2025年5月、ロック界の“ボス”ことブルース・スプリングスティーンが、イギリス・マンチェスターで自身の新ツアー「Land of Hope and Dreams Tour(ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ・ツアー)」をスタートさせました。
この公演は、演奏そのもの以上に、彼が語った政治的スピーチの内容が世界中で話題となりました。特に、トランプ大統領を名指しで批判する発言は大きな波紋を呼び、後にこのライブの模様はEP盤『ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ』としてリリースされ、**「大統領を批判していたことでも話題のライブ」**として歴史に残る作品となりました。
以下がイギリス・マンチェスターで行われたLand of Hope and Dreams Tourでのブルース・スプリングスティーンのトランプ批判スピーチの全文の日本語訳となります。
こんばんは!
マンチェスターに、そして再びイギリスに戻ってこられて本当にうれしいです。
ようこそ、“Land of Hope & Dreams Tour”へ!今夜、強靭なEストリート・バンドがここにいるのは、危機の時代にあって、芸術の力、音楽の力、そしてロックンロールの力を呼び覚ますためです。
私の祖国、私が愛してきたアメリカ——250年ものあいだ希望と自由の灯台であった国は、今や腐敗し、無能で、反逆的な政権の手に握られています。
今夜、私たちは民主主義とアメリカの理想に信じるすべての人に呼びかけます。私たちと共に立ち上がり、権威主義に対して声を上げ、自由の鐘を鳴らしましょう!
政府の三権分立というチェック機能が壊れたときに、最後の砦となるのは——人々です。あなたや私たちです。
今こそ共通の価値観のもとに人々が結束すること、それだけが民主主義と独裁の間に立つ壁となります。
結局のところ、私たちに残されているのは——お互いの存在だけなのです。
今、この世界では非常に奇妙で、不可解で、そして危険なことが起きています。
アメリカでは、人々が言論の自由を行使し、意見を表明しただけで迫害されています。これは今、現実に起こっていることです。
アメリカでは、最も裕福な男たちが、世界の最も貧しい子どもたちを病気と死に見捨てることに快感を覚えています。これも今、現実に起こっています。
私の国では、誠実に働いてきたアメリカの労働者たちに苦痛を与えることに、サディスティックな快楽を感じている者たちがいます。
歴史的な公民権法を後退させ、より公正で多様な社会を築いてきた成果が壊されつつあります。
私たちの偉大な同盟国たちは見捨てられ、自由を求めて闘っている人々の敵である独裁者たちに味方するようになっています。
自分たちのイデオロギーに従わないというだけで、アメリカの大学への資金提供が打ち切られています。
人々はアメリカの街から排除され、法的手続きを経ることなく、外国の拘置所や刑務所に強制送還されています。これもすべて、今起こっていることです。
私たちの国民を守るという責務を放棄した、選ばれたはずの議員たちが多数います。彼らには「アメリカ人であること」がどういう意味を持つのか、まるで理解も関心もありません。
私が50年間歌い続けてきたアメリカは、確かに問題はあるかもしれない——けれど、それでも真実のある偉大な国であり、偉大な国民がいる国です。だから私たちは、この時代もきっと乗り越えることができます。
私が希望を抱けるのは、アメリカの偉大な作家ジェームズ・ボールドウィンの言葉を信じているからです。彼はこう言いました。
「この世界には、望むほどの人間性は存在しない。だが、十分な人間性は確かにある。」
祈りましょう。
今回のスピーチを含むパフォーマンスは、その後、公式ライブ盤EP『Land of Hope and Dreams(ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ)』としてリリースされ、トランプ大統領を痛烈に批判したライブとしても世界中のメディアに取り上げられました。
「ロックは声を上げることだ」と語るスプリングスティーンの信念が、音として、言葉として、記録され続けています。
ブルース・スプリングスティーンは、このライブでただ歌っただけではありません。
音楽を通じて真実を語り、民主主義の崩壊に警鐘を鳴らし、そして人間の尊厳を守るために祈ったのです。
そのすべてが刻まれたライブ盤『ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ』は、今この時代にこそ聴かれるべき一枚です。