「宗教法人は税金がかからない」「お寺や神社は儲かっているのにズルい」──こうした話題は、ニュースやSNSでもたびたび盛り上がります。
結論から言うと、宗教法人は“全部が非課税”ではありません。 日本の税制では、宗教法人を「公益法人等」として位置づけ、
この記事では、宗教法人が「なぜ(一定範囲で)非課税になるのか」を、制度の趣旨・法律上の仕組み・よくある誤解・論点まで含めて、できるだけ丁寧に解説します。
宗教法人が非課税だと言われる背景には、次の2つが混ざって語られがちなことがあります。
つまり、宗教法人にも税金がかかる場面は普通にあります。
宗教法人の「非課税(または課税されにくい)」部分には、大きく分けて次の理由があります。
宗教は個人の内心に深く関わるため、国家が過度に介入すると、信教の自由を侵害するおそれがあります。 課税のために宗教活動を細かく調査・評価することは、
そのため税制上も、宗教活動部分は「原則、課税対象から外す」方向で設計されています。
宗教法人は、地域の文化・伝統・コミュニティ維持、 葬祭や儀礼、相談支援など、社会に一定の役割を果たしている面があります。
日本の税制では、宗教法人だけでなく、学校法人・社会福祉法人なども含め、 「公益法人等」については、公益的活動にあたる部分に課税しない/課税を軽くする設計が採用されています。
宗教活動の財源の多くは、信者や参拝者からの献金(お布施・賽銭・初穂料など)です。 これらは一般に、
税制としても、寄付まで同じように課税対象にすると、宗教活動や寄付文化が成り立ちにくくなるという考え方が背景にあります。
日本の宗教法人税制を考える際、しばしば指摘されるのが「欧米諸国の制度との類似性」です。実際、宗教団体に対する税制上の扱いは、日本独自というより、近代国家の制度設計の流れの中で整備されてきた側面があります。
近代税制や法人制度そのものが西洋由来であることを踏まえると、次の点は無視できません。
日本の宗教法人制度や税制も、戦後の制度再構築の過程で、こうした考え方と一定の整合性を持つ形で整備されてきました。つまり、宗教法人が非課税扱いされる領域があるのは、「日本だけの特別優遇」というより、近代国家に共通する法制度の発想に近いという見方もできます。
もちろん、各国で細かなルールや課税範囲は異なりますが、
という基本構造は、多くの国で見られる考え方です。この意味で、「欧米の慣習・制度を参照した結果」という説明には、一定の合理性があります。
宗教法人が“非課税っぽく見える”最大の理由は、ここです。 日本の法人税の仕組みでは、宗教法人は(ざっくり言うと)
という設計になっています。
例としては、次のようなものが典型です。
これらは基本的に「宗教活動」であり、法人税の課税対象になりにくい領域です。
一方で、宗教法人が次のようなことを 継続的に事業として行うと、収益事業と判断され、 その利益には法人税などが課税されます。
ポイントは「宗教法人がやっているから非課税」ではなく、 **やっている中身が“宗教活動か/一般の事業か”**ということです。
「寺や神社は広い土地を持っているのに固定資産税がかからないのはなぜ?」という疑問もよくあります。
ここにも線引きがあり、一般には
ただし、同じ土地でも
よくある誤解が、
お布施は税金がかからない
という一言で片付けられてしまうことです。
宗教法人が宗教儀式に伴って受け取る「お布施」等は、宗教活動に位置づけられやすく、法人税の課税対象になりにくいケースが多いです。
一方で、宗教法人から給与を受け取っている、あるいは個人として収入を得ている場合は、 個人の所得税の問題になります。
つまり、
は分けて考える必要があります。
宗教法人の税制は「理屈」はあるものの、一般の感覚では不公平に見えやすいポイントがあります。
宗教活動か収益事業かは、実務上は会計処理や実態により判断されます。 外から見ると
宗教法人も収益事業には課税されますが、 会計処理が不適切だったり申告が甘かったりすると、当然ながら批判が強まります。
寄付(献金)を保護する設計は、社会を支える面もある一方で、
ここまでの話を整理すると、宗教法人の税金は次のイメージです。
宗教法人への課税を強めるべきかどうかは、意見が分かれます。 ただ、議論するときは次の点を押さえると、論点が整理しやすくなります。
宗教活動そのものへの介入は憲法上の慎重さが求められます。 そのため、現実的には
例えば高額献金などの問題は、 税の問題だけでなく、
最後に要点をまとめます。
A. 収益事業で得た利益には課税されます。宗教法人でも「事業」と判断されれば法人税等の対象です。
A. 宗教活動の一環として扱われる場合もありますが、実態や継続性、事業性などで判断が分かれ得ます。境界がグレーになりやすい領域です。
A. 「専ら宗教目的に使う境内地・境内建物」など、非課税になる範囲がありますが、収益目的の利用があると非課税の対象外になり得ます。