メジャーリーグの延長戦・何回まで?
アメリカの最高峰「メジャーリーグ(MLB)」の延長戦は、日本プロ野球(NPB)とは運用が大きく異なります。
メジャーリーグの延長戦は何回までなのでしょうか?
この記事では、レギュラーシーズン、ポストシーズン(プレーオフ)、そしてワールドシリーズの3部構成で、最新ルールを整理しつつ、戦術面・公式記録・よくある疑問まで一気に解説します。
1) レギュラーシーズン:上限なし+10回から“無死二塁”タイブレーク

- 延長の上限回数はありません。 勝敗がつくまで続行します(悪天候や球場使用制限などで一時中断→サスペンデッドゲームとして後日再開のケースはあり得ます)。
- 10回から“無死二塁”(いわゆるゴーストランナー)で開始する特別ルールを採用。2023年にレギュラーシーズン限定で恒久化され、その後も継続中です。
- 二塁走者は、その回の先頭打者の直前に打席に立っていた選手(または代走)。
- 犠打・申告敬遠・進塁打など小技の価値が急上昇。一方で強行策(強打)を選ぶチームも増え、得点期待値とアウト価値の計算が重要に。
- ピッチタイマー(投球間隔計時)は原則適用。標準は走者なし15秒/走者あり18秒(2024年導入の調整が継続)。テンポ改善と試合時間短縮に寄与しています。
- マウンド訪問は1試合5回(9回まで)。延長に入るごとに1回ずつ追加されます。
- ポジションプレーヤー投手の登板:近年の規定では、延長戦に限りスコア差に関係なく起用可能。投手枯渇時の保険になります。
歴史的な超ロングゲーム(レギュラー期): 1984年「ホワイトソックス vs ブルワーズ」25回/約8時間6分。二日がかりで決着した伝説的マラソン。
公式記録と得点計算の豆知識(レギュラー)
- 自責点と防御率:タイブレークの置きランナーが本塁生還しても、投手の自責点にはならない(不運な失点扱い)。ただし、打者にはRBI(打点)がつくことがあります。
- セーブ機会:延長に入ると増減が読みにくくなります。同点のホーム裏での登板→サヨナラなど、状況により勝利・ホールド・セーブの付与が大きく変化。
- 打順の回し方:タイブレークで1点を取りやすい反面、下位打線から始まる回は不利。代打・代走・守備固めの三段活用が鍵。
2) ポストシーズン:伝統方式(自動ランナーなし)、チャレンジは1試合2回

- 自動ランナー(無死二塁)は不採用。 延長は走者なし・無死から通常どおり開始。よって、1点が極めて重い“本来の野球”の延長になります。
- リプレイ・チャレンジは1試合2回。 成功すれば回数は保持されます(レギュラーは通常1回)。重要局面の判定精度が一段と高まります。
- ピッチタイマーは原則適用(延長そのものに特別TBはなし)。テンポは保ちつつ、継投・守備・代走の一手が勝敗を左右。
- 投手の配分:シリーズ形式のため、延長での酷使は次戦以降に響きます。ロングリリーフの温存/割り切りの早さが監督の腕の見せ所。
観戦のポイント:点が入りづらい分、一つのバント処理・一つの中継プレーが決定打に。守備位置の微調整や、代走→守備固めの二段スイッチにも注目。
3) ワールドシリーズ:ポストシーズンと同じ(タイブレイクなし)だから長期戦も

- 自動ランナーはなし。 各延長回は走者なし・無死で開始。
- ホームがサヨナラ得点を挙げた時点で終了。決着がつくまで続くため、15回以上の超ロングゲームに発展する可能性も残ります。
- 代表的な長時間試合(WS):2018年WS第3戦(ドジャース vs レッドソックス)は18回・7時間20分。一球のミス、一走の好走塁が歴史を動かす好例です。
世界一決定戦ならではの駆け引き
- 先発の中継ぎ待機:休養日との兼ね合いで、エース級を延長で投入する大胆策も。
- 代打の使い切り問題:DH有無や対右左での層の厚さが顕在化。ベンチ構成の**最適化(捕手2or3枚、UTの有無)**が勝敗に直結。
- 疲労管理:翌試合・遠征移動を見据え、**“勝ちにいく今”と“残り試合”**のバランスをどう取るかが要。
NPB(日本)との比較
| 比較項目 |
MLB(米国) |
NPB(日本) |
| 延長の上限 |
なし(続く限り) |
最長12回(レギュラー:引き分けあり) |
| タイブレーク |
レギュラーのみ10回から無死二塁 |
原則なし(大会等で採用例あり) |
| 引き分け |
原則なし(極稀に成立する例外あり) |
あり |
| ピッチタイマー |
原則あり(PSでも運用) |
公式戦では未導入(2025時点) |
| チャレンジ権 |
レギュラー:通常1回/PS:2回 |
リクエスト制度(採用範囲・回数はNPB規定による) |
※NPBは年度や大会によって運用変更があるため、その年の要項を要確認。
延長戦が与える影響と戦い方(実務とデータの視点)
- 投手のやり繰り:ロングゲームではブルペン総動員に。ロングリリーフや“バルク要員”の活用、翌日以降を見据えた継投計画、左右マッチアップの徹底で球数・スタミナを管理。延長突入前に“誰を残すか”の逆算がポイント。まれに野手が登板するケースもあります(延長ではルール上起用が容易)。
- 小技と走塁の重要性:送りバント、盗塁、エンドラン、代走起用などで一点を奪いにいく野球が増える。特にタイブレーク下では1アウト三塁をいかに作るかが肝。外野は前進守備、内野は前進・中間の選択が勝負所に。
- 守備の精度:一つのミスが決定打になりやすく、内外野の守備位置・代替守備の判断がカギ。疲労による判断ミスを抑えるため、ベンチはイニングごとの守備配置を細かくアップデート。
- 打順とリソース管理:タイブレークで下位から始まる回はバント→申告敬遠→勝負などの定番パターンに誘導されやすい。ベンチは代打・代走・守備固めの在庫を計数管理(誰を残し、誰を切るか)。
- 翌日の影響:先発ローテやブルペン疲労、ベンチプレーヤーのコンディションに波及。シリーズ中は翌戦の勝率期待まで見越したミニマックス思考が求められます。
よくある質問(FAQ)
Q1. レギュラーのタイブレークで入った得点は、投手の自責点になりますか?
A. 原則自責点になりません(置きランナーは記録上“エラーで出塁”に類する扱い)。ただし、打点(RBI)は打者に記録され得ます。
Q2. 置きランナーは誰が務めますか?
A. その回の先頭打者の直前の打順の選手です。足の速い代走に交代することも可能ですが、通常の交代ルールが適用されます。
Q3. 延長に入れば必ずタイブレークですか?
A. レギュラーシーズンのみ10回から適用。ポストシーズンとワールドシリーズでは不採用です。
Q4. 何回まで続きますか?
A. 上限はありません。 ただし、天候・照明・条例等の事情で中断→後日再開となる場合があります。
Q5. マウンド訪問やチャレンジ回数は増えますか?
A. マウンド訪問は延長ごとに1回追加。チャレンジはポストシーズンでは1試合2回(成功で保持)です。
まとめ(要点の再確認)
- レギュラーシーズン:上限なし+10回から無死二塁(恒久化)。ピッチタイマーと合わせ、決着を早める設計。
- ポストシーズン/ワールドシリーズ:自動ランナーなしの伝統延長。チャレンジ2回、ピッチタイマーは原則適用。
- だからこそ、10回以降の一球一打に戦術と集中力が凝縮。守備・走塁・継投の**“一手の重さ”**が最大化され、稀に歴史的ロングゲームも生まれます。
このルールを押さえて観戦すれば、試合展開の意図やベンチワークが格段に読みやすくなります。ライブ観戦・配信視聴のいずれでも、**「今はレギュラー規定か、ポストシーズン規定か」**を意識するだけで延長戦の面白さが段違いに感じられるはずです。