サイ・ヤング賞/2025年・予想
2025年のサイ・ヤング賞は誰だ?
ポストシーズンが終わり、いよいよ個人賞シーズン。
サイ・ヤング賞(各リーグ最優秀投手)は、投手の“その年の顔”を決める称号です。本稿では、投票基準の実際と最新の客観データの読み方を軸に、ア・リーグ(AL)とナ・リーグ(NL)の2025年のサイヤング賞の受賞者を予想します。
予想の前提(投票の“リアル基準”と近年の潮流)
サイ・ヤング投票はBBWAA(全米野球記者協会)の記者投票。評価の中心は次の5本柱です。
- 失点の少なさ:防御率(ERA)、球場やリーグ差をならした防御率(ERA+)。1年通して点を取られにくかったか。
- 打者をねじ伏せた度合い:三振をどれだけ奪い、四球をどれだけ少なくできたか(K-BB%=三振率−四球率)、被打率。
- 投げた量:投球回、先発数、クオリティ・スタート(6回3自責以内)、登板間隔の安定。
- 置かれた条件:リーグや本拠地球場の違い、守備の質、地区の強さなど。
- 投票する人の傾向:最近は“勝ち星の数”よりも「失点の少なさ」+「三振が多く四球が少ないか」を重視。
目安:**180イニング前後+トップ級ERA+高K-BB%**が“満票圏内”。ボリュームが不足する場合は、支配力でどこまで補えるかがカギになります。
ア・リーグ(American League)
本命:タリク・スクーバル(デトロイト・タイガース)
- 理由① バランス最強:ERA、K%、イニングの三拍子が揃い、セイバー系でもズレが小さい。球場補正後でも優位性が崩れにくいのが強み。
- 理由② 失点抑止の一貫性:大崩れが少なく、相手上位打線への被打率が低いタイプ。投票者が“安心して1位票を置ける”プロファイル。
- 理由③ 終盤の伸び:レース中盤以降も失速が目立たず、月間スプリットが綺麗。最後まで数字をキープした印象が強い。
対抗:ギャレット・クロシェ(ボストン・レッドソックス)
- **圧倒的K%**で票を動かす逸材。課題はボリューム(イニング)の積み上げ。規定近辺まで到達すれば1位票を刈り取る力がある。
ダークホース
ルイス・カスティーヨ(シアトル・マリナーズ)
コール・ラガンズ(カンザスシティー・ロイヤルルズ)
コービン・バーンズ(バルティモア・オリオールズ)
- カスティーヨ:上振れ時のWHIPの美しさと球場補正込みの安定感。
- ラガンズ:スプリット次第でK-BB%が一気に上位へ。
- バーンズ:伝統指標×イニング×球場補正の合算で“総合力評価”が効くタイプ。
AL結論:票の割れ方まで考えると、スクーバル受賞を有力視。クロシェがイニング到達&終盤伸びで肉薄、ダークホース勢は2~5位帯で票を分け合う展開を想定。
ナ・リーグ(National League)
本命:ポール・スキーンズ(PIT)
- 理由① 支配力の説得力:被打率・K%ともリーグ最高峰。勝ち星が伸びなくても“内容で納得させる”典型例。
- 理由② デグロム型評価の追い風:近年の投票心理では、圧倒的なRun Prevention&支配力が“多少のボリューム不足”を補う。
- 理由③ ハイレベルトレンド:球種の見せ方が均衡し、打者が2巡目に入っても失速しにくい。大舞台適性も高い。
対抗:クリストファー・サンチェス(PHI)
- ロングスパンの安定ERAとボリューム。強豪地区の中で“毎回6~7回の責務を果たす”タイプは、記者に刺さりやすい。
ダークホース
マックス・フリード(アトランタ・ブレーブス)
ローガン・ウェブ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)
山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)
- フリード:球種の幅とゴロ誘導で失点の天井が低い。
- ウェブ:イニングの太さが最大の武器。
- 山本:与四球の少なさ×弱コンタクト誘発が魅力。ボリュームがやや不足でも“内容票”を確保可能。
NL結論:スキーンズが受賞を予想。圧倒的Run Preventionと支配力で、勝利数の見栄えを補って余りある。
「票が動く瞬間」チェックリスト(最終週の揺れ)
- ノーヒッター/完封:最後の1登板のインパクトは記者の記憶に強く残る。
- 地区優勝決定ゲームでの快投:大一番の価値は“数字以上”。WPA的な説得力が増す。
- 規定到達ライン:179.2→180.0IPのような“クリアの瞬間”は評価の背中を押す。
- 直接比較の対戦:同賞レース投手との投げ合いで優位を作ると票が傾きやすい。
歴史的傾向からの補足(近年のシフト)
- 勝利数偏重→支配力偏重へ:K-BB%、xERAなど“持続性の高い内容指標”の重みが増加。
- 球場・守備補正の理解が浸透:ERA+や各種補正値が説明なしでも通じる時代に。
- ボリュームの最低ライン:完全無視はされないが、“170~180IPでもOK”の空気が強まる。
予想スコアカード(票割のイメージ)
- AL:スクーバル(1位票多数)/クロシェ(1位票一部+2位票厚め)/ダークホース勢(2~5位票を分散)
- NL:スキーンズ(1位票の過半)/サンチェス(安定の2位票)/フリード・ウェブ・山本(2~4位票を分け合う)
FAQ(よくある疑問)
Q. 勝ち星が少ないと不利?
A. 近年は“決定打”ではありません。支配力とRun Preventionが勝ちます。
Q. イニング不足はどの程度まで許容?
A. 170~180IPでトップ級の内容なら十分勝負可能。150台は“歴史級の支配力”が必要。
Q. チームの強さはどれくらい影響?
A. 直接の評価項目ではないものの、大一番での快投や地区優勝への寄与は物語性として票に響きます。
まとめ(最終予想)
- アメリカンリーグ サイ・ヤング:タリク・スクーバル(DET)
- ナショナルリーグ サイ・ヤング:ポール・スキーンズ(PIT)
両者とも“内容で選ぶ近年の潮流”に合致。特にスキーンズは若さ×支配力の希少値で歴史的評価を受ける可能性が高い。一方、ALはバランスのスクーバルが一歩リード。
2025年のサイ・ヤング賞予想記事、とても緻密で面白いですね。
⚾️ サイ・ヤング賞に関するトリビアと補足情報
1. 賞の創設と初期の背景
- 賞の創設年と命名の由来: サイ・ヤング賞は、1956年にコミッショナーのハズウェル・スティーヴンスによって創設されました。この賞は、MLBの歴史上最も多くの勝利(511勝)を挙げた伝説的な投手、サイ・ヤング(本名:デントン・トゥルース・ヤング)の功績を称えて名付けられました。
- 初期はリーグ区別なし: 創設当初(1956年〜1966年)は、ア・リーグとナ・リーグの区別なく、両リーグで年間最優秀の投手1名にのみ贈られていました。現在の「各リーグ1名」になったのは1967年からです。
2. 投票傾向の歴史的な転換
- 満票受賞者の増加: 近年、投票基準がより明確(特にセイバーメトリクス指標の浸透)になり、記者間の評価が集中しやすくなっています。これにより、満票(全1位票)で受賞するケースが以前よりも増える傾向にあります。
- 救援投手(リリーバー)の受賞: サイ・ヤング賞は主に先発投手のための賞というイメージが強いですが、過去にリリーフ投手として受賞した例があります。
- NL: マイク・マーシャル(1974年)、ブルース・サッター(1979年)
- AL: ローリー・フィンガーズ(1981年)、ジョン・スモルツ(1996年)、エリック・ガニエ(2003年)
- (補足として:ガニエの受賞は、ボリューム不足(僅か45イニング)ながら、当時のMLB記録となる55セーブを挙げた支配力が評価されました。これは*「ボリュームよりも支配力」*が勝る稀有な例です。)
3. 最年少・最年長記録
- 最年少受賞記録: ドワイト・グッデン(Dwight Gooden)が1985年にナ・リーグで受賞した時の20歳と339日です。記事で本命とされている**ポール・スキーンズ(PIT)**がもし2025年に受賞すれば、これに迫る、あるいは塗り替えるほどの歴史的な若さでの受賞となる可能性があります。
- 最年長受賞記録: ロジャー・クレメンスが2004年にア・リーグで受賞した時の42歳と37日です。
4. 複数回受賞と連続受賞
- 最多受賞記録: ロジャー・クレメンスの7回が歴代最多です。
- 連続受賞記録: 連続での最多は3年連続で、以下の3名が達成しています。
- グレッグ・マダックス(1992年-1995年、4年連続)
- ランディ・ジョンソン(1999年-2002年、4年連続)
- クレイトン・カーショウ(2011年-2014年、途切れつつ3回)