グリ下とは

「グリ下」とは、大阪・ミナミの道頓堀にある有名な「グリコサイン」の下、戎橋の下に位置する遊歩道を指す俗称です。この場所は、家庭や学校に居場所を見つけられない若者たちが集まる場所として知られるようになりました。特に2021年以降、SNSを通じて知り合った若者たちがこの場所に集まり始め、注目を集めています。

さらに、「グリ下」は若者たちにとって一種の“サンクチュアリ”ともなっており、現代社会が抱える孤立や格差の象徴ともいえる場所となっています。メディアでも取り上げられることが増え、社会問題としての認知が広がりつつあります。この場所を「希望のない居場所」と見る向きもありますが、一方で「最後の避難所」としての価値を見出す声も少なくありません。

グリ下に集まる若者たちの背景

グリ下には、10代から20代前半の若者たちが多く集まっています。彼らの多くは、不登校や家庭内での虐待、経済的困難など、さまざまな事情を抱えています。SNSでのつながりをきっかけに、同じような境遇の仲間を求めてこの場所に足を運ぶ若者が増えています。

中にはLGBTQ+や外国にルーツを持つ若者など、他の居場所では理解されにくいと感じている人たちもいます。そうした背景を持つ若者が共感や安心感を求めて、自然とグリ下に集うようになっているのです。さらに、家出を繰り返している若者、施設を出た後に行き場がない若者、精神的な病を抱える人も多く、社会からこぼれ落ちてしまった人々が一時的な安心を得るために集まる場所となっています。

こうした若者たちは、学校や家庭といった“当たり前”の居場所が機能していない現実を抱えており、グリ下はそのオルタナティブな選択肢の一つとなっているのです。

グリ下の問題点と危険性

この場所には、未成年の飲酒や喫煙、薬物の使用、性被害、闇バイトなど、さまざまな問題が存在しています。また、SNSでのつながりが中心であるため、実際の関係性が希薄であり、トラブルに巻き込まれるリスクも高まっています。

特に深夜帯には、悪意を持った大人が若者に近づき、金銭的搾取や性的被害につながるケースも報告されています。行政や警察によるパトロールも行われていますが、根本的な解決には至っていません。無防備な状態にある若者たちは、時に人身売買や薬物の売買といった犯罪行為に巻き込まれるリスクもはらんでいます。

また、グリ下の存在そのものを不快に感じる市民もおり、若者たちの居場所と地域住民との摩擦が生じていることも見逃せません。このような状況を放置することは、地域社会全体の治安や安心にも影響を及ぼす可能性があります。

支援の取り組み

このような状況を受けて、認定NPO法人「D×P（ディーピー）」などの団体が、グリ下周辺で若者たちの支援活動を行っています。彼らは、テントを設置してフリーカフェを開いたり、ユースセンターを運営したりすることで、若者たちが安心して過ごせる居場所を提供しています。

また、現場の支援者たちは、個別の相談対応や、食事の提供、進学・就労支援なども行っており、長期的な社会復帰を見据えた取り組みも進められています。若者たちが自分自身の価値を見出し、自立していけるように寄り添う姿勢が重要です。特に信頼関係を築くには時間がかかるため、粘り強く、否定せずに関わる支援が求められます。

他にも、一時的に宿泊できるスペースを提供する活動や、行政や企業との連携による就労体験プログラムの提供など、多様なニーズに応える支援が進められています。加えて、インスタグラムやLINEを活用したオンライン相談も拡大しており、グリ下に直接来ることができない若者にもアプローチできるようになっています。

社会全体での支援の必要性

グリ下に集まる若者たちは、家庭や学校、社会から孤立しているケースが多く、彼らを単に「問題のある若者」として見るのではなく、背景にある社会的な課題に目を向ける必要があります。支援団体や行政、地域社会が連携し、若者たちが安心して過ごせる居場所や支援体制を整えることが求められています。

社会的孤立を防ぐためには、教育機関や家庭への支援も不可欠です。また、偏見をなくす啓発活動や、若者の声を政策に反映する取り組みも、今後ますます重要となってくるでしょう。若者自身が自らの声を発信し、それを大人が真剣に受け止める仕組みを整えることが、持続可能な支援の鍵となります。

さらに、メディアのあり方も問われています。センセーショナルな報道ではなく、当事者の視点に寄り添った丁寧な取材と発信が、世論の理解を促進し、より多くの支援を生む土壌となります。

グリ下は、若者たちが自分の居場所を求めて集まる場所であり、彼らの声に耳を傾け、支援の手を差し伸べることが、社会全体の課題解決につながると考えられます。行政・市民・企業・教育現場など、社会全体が一体となって支える姿勢が、未来を担う若者たちの可能性を広げる第一歩です。

私たち一人ひとりが、無関心でいることのリスクを認識し、共に考え、動くことこそが、持続可能でやさしい社会を実現する鍵となるのです。グリ下の若者たちが、希望と誇りを持って未来を語れる日が来るよう、社会の一員としてできることから始めていく必要があります。