京都大学大学院医学研究科・医学部附属病院の消化器内科で活躍する塩川雅広氏は、難病「潰瘍性大腸炎」の発症メカニズム解明や血液診断キット開発で世界的に注目されている研究者である。2025年11月22日放送の「正義のミカタ」出演をきっかけに、研究費不足やドラッグラグの問題を訴えたことでも話題になった。
本記事では、公開情報に基づき塩川雅広氏の経歴・学歴を時系列で整理し、研究者としての歩みと主要な業績をわかりやすくまとめる。
塩川氏は、臨床医として患者に向き合う一方で、自己抗体や免疫の視点から「治らない病気を根本から治す」ことを目標に研究を進めてきた医師・研究者である。
公開されている研究者データベースやプロジェクト公式プロフィールをもとに、塩川氏の歩みを年代順に整理する。
医師の道を志して京都大学へ進学し、医学部で基礎・臨床の両面を学んだ。卒業後は医師として臨床の現場へ進む。
卒業後は一般内科を経て消化器領域を専門にし、臨床経験を積み重ねたとされる。臨床現場で「治せない病気の存在」を実感したことが、後の研究志向につながった。
臨床を続けながら基礎研究にも本格的に取り組む段階に入る。消化器疾患や自己免疫性疾患に関する研究を深め、以後の研究キャリアの基盤を作った。
臨床医として病院業務を担いながら、研究も並行して推進するスタイルを継続した時期である。
京大以外の研究環境で経験を積み、自己抗体研究など専門領域をさらに発展させた。
炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎の病因研究を大規模に進める拠点的な時期で、後述の「世界初の発症メカニズム発見」へつながっていく。
若手研究リーダーとして研究チームを牽引。学内外の共同研究や産学連携を進め、診断・治療の実用化に向けた活動がより強まっている。
塩川氏の経歴が注目される最大の理由は、潰瘍性大腸炎をめぐる世界的成果にある。ここでは代表的な業績を整理する。
塩川氏ら京大消化器内科の研究チームは、潰瘍性大腸炎の患者血液中に抗インテグリンαvβ6自己抗体が存在することを突き止め、これが病態と関わる重要な自己抗体であることを報告した。これは発症メカニズム理解を一段進める発見として評価されている。
従来は内視鏡に依存していた潰瘍性大腸炎の診断に対し、塩川氏らは血液中の抗インテグリンαvβ6自己抗体を測定するELISA診断キットを開発。EUでは2025年11月に体外診断薬としての認証(IVDR)を取得し、臨床での使用が可能になった。
この成果は、患者負担の軽減、早期診断の促進、医療の効率化に直結する臨床的価値が高い研究として注目される。
塩川氏は研究成果を「論文で終わらせず治療へつなげる」ことを重視し、京都大学イノベーションキャピタル(iCAP)の支援を受けながら、潰瘍性大腸炎の根治薬開発に向けたスタートアップ**Link Therapeutics(リンク・セラピューティクス)**の立ち上げにも関与している。
大学研究と医療現場、さらに事業化をつなぐ動きは、近年の「大学発創薬・診断」の代表例として評価されている。
2025年11月のテレビ出演で塩川氏は、
を率直に指摘した。
世界レベルの研究が日本発で進んでいるにもかかわらず、制度面・資金面が研究のスピードや実装を妨げているという現状の訴えは、多くの視聴者の共感を呼び、研究政策への関心を高めるきっかけとなった。
塩川雅広氏の経歴を振り返ると、
という一貫した流れが見える。
潰瘍性大腸炎のような難病に対し、「原因の解明 → 診断の革新 → 根治治療の開発」までを本気でつなげようとしている点が、塩川氏の最大の特徴と言えるだろう。
今後、日本での診断キット承認や治療法の臨床応用が進めば、塩川氏の研究はさらに大きな社会的影響を持つはずである。