の球場は、日本の球場と比べて、フィールドの形状や特徴が非常に個性的です。

世界初の開閉式ドーム球場(ロジャース・センター)

トロント・ブルージェイズの本拠地であるロジャーズ・センター(旧スカイ・ドーム)は、世界で初めて建設された開閉式屋根を持つドーム球場です(1989年開場)。

天候が悪いときには屋根を閉じ、晴れた日には開放できるのが特徴です。

天井に打球が当たった場合のルール

ドーム球場では、打球が天井に当たった場合のルールがユニークです。フェア地域・ファウル地域に関わらず、打球が天井に触れた場合、ボールインプレイ(プレイ続行)となります。

野手が地面に落ちる前に捕球すればアウトになりますが、地面に落ちた場合は、その場所によってフェアかファウルかが判定されます。

ドーム球場は少数派に

1970年代に一時期ドーム球場の建設ブームがありましたが、近年MLBでは、自然光の下でプレーする「ボールパーク」の概念が重視されるようになり、天然芝の球場が主流となっています。そのため、現在人工芝や屋根を持つドーム球場は少数派になっています。

特徴的な設備を持つドーム球場

シアトル・マリナーズの本拠地T-モバイル・パーク(旧セーフコ・フィールド)は、開閉式屋根を持つ天然芝の球場です。トリビアとしては、外野後方に蒸気機関車の模型があり、試合開始時や本塁打が出たときに汽笛を鳴らしながら走るのが名物です。

メジャーリーグの球場は、その土地の地理的制約や歴史的経緯から、一つとして同じ形がない「クセの強い」構造をしているのが魅力の一つです。

「世界八番目の不思議」と人工芝の発祥

アストロドーム(ヒューストン・アストロズ)

1965年に開場した世界初の完全密閉型ドーム球場で、「世界八番目の不思議」と呼ばれました。

当初は天然芝でしたが、屋根の素材の関係で日光が遮られ、芝が枯れてしまいました。この問題を解決するために開発されたのが、世界初の人工芝「アストロターフ (Astroturf)」です。

つまり、メジャーリーグのドーム球場が、世界中に広まった人工芝を生み出すきっかけとなったのです。

球場に設置された「プール」

チェイス・フィールド(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)

アリゾナ州フェニックスという灼熱の気候にあるこの開閉式ドームには、右中間外野スタンドのすぐそばにプールとジャグジーが設置されています。

このプールはスイートルームの一部として団体客に貸し切られており、利用者はプールに入りながらメジャーリーグを観戦できます。

本塁打がプールに飛び込むこともあり、これは「プール・ショット (Pool Shot)」と呼ばれ、ファンにとって大きな楽しみの一つです。

開閉式ドームでも人工芝を選択する理由

MLBでは天然芝が好まれますが、近年新設・改修された開閉式ドームの一部で、あえて人工芝を採用する例があります。(例:テキサス・レンジャーズのグローブ・ライフ・フィールド、元々は天然芝だったタンパベイ・レイズのトロピカーナ・フィールド)これは、テキサスやフロリダのように厳しい暑さで屋根を閉じる期間が長い地域では、屋根を閉じた状態では天然芝の育成に必要な日照を確保できず、芝の管理が非常に困難になるためです。快適な観戦環境(冷房)と芝の維持を両立させるための選択と言えます。

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