「外国人に生活保護を出すのは日本だけじゃないのか?」「他の国ではどうしているのか?」
近年、日本国内で外国人に対する生活保護の支給に対する賛否が話題になる中、このような疑問を持つ方も増えています。
本記事では、外国人に生活保護や社会保障を支給している国々の制度について、ヨーロッパ・アメリカ・アジア各国の事例を紹介しながら、日本との違いや共通点、制度の背景をわかりやすく解説します。
生活保護(Public Assistance / Social Welfare)は、生活に困窮する人々に対して、国家または自治体が最低限の生活を保障するために提供する支援制度です。
多くの国では、生活保護は国籍にかかわらず一定の条件を満たせば受けられる制度となっている一方で、「納税者・国民のみに限る」という国もあります。制度の設計は、その国の歴史・移民政策・福祉国家の方針によって大きく異なります。
ドイツはEU内でも手厚い福祉国家として知られています。
難民認定前の人は「通常の生活保護」ではなく、特別枠の援助が適用され、支給額も制限されます。
フランスでは「人道主義」が重視されており、難民申請中でも一定の住宅・医療・現金給付が行われることがあります。ただし、観光や短期滞在者は対象外。
また、難民申請者はAsylum Support制度により、居住・食事・医療の支援が提供されますが、自由に働けない・金銭支給が制限される等の制限があります。
アメリカでは外国人の生活保護には非常に厳しい制限があります。
不法滞在者はもちろん、合法滞在中でも一部のビザ保持者(学生・就労)に対しては一切の支援がないことが多いです。また、生活保護を受けると将来の市民権取得に影響が出ることもあります。
各州によって制度は異なりますが、基本的には「その州に居住していること」が条件。入国後すぐに生活保護を申請できる場合もありますが、原則として就労の意思・能力を示すことが求められます。
生活保護制度(Centrelink)は国籍に基づいていませんが、滞在資格や滞在年数、納税記録により対象となるかどうかが決まります。観光ビザや学生ビザなどの一時滞在者には支給されません。
原則として外国人は対象外。ただし、特例として「韓国人配偶者と婚姻している外国人」や、「韓国に帰化したが戸籍登録が完了していない人」に対しては、一部支援が認められることがあります。
中国では、外国人が生活保護の対象となる制度は事実上存在しません。都市部に居住している外国人は基本的に就労ビザ等で生活が成り立つと想定されています。
シンガポールは「自己責任」の原則が強く、外国人労働者(特に低賃金の出稼ぎ労働者)は、雇用主が責任を持つという方針のもと、公的な生活保護の対象とはなりません。
日本では、法的には生活保護法の適用は「国民」に限定されていますが、実際には「永住者」「定住者」などの在留資格を持つ外国人に対して準用措置として支給されています。
この運用は国際的に見ると「中間的な立場」と言えます。
日本は移民国家ではないものの、外国人労働者や永住者の増加に伴い、「外国人を支援しないことの社会的リスク(犯罪・孤立・病気)」を防ぐ目的でも準用措置が維持されています。
生活保護の設計は、その国の「福祉思想」と「移民政策」が反映されています。
要因 | 内容 |
---|---|
福祉国家理念 | 北欧・ドイツなどは「社会全体で支える」という理念が強く、国籍にこだわらない傾向 |
移民受け入れ政策 | アメリカ・カナダなど移民国家では、受け入れた人を支援するインフラがある |
財政状況 | 公的支出が限られている国では「国民優先」の色が濃い |
国民感情・政治的風土 | 外国人支援に対する国民の理解度や、政治の方向性により大きく左右される |
結論として、日本だけが特別に外国人へ生活保護を出しているわけではありません。多くの先進国で、外国人にも条件付きで支援が提供されており、その内容は在留資格や滞在期間、税金の支払い実績などにより異なります。
人道的見地や社会的安定を考えたとき、「困っている人に手を差し伸べる」制度は、社会全体の安全や安心にもつながります。
今後、日本でも移民や外国人労働者の増加に伴い、外国人への社会保障のあり方をどうするかがますます重要な政策課題となっていくでしょう。