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カナダの銃規制

カナダの銃規制

最新動向と日本との違いを解説

カナダはアメリカと国境を接し、ハンティングや射撃スポーツが根付いている国ですが、一方で銃規制は先進国の中でも比較的厳しい水準にあります。特に2020年5月の「アサルト風銃器」の禁止、2022〜23年にかけての連邦政府によるハンドガン販売凍結の方針、さらに2024〜25年にかけての禁止対象の拡大など、近年はほぼ毎年のようにルールが強化されています。ここでは、カナダの銃規制の基本構造と、この数年で何が変わったのかを整理してご紹介します。

1. カナダの銃規制の基本構造

カナダで合法的に銃を持つには、まず**連邦政府が管轄する「火器所持・取得免許(PAL: Possession and Acquisition Licence)」**を取得する必要があります。免許の取得には、RCMP(連邦警察)が定める安全講習の受講、身辺調査、一定の待機期間が必要で、過去の犯罪歴や家庭内暴力歴がある場合は審査で不利になります。免許は通常5年ごとに更新が必要で、更新時にも適格性がチェックされます。

また、カナダでは銃器そのものが3つのカテゴリに分類されています。

  1. 非制限銃(Non-restricted)…主に狩猟用ライフルやショットガンで、最も一般的。適正な保管と運搬を守れば所持が可能。
  2. 制限銃(Restricted)…拳銃(一定の口径・バレル長のもの)や一部の半自動小銃など。所持には上位の免許(RPAL)が必要で、持ち運びには個別の許可が要ることが多い。
  3. 禁止銃(Prohibited)…フルオート銃、極端に短いバレルの拳銃、過去に禁止指定されたモデルなど。原則として新たに個人が取得することはできず、既に所持している人だけが“グランドファザー”として条件付きで保持できる仕組みです。

この「免許+分類」という2階建ての仕組みが、カナダの銃規制の土台です。アメリカのように州ごとに大きくルールが異なるわけではなく、連邦法で全国に同じ枠組みがかかっている点が大きな特徴です。

2. 強化のきっかけになった事件と社会的背景

カナダはアメリカほど銃犯罪が多い国ではありませんが、1989年のモントリオール(エコール・ポリテクニク)での銃乱射事件は国内に大きな衝撃を与え、「軍用風の銃を民間が持つことをどこまで認めるのか」という議論を根本から変えました。その後も、国内でたびたび起きる銃を使ったDV・自殺・組織犯罪が「やはり規制を強めるべきだ」という世論を支えてきました。特に近年は、アメリカからの違法銃の流入や、都市部でのギャングによる発砲事件が問題視されており、連邦政府は「合法所有者への規制」と「密輸対策」を同時に進める方針をとっています。

3. 2020年5月の“アサルト風銃器”禁止

トルドー政権は2020年5月、軍用スタイルの半自動ライフルなど1,500種類以上を一括して禁止対象にしました。これらはしばしば「アサルトスタイル銃(assault-style firearms)」と呼ばれますが、カナダの法律上は明確な定義があるわけではなく、「軍事的外観・高い殺傷力・大容量化が可能なモデル」をまとめて禁止リストに載せた、という運用に近いものです。禁止と同時に、既に持っている人には一定期間の猶予(アムネスティ)を与え、後から政府が買い上げる「バイバック・プログラム」を実施することが告知されました。実際、2025年春までに販売店・事業者向けの回収は進み、今後は個人向けの本格実施が拡大していく見通しです。

この措置に対しては、狩猟団体や一部の地方自治体から「合法的に使ってきた銃まで一律に禁止されるのは不公平だ」という声もあり、現在も政治的な論争点になっています。一方で、都市部や被害者遺族の団体は「抜け穴をつぶさないと意味がない」として、禁止対象をさらに広げるよう政府に求めています。

4. ハンドガン販売の“事実上の凍結”:C-21法案の方向性

2022年に連邦政府が提出し、2023年に成立したC-21関連の改正では、新たなハンドガンの購入・販売・移転を全国的に凍結する方針が打ち出されました。既にハンドガンを合法に持っている人は、そのまま射撃クラブでの使用などができますが、新規に手に入れることは極めて難しくなっています。これは「都市部の銃撃事件の多くで使われるのは短くて隠し持ちやすい拳銃である」という治安当局の分析に基づいたものです。

あわせてC-21では、次のような周辺対策も盛り込まれました。

  • レッドフラッグ・オーダー:配偶者や家族などが「この人は自殺やDVに銃を使うおそれがある」と裁判所に申し立てると、一時的に銃と免許を取り上げられる制度。
  • 免許の取り消し・不適格期間の拡大:DVやストーキングに関する有罪判決がある場合、免許取得がより難しくなるようにした。
  • 模造銃・自作銃への対応:近年問題になっている3Dプリンター銃や改造可能なエアガンも規制の射程に入れていく方向性が示されている。

このハンドガン凍結は、合法的にクラブで射撃を楽しむ人たちにとっては大きな制約となり、州・準州によっては「地域の文化に合わない」との反発も出ています。カナダの銃規制は連邦が中心ですが、実際の運用では州政府・警察・射撃場・ハンティング団体が細かな調整を行う必要があり、今後もしばらくは現場でのすり合わせが続きそうです。

5. 2024〜25年の追加禁止と買い上げの拡大

その後も連邦政府は、2024年12月の段階で300種類を超える追加モデルを禁止リストに加えるなど、リストの“穴埋め”を続けています。2025年には、こうした禁止対象を公的に回収するためのプログラムを再開・拡大し、2020年に禁止されたものと合わせて補償を行うと発表しました。これは「見た目を少し変えただけの事実上同じ銃が市場に出回る」ことを防ぐ狙いがあります。

6. それでも残る課題:密輸・ギャング・先住民の権利

カナダ政府自身も認めている通り、都市部で起きている銃撃事件のかなりの割合は、国内で合法に買われた銃ではなく、アメリカから違法に持ち込まれた銃です。したがって「国内の合法所有者ばかりを締め付けても、肝心の犯罪には効きにくい」という批判があります。これに対して政府は、国境警備や港湾での検査強化に予算を付ける一方で、「違法銃が出回っている以上、国内での保管・流通もさらに厳しくせざるをえない」と説明しています。

また、先住民(ファースト・ネーション)の中には、狩猟が生活と文化の一部になっているコミュニティも多く、連邦の規制が生活に与える影響が大きいという指摘もあります。政府は文化的・伝統的な狩猟を尊重する姿勢を示しつつ、安全性の観点から非制限銃でも適正な保管を徹底するよう呼びかけています。

7. 日本との違い

最後に日本との違いを押さえておきましょう。

  • 日本:原則として一般市民が拳銃を持つことは認められず、所持できるのは散弾銃や空気銃などに限られます。銃砲所持許可も都道府県警が厳格に運用しており、発砲事件が起きるとすぐに問題視されます。
  • カナダ:ハンティング文化に対応するためにライフル・ショットガンの合法所持自体は広く認めつつ、軍用風の半自動銃や拳銃については近年一気に締め付けている、という“並立型”です。つまり「合法的に持てる銃はあるが、危険度が高いカテゴリーはどんどん狭めている」というのが現在の姿です。

8. 今後の見通し

2025年以降も、禁止リストの追加や買い上げ対象の拡大、レッドフラッグ制度の運用強化などは続くと見られています。特に、アメリカからの違法銃流入が続く限り、カナダ政府は「国内での安全管理をもっと厳しくする」という名目で規制を小刻みに更新していく可能性が高いでしょう。一方で、地方の狩猟コミュニティや合法的な射撃競技の参加者は「これ以上の規制は実害が大きい」として政治的に反発しており、今後も**“安全のための規制強化”と“合法所有者の自由”をどうバランスさせるか**が大きなテーマになっていきます。


カナダの銃規制は一度にすべて覚えようとすると難しく感じますが、

  1. 免許制であること、2) 銃が3つのカテゴリーに分かれていること、3) 2020年以降は危険度の高い銃を段階的に禁止していること、 この3点を押さえておくと理解しやすくなります。

 

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