2025年6月、東京高裁で大川原化工機事件に関して「違法な捜査と起訴」が認定され、国家賠償として総額1億6600万円の支払いが命じられました。この判決をきっかけに、一人の検察官の名前が改めて注目を浴びています。その人物とは、同事件の起訴を主導した塚部貴子検事です。
本記事では、彼女の現在の職務状況、そして処分の有無と今後の展望について詳しく解説します。
大川原化工機は中小企業でありながら、高性能な噴霧乾燥装置を製造しており、海外にも輸出実績を持っていました。ところが2019年、警視庁公安部はこの装置が「大量破壊兵器に転用可能な装置」であると判断し、外為法違反の疑いで家宅捜索を行い、社長ら3人を逮捕。後に起訴されました。
しかし、後の裁判で政府機関(経産省)から問題ないとの回答を得ていた事実が明らかになり、しかも勾留中に元顧問の男性が胃がんで死亡するという痛ましい結果となりました。
この事件の起訴を決定づけたのが、当時東京地検公安部に所属していた塚部貴子検事だったのです。
2025年春ごろからの人事異動で、塚部検事は東京高等検察庁に異動し、引き続き現職の検事として勤務しているとみられています。X(旧Twitter)などの情報では、乳腺外科医事件の差戻審にも担当検事として関与しているとの目撃報告もあり、少なくとも検察組織の一線を退いたわけではないことが明らかです。
また、6月20日に行われた東京地検の謝罪(森博英・公安部長による)では、「より慎重な起訴判断をすべきだった」との見解が伝えられましたが、これは塚部検事からの伝言という形で言及されたもので、彼女自身が公に姿を現したわけではありません。
多くのメディアや議会質疑によって確認された情報によると、塚部検事への懲戒処分、減給、停職、降格、あるいは謝罪会見などは一切行われていません。また、検察庁内部でも明確な処分方針や組織的調査の開始は示されておらず、形式上は「不問」のままとなっています。
一方、捜査を主導した警視庁公安部の警察官たちには、警察庁長官賞および警視総監賞の返納、さらに警察白書への掲載削除という対応がなされています。これに比べると、検察官に対する処分が極端に甘く、社会的な不公平感が拡大している状況です。
注目点 | 内容 |
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🔍 国会での追及 | 杉尾秀哉議員らが処分の有無を繰り返し質問中 |
🧑⚖️ 第三者検証 | 市民団体や遺族が検察にも独立検証委を求めている |
👥 世論の圧力 | 「冤罪に責任を取らない検察」という批判が続く限り、何らかの動きが起こる可能性あり |
📜 政策改正 | 冤罪・違法捜査の再発を防ぐための起訴ガイドラインの見直しなども議論されるか |
塚部検事の進退や処分は、単なる一人の検察官の問題ではありません。**「権力は誰がどう監視するのか」「冤罪をどう防ぐのか」**という司法制度そのものに関わる問いです。
日本の司法が真に信頼されるものとなるには、今回の問題を曖昧にせず、明確な責任と再発防止策を示す必要があります。
「より慎重に起訴の判断をすべきだった。おわびする」
ポイント | 意味/課題 |
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1. 組織としての謝罪 | 個人(塚部検事)ではなく、警察と検察の“代表”が謝罪。一歩進んだ組織的反省。 |
2. 直接の謝罪 | 被害者側と面会し、公開の場で謝罪した点が異例。だが、謝罪の中身は曖昧。 |
3. 誤差との限定 | 塚部検事の「慎重すべきだった」発言は“伝言”形式であり、自身の過失を完全には認めていない。起訴判断の「誤り」そのものは認めていません。 |
4. 遺族の姿勢 | 遺族は謝罪だけでは不十分とし、独立した検証と説明責任を求めています。 |