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外国人に生活保護を出す国

外国人に生活保護を出す国

世界の制度と日本との違いを比較

「外国人に生活保護を出すのは日本だけじゃないのか?」「他の国ではどうしているのか?」
近年、日本国内で外国人に対する生活保護の支給に対する賛否が話題になる中、このような疑問を持つ方も増えています。

本記事では、外国人に生活保護や社会保障を支給している国々の制度について、ヨーロッパ・アメリカ・アジア各国の事例を紹介しながら、日本との違いや共通点、制度の背景をわかりやすく解説します。


はじめに:そもそも生活保護とは?

生活保護(Public Assistance / Social Welfare)は、生活に困窮する人々に対して、国家または自治体が最低限の生活を保障するために提供する支援制度です。

多くの国では、生活保護は国籍にかかわらず一定の条件を満たせば受けられる制度となっている一方で、「納税者・国民のみに限る」という国もあります。制度の設計は、その国の歴史・移民政策・福祉国家の方針によって大きく異なります。


外国人にも生活保護を出す主な国

1. ドイツ

ドイツはEU内でも手厚い福祉国家として知られています。

  • 受給対象:ドイツ国内に「合法的に」滞在している外国人のうち、一定の条件を満たした者。
  • 主な条件
    • 長期滞在者または永住権保持者
    • 雇用経験や社会保険への加入実績がある者
    • 難民や亡命希望者に対しては別制度(Asylbewerberleistungsgesetz=亡命者給付法)に基づく最低限の支援

難民認定前の人は「通常の生活保護」ではなく、特別枠の援助が適用され、支給額も制限されます。

2. フランス

  • 受給対象:合法的な長期滞在者や難民、難民申請中の人など。
  • 特徴的制度:RSA(Revenu de Solidarité Active/連帯所得)という制度があり、低所得者への最低生活費支援として機能。

フランスでは「人道主義」が重視されており、難民申請中でも一定の住宅・医療・現金給付が行われることがあります。ただし、観光や短期滞在者は対象外。

3. イギリス(イングランド・スコットランド・ウェールズ)

  • 受給対象:英国市民、EU市民、または「定住資格(settled status)」を持つ外国人。
  • Brexitの影響:EU市民でも移行期間を過ぎて定住資格を取得していない人は支援対象外に。

また、難民申請者はAsylum Support制度により、居住・食事・医療の支援が提供されますが、自由に働けない・金銭支給が制限される等の制限があります。


条件付きで外国人に支給する国

4. アメリカ合衆国

アメリカでは外国人の生活保護には非常に厳しい制限があります。

  • 主な制度:TANF(一時的扶助)、SSI(障害者・高齢者扶助)、SNAP(フードスタンプ)
  • 受給対象
    • 永住権保持者(グリーンカード所持者)で、5年以上の居住歴がある場合
    • 難民・亡命認定者などの「資格ある外国人」(Qualified Alien)

不法滞在者はもちろん、合法滞在中でも一部のビザ保持者(学生・就労)に対しては一切の支援がないことが多いです。また、生活保護を受けると将来の市民権取得に影響が出ることもあります。


5. カナダ

  • 受給対象
    • 永住者(permanent resident)
    • 難民・難民申請中の人には特別支援あり

各州によって制度は異なりますが、基本的には「その州に居住していること」が条件。入国後すぐに生活保護を申請できる場合もありますが、原則として就労の意思・能力を示すことが求められます。


6. オーストラリア

  • 受給対象
    • 永住者は原則2年間の待機期間あり(Newly Arrived Resident’s Waiting Period)
    • 難民には即時支給可

生活保護制度(Centrelink)は国籍に基づいていませんが、滞在資格や滞在年数、納税記録により対象となるかどうかが決まります。観光ビザや学生ビザなどの一時滞在者には支給されません。


外国人に支給しない、または極めて制限する国

7. 韓国

  • 生活保護制度名:国民基礎生活保障制度
  • 対象:韓国国籍保持者のみ

原則として外国人は対象外。ただし、特例として「韓国人配偶者と婚姻している外国人」や、「韓国に帰化したが戸籍登録が完了していない人」に対しては、一部支援が認められることがあります。


8. 中国

  • 制度名:最低生活保障制度(通称「低保」)
  • 対象:基本的には中国国籍保持者

中国では、外国人が生活保護の対象となる制度は事実上存在しません。都市部に居住している外国人は基本的に就労ビザ等で生活が成り立つと想定されています。


9. シンガポール

  • 生活保護制度:ComCare(Community Care)
  • 対象:原則としてシンガポール国民と永住者(PR)のみ

シンガポールは「自己責任」の原則が強く、外国人労働者(特に低賃金の出稼ぎ労働者)は、雇用主が責任を持つという方針のもと、公的な生活保護の対象とはなりません。


日本との比較:特徴と課題

日本では、法的には生活保護法の適用は「国民」に限定されていますが、実際には「永住者」「定住者」などの在留資格を持つ外国人に対して準用措置として支給されています。

この運用は国際的に見ると「中間的な立場」と言えます。

  • ドイツやフランスなどの福祉国家:広く支給
  • アメリカやカナダ:限定的に支給
  • 韓国や中国など:ほとんど支給されない

日本は移民国家ではないものの、外国人労働者や永住者の増加に伴い、「外国人を支援しないことの社会的リスク(犯罪・孤立・病気)」を防ぐ目的でも準用措置が維持されています。


なぜ各国で対応が違うのか?

生活保護の設計は、その国の「福祉思想」と「移民政策」が反映されています。

要因 内容
福祉国家理念 北欧・ドイツなどは「社会全体で支える」という理念が強く、国籍にこだわらない傾向
移民受け入れ政策 アメリカ・カナダなど移民国家では、受け入れた人を支援するインフラがある
財政状況 公的支出が限られている国では「国民優先」の色が濃い
国民感情・政治的風土 外国人支援に対する国民の理解度や、政治の方向性により大きく左右される

結論:外国人に生活保護を出すことは特別なことではない

結論として、日本だけが特別に外国人へ生活保護を出しているわけではありません。多くの先進国で、外国人にも条件付きで支援が提供されており、その内容は在留資格や滞在期間、税金の支払い実績などにより異なります。

人道的見地や社会的安定を考えたとき、「困っている人に手を差し伸べる」制度は、社会全体の安全や安心にもつながります。

今後、日本でも移民や外国人労働者の増加に伴い、外国人への社会保障のあり方をどうするかがますます重要な政策課題となっていくでしょう。

 

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