ゾーランマムダニ・経歴
ゾーラン・マムダニ氏の学歴・経歴
ニューヨーク州議会議員として知られ、2025年にはニューヨーク市長選の民主党候補として全米の注目を集めたゾーラン・クワメ・マムダニ(Zohran Kwame Mamdani)氏。移民家庭の出自、住宅問題への現場経験、草の根運動に根ざした選挙戦など、ゾーラン・マムダニ氏の学歴・経歴を時系列で整理して解説します。
基本プロフィール

- 氏名:ゾーラン・クワメ・マムダニ(Zohran Kwame Mamdani)
- 生年:1991年(10月18日)
- 出生地:ウガンダ・カンパラ
- 家族:父は政治学者のマフムード・マムダニ、母は映画監督のミーラー・ナイル
- 政治所属:民主党/Democratic Socialists of America(DSA)会員
- 現職:ニューヨーク州議会下院・第36選挙区(クイーンズ、アストリア)議員(2021年就任)
※幼少期に南アフリカを経て、7歳で家族とともにニューヨークへ移住したとされます。高校はブロンクス・サイエンスを卒業後、ボウドイン大学でアフリカ研究を専攻。2018年に米国市民権を取得。
学歴(時系列)
- 1990年代後半:ニューヨーク市内の公立校に通学開始(7歳で移住)
- 2010年:ブロンクス・ハイスクール・オブ・サイエンス(The Bronx High School of Science)卒業
- 2010〜2014年:米メイン州 ボウドイン大学(Bowdoin College) に在学
- 主専攻:アフリカ研究(Africana Studies)
- 在学中:学生団体でのアクティビズムや言論活動に関わる
- 2014年:ボウドイン大学 学士号 取得
経歴(時系列)
- 2014〜2019年:住宅・差押え防止(foreclosure prevention)分野のハウジング・カウンセラーとして活動。クイーンズの低所得移民世帯の住居確保支援に従事。
- 2015〜2019年:ニューヨーク市・州の草の根選挙運動に参加
- 2017年:NYC DSA(民主社会主義者)に参加
- 2018年:州上院選などでキャンペーン・マネージャー/フィールドオーガナイザーを歴任
- 2019年10月:ニューヨーク州下院 第36選挙区(アストリア)から出馬を表明
- 2020年6月:民主党予備選で現職を破り勝利(11月の本選で当選)
- 2021年1月:ニューヨーク州議会議員に就任
- 2021年秋:ニューヨーク市タクシー運転手のメダリオン債務救済を求める抗議・ハンガーストライキを議員として支援・伴走。のちの市支援策(市保証付き再編)実現に寄与。
- 2022年:市のタクシー債務再編プログラム始動(再編上限170,000ドル・市保証等)。地元向け案内や申請支援を行う。
- 2022年・2024年:州下院に無投票再選
- エネルギー・住宅・不動産税制・選挙法等の州議会委員会に所属し、公共電力(Public Power)、家賃規制・居住権(Good Cause Eviction)、ディード詐欺(名義盗難)対策などを推進。
- 2025年:ニューヨーク市長選に民主党から出馬。民主党予備選で勝利宣言(一般選挙へ)。主要公約は家賃凍結、無料バス、保育無償化、富裕層増税の財源など。
生い立ちと家族背景
- 両親:父はポストコロニアル研究で知られる学者マフムード・マムダニ(Mahmood Mamdani)、母は映画監督のミーラー・ナーイル(Mira Nair)。
- 幼少期の移動:ウガンダのカンパラで生まれ、5歳で南アフリカ(ケープタウン)へ、7歳で米国へ移住しニューヨークに定住。
- 初等〜中等教育:マンハッタンのバンク・ストリート・スクールなどを経て、名門ブロンクス・サイエンス高校を卒業。高校ではクリケット部の立ち上げに関わるなど学内活動も盛んでした。
- 大学:メイン州のボードウィン大学でアフリカ研究を専攻。学生時代から社会運動や人権問題への関心が強く、後の政治活動の基礎となりました。
音楽・クリエイティブ活動
マムダニ氏はヒップホップを愛好し、Young Cardamom/Mr. Cardamomの名義でラップ音楽を制作。ウガンダのラッパーHABとのコラボや、母ナーイル監督作『Queen of Katwe(クィーン・オブ・カトゥエ)』で音楽監督補・楽曲監修を務めるなど、多文化的なバックグラウンドを生かした表現活動でも知られます。
政治活動の出発点
- 現場経験:州議会に立候補する前は、クイーンズの**差し押さえ予防・住宅相談員(foreclosure prevention & housing counselor)**として、住宅ローンや立ち退きに直面する移民・低所得世帯を支援。住宅危機の深刻さを現場で体感したことが、政治参加の動機となりました。
- 草の根政治:2010年代後半、NYCの地方選でフィールド組織やキャンペーン・マネージャーを務め、地域に根差した組織化で頭角を現します。
ニューヨーク州議会での歩み(2021– )
- 初当選:2020年民主党予備選で現職に勝利し、2021年1月就任。2022年・2024年には無投票で再選。
- 地盤:クイーンズ区アストリア/ディトマース=スタインウェイ等。多民族・多世代が暮らす賃貸主体の地域課題にフォーカス。
- 主なテーマ:
- 住宅:家賃高騰対策、立ち退き防止、公共住宅の改善。
- 公共サービス:電力・交通など「公共オプション」の強化、料金の負担減。
- 気候・エネルギー:州営電力公社を活用した再生可能エネルギーの拡大(いわゆるBuild Public Renewablesの推進で知られる)。
- 交通:バス運賃の段階的無償化、タクシー業界のメダリオン債務救済支援など。
- 委員会等(2025年時点):高齢者、都市、選挙法、エネルギー、不動産税制の各委員会のメンバー。州議会のブラック/プエルトリコ系/ヒスパニック/アジア系議連やアジア太平洋系タスクフォース、移民タスクフォース等にも参加。
実績ハイライト
- タクシー・メダリオン債務救済:NYCでのハンガーストライキ等の運動に連帯し、市による救済スキーム実現に寄与。タクシー運転手の自死が相次いだ危機に対し、債務再編・利子軽減などの枠組みを後押ししました。
- 再エネ公的拡大(Build Public Renewables):州営のニューヨーク電力公社(NYPA)による再エネ発電・供給の拡大を推進。公的主導での電化・脱炭素を「料金負担の軽減」「エネルギーの公平性」と両立させる方針を打ち出しています。
2025年・ニューヨーク市長選(民主党候補)

- 出馬と情勢:2024年秋に出馬表明。2025年の民主党予備選では知名度の高い相手候補を破って民主党公認を獲得。11月の本選では、家賃・交通費・保育など「暮らしのコスト」を争点の中心に据えました。
- 主な公約:
- 家賃の凍結(特に家賃安定化ユニット)と住宅供給の拡大
- バスの運賃無償化(段階的)
- 公共保育(ユニバーサル・チャイルドケア)
- 市営(もしくは公的関与の強い)食料小売の整備でフードデザート解消
- 最低賃金の引き上げ(2030年までに$30)
- 気候行動:建物の電化・効率化、再エネ導入支援、Local Law 97の着実な履行と家計・中規模オーナーへの移行支援
- 支持基盤:若年層・移民コミュニティ・労働者階級の賃貸世帯など。草の根の寄付とボランティアが強みです。
ポイント:市長選公約は「負担を減らし公共を強くする」一貫したメッセージで整理され、州議時代の政策ラインと連続しています。
政策スタンスの輪郭
- 公共財の再構築:電力・交通・保育など、人々の生存権・移動権に関わる領域を市場任せにせず、公的セクターが価格・品質・アクセスを担保する発想。
- 住宅の安全網:立ち退き抑止、家賃負担の軽減、非営利/公的住宅の供給拡大。
- 公平な移行(Just Transition):気候政策でのコストを低中所得層や移民に転嫁しない設計を重視。
- 人権・多様性:移民・宗教・LGBTQ+の権利擁護を明確に掲げる。
私生活
- 宗教・ルーツ:ムスリムとしての信仰に触れつつ、南ア・ウガンダ・インド系ディアスポラの家系とNYCでの成長がアイデンティティに影響。
- 言語:英語に加え、ヒンディー/ウルドゥー、ベンガル語、スペイン語、アラビア語などを一定程度話すことができるとされています。
- 結婚:2025年、アーティストのラマ・ドゥワジ(Rama Duwaji)氏と結婚。
年表(簡易)
- 1991年:ウガンダ・カンパラに生まれる。
- 1996–1998年頃:南アフリカ・ケープタウンへ移住。
- 1998–1999年頃:米国ニューヨークへ。以後NYCで育つ。
- 2014年:ボードウィン大学卒業(アフリカ研究)。
- 〜2019年:住宅相談員として活動、NYCの草の根政治に従事。
- 2020年:州下院第36区の民主党予備選に勝利。
- 2021年:ニューヨーク州議会議員に就任。
- 2022年・2024年:いずれも無投票で再選。
- 2024年:2025年NYC市長選への出馬を表明。
- 2025年:民主党候補に。市長選本選に挑む。
まとめ
ゾーラン・マムダニ氏は、「暮らしの負担を軽くし、公共を強くする」という合言葉のもと、住宅・電力・交通・気候・保育といった生活の基盤に政策資源を集中させてきた政治家です。クイーンズ発の草の根運動から州政へ、そして市政のトップを目指すまでに至った背景には、移民都市ニューヨークの現場に根差した経験とコミュニティの支持があり、その歩みは今後も注目されます。