2025年、ドナルド・トランプ大統領は史上初の“再選後復帰型”大統領としてアメリカ政治に返り咲きました。ビジネスマンからテレビタレント、そして政治家へと華麗な転身を遂げた彼の経歴には、数々の議論と物議がついて回ります。その中でも、トランプ大統領の出身大学と“学歴観”が、政治信条や言動にどのように反映されているのか?は重要な視点です。
中でも注目すべきは、名門・ハーバード大学に対するトランプ氏の“異様な敵意”とも言える言動。これは単なる思想の違いではなく、彼自身の若き日の“苦い経験”に起因していると見られています。本稿では、彼の出身大学やハーバードとの因縁を深堀りし、彼の政治的キャラクター形成に与えた影響を解説します。
トランプ大統領の最終学歴は、アメリカの名門・**ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)**のビジネススクール、**ウォートン・スクール(Wharton School)**です。アイビーリーグの一角を成すペン大は、特に経済やビジネス分野で世界的評価を受けています。
ウォートン・スクールは企業家や金融マンの登竜門とも言える存在で、実業界では「ハーバードに並ぶ、あるいはそれ以上」と称されることもあります。トランプ氏はこの経歴を誇らしく語り、ビジネスの成功を支えた基盤としてしばしばアピールしてきました。
「私は世界最高のビジネススクールで学んだ」
― ドナルド・トランプ(演説より)
しかし、その一方で、在学中の評価や成績に関しては不可解な点も多く、詳細は現在に至るまで明らかにされていません。
トランプ氏の大学生活について、同級生や元教授の証言によると、講義中に積極的に発言するタイプではなかったとされ、「目立つ存在ではなかった」との証言もあります。一方で、自己ブランディングや“勝者”としての自己演出に早くから関心を持っていたことが語られています。
学術よりも「いかに実業で勝ち残るか」を意識した学び方をしていたとされ、これは後のビジネス展開やメディア対応にも如実に表れています。
ウォートン卒業という肩書きは、トランプ氏のアイデンティティを形成するうえで重要ですが、その裏には成績に関する不可解な点が多いのも事実です。
一部では「父親の影響力で編入・卒業したのでは」との見方もあり、実力主義に基づく成果であるかどうかに疑問を呈する声が少なくありません。
また、トランプ氏は自伝や講演で「私は成績も非常に良かった」と語っていますが、実証的裏付けは今も示されていません。
トランプ氏が激しく非難し続けてきた大学、それがハーバード大学です。彼はたびたび「ハーバードの人間は机上の空論にすぎない」「実社会で通用しない」といった言葉で攻撃してきました。
伝記やジャーナリストの証言によれば、トランプ氏は高校卒業時にハーバード大学を受験したが、不合格だったとされています。その後、やむなくフォーダム大学に入学したと伝えられています。
この“不合格体験”が、後年のハーバード批判の出発点だったとする説は有力であり、トランプ氏にとって**「選ばれなかった経験」**が大きな心理的影響を残した可能性があります。
1960年代のハーバードは、リベラルな文化、ベトナム反戦運動、公民権運動の拠点であり、保守的な家庭出身のトランプ青年にとって“異質な世界”でした。
また、当時のハーバードは出願者の学力だけでなく、家庭背景や文化資本も重視される傾向にあり、これが彼にとって「自分はエリートに排除された」という思いを強めたと見られます。
トランプ氏が大統領選や在任中に繰り返してきたのが、**「反エリート主義」**のメッセージです。ハーバードやYale、Princetonといった名門校出身の官僚や政治家を名指しで批判し、支持層から喝采を浴びてきました。
この二項対立の構図は、“対エリート感情”を選挙戦略として最大限に活用するというトランプ氏の手法を象徴しています。
また、「自分はウォートン卒だがハーバードとは違う」という論法で、自らの学歴を誇示しつつ、ハーバードに対しては“冷笑的優位”を取る姿勢が一貫して見られます。
トランプ氏のSNSや演説には、「自分は非常に頭がいい」「安定した天才だ(stable genius)」といった発言が繰り返し登場します。これは一見すると冗談や誇張に見えるものの、根底には学歴に対する複雑な感情があるとも解釈できます。
とくにハーバード大学に関しては、過去の不合格に加え、その後も学歴で“格上扱い”されてきたことへの劣等感が見え隠れします。
ウォートンの名声を盾にしながら、「ハーバードに行った奴らよりも自分の方が成功した」と繰り返すその姿勢は、“勝者”という自負と、“選ばれなかった”という過去の記憶とのせめぎ合いの表れなのかもしれません。
トランプ大統領の出身大学、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールは間違いなく一流校ですが、その背後にあるハーバード不合格という挫折体験が、彼の政治姿勢に大きな影響を与えているのは明白です。
「反エリート」「反知識人」的なレトリックは、その過去の痛みを昇華し、“庶民の味方”というイメージを構築する政治的道具となりました。
学歴は単なる肩書きではなく、その人の価値観・政治信条・言動にまで波及する重要な要素です。トランプ氏のケースは、それを象徴する典型例であり、今後もその動向を追ううえで見逃せない視点となるでしょう。