甲子園で結果を出している京都国際高校ですがその校歌に注目が集まっています。同校の校歌が韓国語であるためです。
京都国際高校の校歌はなぜ韓国語なのでしょうか?
京都国際高校(正式名称:京都国際中学高等学校)のルーツは、1947年に設立された「京都朝鮮中学」にさかのぼります。その後1958年には「京都韓国学園」として認可を受け、高校も開設されました。
当時は在日韓国(朝鮮)の子どもたちのための民族教育機関として重要な役割を担い、母語教育や民族文化の継承を柱としていました。学校行事や授業では韓国語、韓国史、伝統芸術を教える時間が設けられ、生徒は自身のアイデンティティを誇りに思えるような環境で育ちました。また、地域のコミュニティセンターとしても機能し、祭りや記念行事などを通して地域との交流も盛んでした。
時代の変化や少子化の影響で生徒数が減少し、経営面での課題も抱える中、1990年代以降に韓国政府や在日韓国団体(民団)などの支援を受けて再建を目指しました。2003年には文部科学省の認可を受け、日本の学校教育法に基づく「一条校」として再出発します。翌2004年からは日本人の受け入れも始まり、国際性を前面に打ち出した教育方針が定着しました。
現在では、生徒の約70%が日本人で構成され、国籍や民族を問わず学べる多文化共生の教育環境が整っています。授業では日本語・韓国語の双方を活用し、外国語教育や異文化理解を重視しています。
京都国際高校の校歌が今も韓国語(ハングル)のままである理由は、学校創設当時の精神や歴史を守り続けるためです。民族学校時代に制定された校歌は、ルーツや文化を象徴する存在であり、そのまま継承されています。
一度は日本語化の案も出ましたが、卒業生や保護者、教職員の間で「歌詞の意味と背景を変えずに伝えることが大切」という意見が多数を占め、現在も韓国語で歌われています。
校歌の冒頭には「東海(トンヘ)」という表現が使われ、韓国で日本海を指す呼称として知られています。和訳は「東の海を渡りし、大和の地は 偉大な祖先の昔の夢の場所」となり、韓日両国の古くからの交流やつながりを象徴しています。
歌詞全体には、自分たちのルーツを大切にしながら未来へ向かって進む決意や、異なる文化同士をつなぐ架け橋になろうという理念が込められています。かつての校長は「スポーツや学びを通じて日韓の友好の象徴になってほしい」と生徒に語りかけました。
甲子園での活躍により、韓国語で歌われる校歌は全国中継を通じて広く知られるようになりました。実況や解説で紹介されることもあり、SNS上では「異文化共生の象徴」として話題になりました。日本国内だけでなく、海外メディアでも取り上げられ、学校の歴史や理念が注目を集めました。
多くの人々が「民族や国籍を超えた感動」として歓迎し、多様性を尊重する姿勢を評価しました。韓国国内では「日韓合作の奇跡」として称賛され、生徒たちも誇りを持って歌う場面が印象的だと報じられました。卒業生からも「自分のアイデンティティを守りながら学べた」と感謝の声が上がっています。
しかし、歌詞中の「東海」表現や韓国語使用に否定的な意見もあり、SNS上での批判や過激な投稿が見られました。これを受けて京都府知事が差別的な内容の削除を求めるなど、行政が対応する事態にも発展しました。この問題は、言語や文化の多様性を社会がどう受け止めるかという課題を浮き彫りにしています。
韓国では、放送時の字幕で「東海」を「東の海」と翻訳したことが「意味が弱められた」と捉えられることもありました。一方、日本では「国際的な学校としての特色」として肯定的に見る意見がある一方で、今後の放送や歌詞の扱いについて慎重な議論が続いています。
京都国際高校の韓国語校歌は、単なる歌ではなく、学校の歴史、文化的背景、国際的理念を象徴する存在です。