中東情勢が緊迫すると必ずと言っていいほど取り沙汰されるのが「ホルムズ海峡の封鎖」です。2025年現在、アメリカがイランの核施設を空爆したことで再び緊張が高まり、ホルムズ海峡の封鎖が現実味を帯びてきています。そのような中、ホルムズ海峡が封鎖されたことは過去にあるのか?と思われる人も多いのではないでしょうか?
なぜホルムズ海峡の封鎖がそれほどまでに重大な意味を持つのか——それはこの海峡が中東と世界のエネルギー市場をつなぐ「命綱」ともいえる地点であるからです。
実際のところ、ホルムズ海峡が「完全に封鎖された」ことはあるのか? 本当にそんな事態が起きたことがあるのか、それとも脅威に過ぎないのか。過去の事例を振り返りながら、その現実と可能性を探ってみましょう。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ長さ約50km、幅が最も狭いところでわずか33kmしかない戦略的海峡です。この狭い海の道を通じて、世界の原油輸送の約20%、LNG(液化天然ガス)の約30%が輸送されています。
この海峡を通過する船舶の多くは中東産の石油や天然ガスを積んでおり、その行き先は日本や韓国、中国、インドなどのアジア諸国が中心です。したがって、仮にこの海峡が一時的にでも封鎖された場合、エネルギー供給網が寸断され、原油価格の急騰、ひいては世界的な経済混乱につながる恐れがあります。
また、海峡の周囲にはイラン、オマーン、アラブ首長国連邦(UAE)などが領土を持ち、軍事施設や港湾が集中しています。イランは特にこの地域において強い軍事的プレゼンスを有しており、小型高速艇、ミサイル基地、潜水艦などを配備し、海峡を監視・制圧する能力を誇示してきました。
このように、ホルムズ海峡は単なる「輸送ルート」を超えて、国際的な戦略バランスを左右する場所でもあるのです。
ホルムズ海峡が過去に封鎖されたことは実際にあったのかを見ていきます。
イランとイラクが8年間にわたって戦争を行ったこの期間、ペルシャ湾では互いの原油タンカーを攻撃し合う**「タンカー戦争(Tanker War)」**が勃発しました。
欧米による対イラン制裁が強化される中、イラン政府関係者が「制裁が続けば、ホルムズ海峡を封鎖する」と明言しました。
アメリカがイラン核合意から離脱し、再制裁を課す中で、ホルムズ海峡周辺では複数の商船やタンカーが攻撃を受ける事件が発生。
このように過去にはホルムズ海峡封鎖されそうになった危機は何度かありましたが、実際にホルムズ海峡が完全に封鎖されるに至ったことは過去にはありません。
ホルムズ海峡経由で輸入する原油は、日本全体の約9割に相当します。仮にこの海峡が一時的でも封鎖された場合、以下の影響が想定されます。
さらに、他国との資源争奪競争や、外交的圧力も高まる可能性があります。政府としてはLNGの調達先多様化、原発再稼働、再生可能エネルギー促進などの選択肢を迫られることになります。
年 | 事件 | 封鎖の有無 | 世界的影響 |
---|---|---|---|
1980〜1988 | イラン・イラク戦争(タンカー戦争) | ❌ 実質的妨害あり | ✔ 原油価格高騰・軍事衝突 |
2011〜2012 | イランによる封鎖宣言 | ❌ 発言のみ | ✔ 市場混乱・価格高騰 |
2019 | タンカー攻撃・ドローン撃墜 | ❌ 局地的攻撃 | ✔ 緊張激化・護衛強化 |
ホルムズ海峡は、まさに「中東の喉元」と言える存在です。封鎖されなくても、封鎖の脅威だけで世界経済が揺らぐほどの影響力を持っています。
今後の中東情勢の展開次第では、ホルムズ海峡を巡る攻防が再び激化する可能性もあり、日本を含む国際社会は慎重な対応を求められることになるでしょう。