多発性骨髄腫の一歩手前とは
MGUS・くすぶり型
「多発性骨髄腫、血液のがん、その一歩手前」――このような表現がニュースやSNSで出てくると、
- そもそも「一歩手前」って医学的に何を指すの?
- もう“がん”なの?それとも“前段階”なの?
- どんな検査や経過観察が必要?
と不安になりやすいと思います。
この記事では、医療の現場で「多発性骨髄腫の前段階」として扱われることが多い MGUS(エムガス) と くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫 を中心に、「多発性骨髄腫の一歩手前とは何か」 を丁寧に整理します。
※本記事は一般的な医療情報の解説です。個別の病状や治療判断は、必ず主治医(血液内科・血液腫瘍内科)に確認してください。
多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫は、骨髄にいる 形質細胞(免疫で抗体を作る細胞)が“異常な増え方”をして起こる 血液のがん です。
形質細胞が異常に増えると、体の中で次のような問題が起こりやすくなります。
- 🩸 貧血(だるさ、息切れ)
- 🦴 骨の痛み・骨折(背中や腰の痛みなど)
- 🚰 腎機能の低下(むくみ、尿の異常、血液検査の悪化)
- 🧂 高カルシウム血症(吐き気、便秘、意識のぼんやりなど)
これらは、骨髄腫が“症状や臓器障害を起こしている状態”で重要になります。
「多発性骨髄腫の一歩手前」は医学用語ではない
まず大事な点として、「一歩手前」自体は診断名(病名)ではありません。
ただし、医療では 多発性骨髄腫の前段階(前駆状態) として、次の2つがよく説明されます。
- ✅ MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)
- ✅ くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫(Smoldering Multiple Myeloma:SMM)
ニュースで「一歩手前」と表現されるとき、一般にこのどちらか、またはそれに近い状態を指している可能性が高いです。
ただし、どちらかは検査値や骨髄検査・画像検査などで決まるため、外から断定はできません。
MGUS(エムガス)とは:前段階の“入口”
MGUSのポイント
MGUSは、血液検査で Mタンパク(単クローン性タンパク) が見つかる状態です。
- 🧪 Mタンパクがある
- 🧍♂️ 多くの場合 自覚症状はない
- 🏥 すぐ治療はしない(経過観察が基本)
MGUSは「がん」そのものではありませんが、一部が将来、多発性骨髄腫などに進行する可能性があるため、定期チェックが重要になります。
MGUSが見つかるきっかけ
- 健康診断や人間ドックの 蛋白分画
- 貧血や腎機能の検査で偶然見つかる
- 血液検査で 総蛋白が高い など
くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫とは:前段階の“中間地点”
くすぶり型のポイント
くすぶり型(SMM)は、MGUSよりも 骨髄の形質細胞やMタンパクが多い など、より「骨髄腫に近い」特徴を示します。
- 🔥 「くすぶり」は英語の smoldering(炎が出ないでくすぶる)から
- 😌 症状がなく、臓器障害がない ことが大前提
- 👀 ただし 進行(活動性の骨髄腫へ)リスクがMGUSより高い
くすぶり型でも、基本は経過観察ですが、リスクが高いケースでは研究・臨床試験や、状況に応じた治療介入が検討されることがあります。
「治療が必要な多発性骨髄腫」との違い:CRAB/SLiM-CRAB
医療では、治療開始が必要な“活動性(症候性)の多発性骨髄腫” を判断するために、よく CRAB が使われます。
CRAB(臓器障害)
- C:高カルシウム血症(Calcium)
- R:腎障害(Renal)
- A:貧血(Anemia)
- B:骨病変(Bone lesions)
これらの臓器障害があると、治療が必要な状態として扱われます。
SLiM(“臓器障害が出る前に危険が高い”サイン)
近年は、臓器障害がなくても、次のような“非常に高いリスク”を示す所見がある場合、治療が必要な多発性骨髄腫として扱われる考え方が広がっています。
- 🧫 骨髄中の形質細胞が 一定以上
- 🧪 血清フリーライトチェーン比 が極端に高い
- 🧲 MRIで 複数の病変 が示される
このあたりは専門的になるため、主治医が「どこまでを骨髄腫として扱うか」を検査結果に基づいて説明します。
「一歩手前」と言われたときに行われやすい検査
前段階(MGUS/くすぶり型)か、治療が必要な骨髄腫かを見極めるため、次の検査が組み合わされます。
- 🩸 血液検査(貧血、腎機能、カルシウム、総蛋白など)
- 🧪 Mタンパクの検査(蛋白分画、免疫固定など)
- 🧫 フリーライトチェーン(FLC)
- 🚽 尿検査(尿中タンパク、Bence Jones蛋白など)
- 🦴 骨髄検査(形質細胞の割合・性質)
- 🧲 画像検査(X線、CT、MRI、PETなど:骨病変の評価)
「人間ドックで見つかった」という文脈では、最初は血液データ(蛋白分画など)から疑いが出て、精密検査につながることが多いです。
経過観察(フォローアップ)で大切なこと
MGUSやくすぶり型では、治療を急がない一方で、放置はしないのが基本です。
- 📅 定期的に血液・尿検査で変化を見る
- 🦴 痛み(特に背中・腰)や骨折リスクに注意
- 🚰 腎機能(クレアチニンなど)を継続チェック
- 🩸 貧血の進行や、原因不明の疲労感を見逃さない
受診を急いだほうがよい症状の例
- 🦴 強い骨痛、急な背中の痛み、身長が縮む感じ
- 🚰 尿が極端に減る/むくみが強い
- 🩸 立ちくらみが増える、息切れが強い
- 🧂 吐き気・便秘・意識がぼんやり(高カルシウム血症の可能性)
よくある誤解:「前段階=軽い」ではない
「一歩手前」と言われると、安心材料のようにも聞こえます。
ただ実際は、
- ✅ 症状がないからこそ、定期的な観察が重要
- ✅ 進行リスクは人によって大きく違う
- ✅ “早期に見つかった”こと自体は、管理上プラスになることが多い
という捉え方が現実的です。
つまり、軽く見ていい話ではないが、必要以上に悲観しすぎる話でもない――この中間にあります。
Q&A:「多発性骨髄腫の一歩手前」に関する疑問
Q1. 「一歩手前」=MGUSですか?
A. 可能性はありますが、MGUSとも、くすぶり型とも限りません。検査結果(Mタンパク量、骨髄中の形質細胞割合、臓器障害の有無など)で分類されます。
Q2. くすぶり型は「がん」なのですか?
A. くすぶり型は、一般に 症状や臓器障害がない段階 として説明されますが、骨髄腫に近い特徴を持つため、医療者の説明では「前段階」「無症候性」などの言葉が使われます。分類は専門的なので、主治医の説明に沿って理解するのが安全です。
Q3. 治療しないのに、なぜ通院が必要ですか?
A. 進行のサイン(貧血・腎障害・骨病変など)を早めに拾うためです。症状が出てから気づくと負担が増えることがあるため、定期チェックがとても大切です。
Q4. 生活習慣で進行を止められますか?
A. 生活習慣だけで進行を確実に止める方法が確立しているわけではありません。ただし、
- 睡眠・栄養
- 感染予防
- 腎臓に負担をかけにくい生活(脱水を避ける等)
- 痛みや体調変化を放置しない などは、結果的に体を守る上で役立ちます。
Q5. 家族が心配しています。どう説明すればいい?
A. 次のようにまとめると伝わりやすいです。
- 「今は症状がない/臓器障害はない(または軽い)」
- 「ただし将来の変化を見逃さないために定期検査が必要」
- 「主治医の説明に沿って管理していく」
まとめ:
- 「多発性骨髄腫の一歩手前」 は厳密な診断名ではない
- 文脈としては、前段階(前駆状態)である
- MGUS
- くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫 などを指す可能性が高い
- 大切なのは「今すぐ治療かどうか」だけでなく、 臓器障害(CRAB)や高リスク所見の有無を確認し、定期的に観察すること