南アフリカ・なぜ白人が多い?
南アフリカに白人が多い理由:その歴史と背景をわかりやすく解説
「アフリカ=黒人が多数」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし南アフリカ共和国には、白人の住民が約7%(約400万人)もいます。なぜ南アフリカにはこれほど多くの白人が暮らしているのでしょうか?
この記事では、南アフリカに白人が多い理由を歴史的背景から丁寧に解説します。植民地時代の航海からアパルトヘイト政策、そして現代の多民族国家としての姿まで、南アフリカの白人社会を形成してきた要因を総合的に見ていきましょう。
🌍 白人が南アフリカに来たきっかけ
🔹 最初に来たのはオランダ人(アフリカーナーの祖先)
1652年、オランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックが、喜望峰(現在のケープタウン)に補給基地を建設したのがきっかけです。
- 目的はアジア航路への補給地確保で、貿易の中継点としての役割を果たしました。
- 彼らは農業や家畜の飼育を通じて土地に根付き、南部アフリカにおける欧州人コミュニティの礎となります。
- ボーア人と呼ばれた彼らは、後にアフリカーナーと呼ばれる文化的・民族的アイデンティティを形成します。
- 現地の先住民(コイサン人やズールー人)との土地や資源を巡る争いもこの頃から始まりました。
🔹 イギリス人の到来と支配の拡大
1806年、ナポレオン戦争の影響を受けて、ケープ植民地がイギリスの領有下に入ります。
- イギリス政府は白人入植者に土地を与え、経済活動や教育、法制度に英語を導入しました。
- 奴隷制度の廃止や異文化的な価値観の導入により、オランダ系白人との間で大きな軋轢が生まれました。
- ボーア人たちは「グレート・トレック」と呼ばれる大移動を行い、内陸部に独立共和国(オレンジ自由国・トランスヴァール)を設立。
- この出来事は、南アフリカの歴史の中で白人間の分断と緊張を象徴する転機となりました。
🧬 白人の定住と文化形成
白人たちは南アフリカで次第に独自の生活文化を築いていきました。
🔸 アフリカーナー文化の形成
- アフリカーンス語はオランダ語を簡略化したもので、現地の言語とも融合しつつ公用語として定着。
- 宗教はカルヴァン主義が主流で、厳格な家庭教育や信仰心が重んじられました。
- 農業社会をベースにした生活様式が今も南アフリカの田舎で続いています。
🔸 イギリス系白人の影響力
- 都市部(ケープタウンやヨハネスブルグ)では英語文化が根付き、教育や医療制度に大きな影響を与えました。
- 鉱業や金融、メディアなど産業界でイギリス系の白人が大きな役割を担いました。
⚔ ボーア戦争と国家統一の道
1899年から1902年にかけて、金鉱とダイヤモンド鉱山の利権を巡ってイギリスとボーア人との間でボーア戦争が勃発します。
- 戦争は大規模なゲリラ戦とイギリス軍による強制収容政策によって激化。
- 数万人のボーア人女性・子どもが捕虜収容所で命を落としたとされる悲惨な戦争でした。
- 結果としてイギリスの勝利となり、1910年に南アフリカ連邦が設立され、白人の主導による国家建設が進みます。
- この過程で黒人の権利は大幅に制限され、人種間格差が制度的に拡大しました。
🚫 アパルトヘイトと白人支配体制
1948年、国民党政権によって正式にアパルトヘイト政策が導入されます。
- 白人・黒人・カラード(混血)・アジア人に分けた人種登録制度の導入。
- 住宅、教育、交通機関、公園に至るまで全ての生活空間が分離され、白人に優先される構造が確立。
- 黒人は投票権を持たず、自らの土地での自治も認められない「ホームランド」政策が進められました。
- 海外からは国際制裁や文化的ボイコットが行われ、経済的にも孤立を深めていきました。
- 白人層の中でもアパルトヘイトに反対する知識人・宗教家もおり、内部からの批判も高まりを見せました。
🕊 民主化と白人社会の変容
1990年代初頭、デクラーク大統領とネルソン・マンデラの対話により、アパルトヘイト撤廃と民主化が進展。
- 1994年の選挙でANC(アフリカ民族会議)が勝利し、ネルソン・マンデラが大統領に就任。
- 新憲法の制定により人種によらない平等が保障され、南アフリカは多民族国家として再出発しました。
- 白人社会の一部は国外移住を選びましたが、多くは南アに残り、共存社会への適応を模索。
- 白人系市民の多くは現在も経済的に強い立場にあり、特に農業、IT、医療、教育分野で影響力を持ち続けています。
❓ よくある質問(Q&A)
Q1. 南アフリカの白人はアフリカ人?
👉 形式的にはアフリカ人であり、多くは数世代にわたり南アフリカで暮らしているため、文化的にも根付いています。
Q2. 白人は今も差別しているの?
👉 法的な差別は存在しませんが、経済格差や歴史的背景により社会的緊張が続いています。
Q3. アフリカーンス語って何?
👉 オランダ語をベースに現地化した南ア特有の言語で、白人だけでなく一部の黒人やカラードも使用します。
Q4. 白人は今後も残るの?
👉 多くの白人が「南アフリカこそが祖国」と考えており、将来的にも残ると考えられています。
📝 まとめ
- 南アフリカの白人社会は17世紀以降の植民地政策に起源を持ち、オランダ系・イギリス系が中核
- アパルトヘイトによる支配の歴史を経て、現在は共存を目指す多民族国家に変化
- 経済・教育・農業などで今も白人系市民の影響は強く、南アの発展において重要な役割を果たしています
- 過去の差別と向き合いつつ、より平等で安定した社会を目指す努力が続いています
南アフリカにおける白人の存在は、歴史・文化・社会構造に深く根ざしています。その存在を正しく理解することは、未来志向の国づくりにおいて不可欠です。