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アメリカと台湾の国交

アメリカと台湾の国交

なぜ正式な国交がないのか、そして関係はどこへ向かうのか

1. まず結論:アメリカと台湾に「正式な国交」はない

アメリカ(米国)と台湾(中華民国)は、現在も正式な外交関係=国交を結んでいません。 1979年に米国が中華人民共和国(中国)を唯一の中国政府として承認したため、台湾との国交は断交されました。以後、米台関係は「公式ではないが非常に密接な関係」として維持されています。

ここを誤解すると、ニュースやSNSの議論が分かりにくくなります。以降、**「国交がないのに、なぜこんなに深い関係なの?」**を順に解説します。


2. 歴史の整理:米台はなぜ断交したのか

2-1. 1949年以降の「二つの中国」

  • 1949年の国共内戦後、中国大陸には中華人民共和国(PRC)が成立。
  • 台湾には中華民国(ROC)政府が残り、長らく「中国の正統政府」を名乗りました。

冷戦期、米国は反共政策の一環として台湾と同盟関係を結び、1954年には米華相互防衛条約を締結して台湾を守る姿勢を示しました。

2-2. 1970年代の米中接近と1979年の断交

1970年代、ソ連を主な脅威と見た米国は中国大陸との関係改善を進めます。これが1972年の上海コミュニケ、そして1979年の米中国交樹立につながりました。

その結果、米国は北京のPRCを「中国の唯一の合法政府」と認め、台北のROC(台湾)との国交を終了しました。


3. 「国交なし」でも関係が続く仕組み:台湾関係法(TRA)

断交によって普通なら関係が弱くなりそうですが、米国は同時に**台湾関係法(Taiwan Relations Act, 1979)**を制定しました。これは米国内法で、

  • 台湾と実務的な関係(貿易・文化・安全保障など)を維持する
  • 台湾の防衛能力維持のため、武器供与を含む支援を行う
  • 台湾の将来が「非平和的手段で変えられること」を重大な懸念とみなす

といった柱を定めています。

つまり、**「国交は切ったが、台湾の安全と交流は守る」**という、かなり特殊な構造が作られたわけです。


4. 米国の「一つの中国」政策と、中国の「一つの中国」原則の違い

ここが最大のポイントです。

4-1. 米国の「一つの中国(one China policy)」

米国は、

  • 中国側の主張(台湾は中国の一部)を「認識・了解(acknowledge)」はする
  • しかし、台湾の主権が中国に属すると認めたわけではない
  • 現状変更に反対し、平和的解決を求める

という立場をとります。

4-2. 中国の「一つの中国(one China principle)」

一方の中国は、

  • 台湾は中国の不可分の領土
  • PRCが唯一の合法政府

とする、より強い主張です。米国の政策と同じ言葉でも中身が違うため、衝突の原因になります。


5. 「非公式だけど準同盟」:米台交流の実態

5-1. 窓口はAIT(米国在台協会)

米国は台湾に大使館を置けない代わりに、**米国在台協会(AIT)**が大使館に近い役割を担っています。 ビザ発給、政府高官の往来、軍事協力の調整など、実務はほぼ通常の外交と同等です。

5-2. 安全保障:武器売却と抑止

米国はTRAに基づき、台湾に防衛装備を売却し、軍の訓練支援も行ってきました。これが台湾海峡のバランスを支える仕組みです。

5-3. 経済・技術:半導体とサプライチェーン

台湾は半導体の重要拠点であり、米国の経済安全保障・先端技術政策とも直結しています。2025年も関税協議など経済面の結びつきが強化されています。


6. 近年(2024〜2025年)の動き:国交に近づいたのか?

6-1. 国務省ファクトシートの文言変更

2025年2月、米国務省が公式サイトのファクトシートから 「米国は台湾独立を支持しない」という文言を削除し、台湾の国際機関参加支援などを明確化しました。

これに台湾は歓迎、中国は強く反発しました。

ただし、多くの専門家は米国の「一つの中国」政策そのものが変わったわけではないと評価しています。

6-2. 「六つの保証(Six Assurances)」を法制化する動き

レーガン政権期に台湾に与えた「六つの保証」を、2025年に議会が法制化しようとする動きが進んでいます。 これは台湾への関与の安定性を上げる狙いがあり、国交ではないものの、安全保障の“確約感”を強める方向です。

6-3. 2025年11月:台湾保証実施法案の可決

さらに直近では、米上院が**台湾保証実施法案(Taiwan Assurance Implementation Act)**を可決。 米政府内に残る「台湾との交流制限(自己規制)」を定期的に見直し、解除していくことを求める内容で、交流の幅が広がる可能性があります。

これも「国交樹立」そのものではありませんが、“非公式関係をより公式に近い形へ”整備する流れと理解できます。


7. それでも米台が国交を結ばない(結べない)理由

理由①:中国との国交・国際秩序との整合性

米国が台湾と正式に国交を結べば、

  • 1979年以来の米中関係の前提が崩れる
  • 中国は「一つの中国政策の破棄」と受け取り、重大な対抗措置を取る可能性が高い

このコストが非常に大きいため、米国は今も国交“未満”の強い関係でバランスを取っています。

理由②:「戦略的曖昧(Strategic Ambiguity)」の維持

米国は、

  • 台湾の独立宣言をあおりすぎない
  • 中国の武力侵攻も抑止する

という二重の抑止を狙って、あえて曖昧さを残した政策を選んできました。 国交樹立はこの曖昧さを消し、危機を一気に高めかねません。

理由③:台湾側にも「現状維持」志向が強い

台湾世論では「独立」か「統一」かより、まずは現状維持を望む層が長く多数派とされてきました。 米台国交は“独立へ誘導する動き”とみられるため、台湾自身も慎重にならざるを得ません。


8. 今後の見通し:米台国交はあり得るのか?

結論から言えば、短期的に米台が正式な国交を結ぶ可能性は高くありません。 ただし、以下のような流れは強まっています。

  • 非公式関係の“準公式化”(交流制限の撤廃、政府間協力の拡大)
  • ✅ 防衛協力・武器供与の継続
  • ✅ 先端技術・サプライチェーンでの同盟的連携
  • ✅ 台湾の国際機関参加の後押し

逆に、米台国交の動きが現実味を帯びるのは、

  • 中国が大きな軍事行動に出て、現状維持が不可能になった場合
  • 国際社会が台湾を国家として扱う方向へ歴史的に舵を切った場合

など、“構造が変わるような局面”です。

いま米国が取っているのは、**「国交はないが、支援と連携は史上最強レベルにする」**という路線であり、2025年の法案可決などはその象徴と言えるでしょう。


9. まとめ

  • アメリカと台湾に正式な国交はない(1979年に断交)。
  • しかし米国は**台湾関係法(TRA)**などを通じ、実務・安全保障・経済で強い関係を維持。
  • 米国の「一つの中国」政策は、中国の「一つの中国」原則と同じではない。
  • 2025年は交流制限の撤廃を進める法案などが可決され、“非公式の強化”が進行中
  • 国交樹立は米中関係・抑止戦略のコストが高く、短期的には現実的でない。

 

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