インターネットを利用する多くの方々にとって、YouTubeは欠かせない存在となっています。ちょっとした隙間時間に動画を楽しむ方もいれば、趣味や学習のために活用する方も多いでしょう。さらに近年では、YouTuberという職業が確立し、個人だけでなく企業も、マーケティングや情報発信の場として積極的に利用しています。
そんな中でよく耳にする疑問があります。それは「YouTubeはSNSなのか?」という問いです。YouTubeは果たしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に含まれるのでしょうか。それとも、別の種類のサービスとして捉えるべきなのでしょうか。
本記事では、この興味深いテーマを掘り下げながら、SNSの定義、YouTubeの特徴、他のSNSとの比較を通して、改めてYouTubeの立ち位置を考えてみたいと思います。
まずは「SNS」とは何かという基本的な定義を振り返ってみましょう。SNS(Social Networking Service)は、一般的に次のように説明されています。
代表的なSNSとしては、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、LINEなどが挙げられます。これらのサービスに共通しているのは、「人と人とのつながり」を中心に据えた仕組みが存在する点です。
では、こうした定義に基づいたとき、YouTubeはSNSと呼べるのでしょうか。
続いて、YouTubeの機能や特徴を整理してみましょう。多くの方がご存知の通り、YouTubeは「動画共有サイト」というイメージが強いですが、実際にはそれ以上の多様な機能を備えています。
YouTubeの基本機能は、動画を投稿し、それを視聴することにあります。個人でも企業でも、自分の動画を世界中に公開することができます。2005年にYouTubeが誕生した当初は、まさに「動画をアップする場所」という性格が色濃く出ていました。
YouTubeには「チャンネル登録」という仕組みがあります。気に入ったクリエイターや企業のチャンネルを登録すると、新しい動画が公開された際に通知を受け取ることができます。この仕組みは、InstagramのフォローやXのフォロワー機能に似ています。
YouTubeの動画にはコメント欄が設けられており、視聴者同士が意見を交換したり、投稿者に感想を伝えたりすることができます。このやりとりこそ、まさにソーシャルな要素といえるでしょう。
動画に対して「高評価」や「低評価」をつけることができる機能もあります。これはFacebookの「いいね!」のようなリアクション機能に近いものです。
一定以上の登録者を持つチャンネルでは、「コミュニティ投稿」という機能が利用できます。これは、テキストや画像、アンケートなどを投稿できるもので、XやFacebookの投稿に近い役割を果たしています。
YouTube Liveを利用すれば、リアルタイムで動画を配信することも可能です。視聴者はチャット機能を使ってコメントを送ったり、投げ銭(スーパーチャット)を送って配信者を応援したりすることができます。ライブ配信の双方向性は、InstagramライブやTwitchにも共通する特徴です。
こうして見ると、YouTubeには確かにソーシャル機能が多く備わっていることが分かります。視聴者同士のコメントのやり取りや、ライブ配信でのリアルタイムコミュニケーションなど、まさに「ソーシャル・ネットワーキング」の一端が垣間見えます。
また、YouTubeの大きな特徴として「おすすめ機能」があります。視聴履歴や高評価・低評価のデータをもとに、個々のユーザーに合わせた動画を表示する仕組みは、TikTokの「おすすめ」機能とも共通する部分があります。
しかし、一方でSNSの核心ともいえる「人と人とのつながり」を中心にしたネットワーキングという面では、YouTubeはやや異なる側面を持っています。YouTubeの基本的な構造は、動画投稿者から視聴者へと情報が一方向に流れる形が多いからです。つまり、FacebookやInstagramのように、ユーザー同士が「お互いの日常をシェアする」場としては機能しにくいという特性があります。
ここで、YouTubeと他の主要なSNSを比べてみましょう。
FacebookやInstagramは、友達やフォロワー同士がお互いの投稿を見て「いいね!」やコメントを付け合います。まさに「人と人とのつながり」がプラットフォームの軸となっています。
しかしYouTubeでは、動画を視聴する多くのユーザーが「投稿はしない側」に回っています。つまり、ほとんどの人は「見る専」であり、FacebookやInstagramのようにお互いの近況を共有するという文化は比較的弱いといえるでしょう。
Xは、短文投稿によるリアルタイムの情報発信やコミュニケーションが中心です。著名人と一般ユーザーがフラットに交流できる点も大きな魅力です。
YouTubeにもコミュニティ投稿はありますが、短文の即時性や気軽な交流という点では、Xほど活発とはいえません。また、YouTubeの情報発信は動画を中心としており、文字だけで完結するXとは性格が異なります。
TikTokは、YouTubeと同様に動画を投稿し、視聴するプラットフォームです。しかし、TikTokでは短尺動画が中心で、視聴者からのコメントやリアクションが非常に活発です。また、スワイプで次々に動画を切り替える仕組みが、ユーザー同士の相互作用を強化しています。
とはいえ、TikTokも「フォローする側」と「される側」という構造は強く、一方向の情報発信という点ではYouTubeに近いともいえます。
ここまで整理してきた情報を踏まえ、改めて「YouTubeはSNSか」という問いを考えてみます。
結論としては、
と言えるのではないでしょうか。
確かにYouTubeにはソーシャルな側面があります。コメント欄やコミュニティ投稿、ライブ配信など、利用者同士がつながりを持つための機能が充実しています。しかしながら、「人と人の関係性を主軸とするSNS」と比べると、やはり情報発信が一方向になりがちで、利用者同士のネットワーク形成という面では少々弱い部分があります。
YouTubeはあくまでも「動画を視聴する場」が中心であり、SNSとしての機能は補助的な位置づけにあるといえるでしょう。FacebookやXが「人とのつながりそのもの」を目的としているのに対し、YouTubeは「コンテンツ視聴」が主目的です。
とはいえ、YouTubeが今後さらにSNS化していく可能性は十分に考えられます。
特に「YouTube Shorts」の登場は、TikTokに似た短尺動画文化をYouTubeに持ち込みました。ショート動画にはコメントが多く寄せられ、投稿者とのコミュニケーションも活発です。このような変化を見ていると、YouTubeが「SNSそのもの」と呼ばれる日も、そう遠くないかもしれません。
ビジネスの観点から見ると、YouTubeはSNS的機能を十分に活用できるプラットフォームといえます。企業やブランドがYouTubeを利用することで、次のような効果が期待できます。
また、コメント欄やコミュニティ投稿は、ユーザーの声を直接集める場としても非常に有効です。今では多くの企業が公式SNSアカウントの一つとしてYouTubeチャンネルを運用し、ファンとの関係を深めています。
最後に、改めてこの問いを投げかけたいと思います。
YouTubeはSNSでしょうか?
その答えは、「Yesとも言えるし、Noとも言える」というのが正直なところです。確かにYouTubeにはSNS的機能が多く備わっていますが、SNSを定義する「人と人とのつながりを中心にしたネットワーク形成」という側面では、やや異なる面を持っています。
YouTubeはあくまで「動画プラットフォーム」でありつつ、ソーシャル機能を取り入れて進化してきたサービスです。このあいまいさこそが、インターネット文化の多様性を象徴しているのではないでしょうか。
最終的には、YouTubeがSNSであるかどうかを決めるのは、利用する一人ひとりの使い方次第ともいえるでしょう。あなたにとってのYouTubeは、SNSですか? それとも動画サイトでしょうか? ぜひ一度、考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ