「Turkey in the Straw(ターキー・イン・ザ・ストロー)」(藁の中の七面鳥 )というフレーズや曲名を見かけて、「これってどういう意味?」「歌詞が差別的な曲ではないの?」と疑問に思ったことはありませんか?
近年、SNSや海外ニュース記事で「藁の中の七面鳥 」の「一部バージョンの歌詞は差別的な内容を含んでいた」という情報も散見され、気になる方も多いでしょう。
この記事では、「Turkey in the Straw」の意味・曲の由来・意外な使われ方に加えて、問題視された経緯や現在の受け止められ方まで詳しく解説していきます!
「Turkey in the Straw(ターキー・イン・ザ・ストロー)」の背景には、非常に深く、そして悲しい歴史が隠されています。
「Turkey in the Straw」は差別的なのか?という問いに対し、答えは「イエス」です。ただし、それはメロディそのものが差別的なのではなく、そのメロディにまつわる忌まわしい歴史と、長きにわたってつけられてきた差別的な歌詞にこそ問題がある、という複雑な経緯があります。
この曲のメロディ自体は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、イギリスやアイルランドで生まれたとされる古いフォークソングに由来しています。元々は特に人種的な意味合いを持つものではなく、ただ純粋に陽気な舞曲として親しまれていました。その起源に差別的な意図は全くありませんでした。
しかし、19世紀のアメリカに渡ると、その運命は劇的に変わります。アメリカ社会に深く根ざした人種差別の波に飲み込まれ、この無垢なメロディは、黒人に対する偏見と嘲笑の道具として利用されてしまうのです。
「Turkey in the Straw」のメロディがアメリカで広く知られるようになったのは、1800年代にアメリカで絶大な人気を誇った**「ミンストレル・ショー」という演芸においてでした。ミンストレル・ショーは、白人が顔を黒く塗り(いわゆるブラックフェイス**)、黒人のステレオタイプを誇張し、滑稽に演じるという、現代から見れば極めて差別的で屈辱的なショーでした。
このミンストレル・ショーの中で、「Turkey in the Straw」のメロディに付けられたのが、悪名高い**「Zip Coon(ジップ・クーン)」**という歌詞です。
「Zip Coon」は、自由な黒人を嘲笑し、彼らが白人社会に馴染もうとする姿や、都会的な装いを滑稽に描くキャラクターでした。歌詞の中には、黒人の知性を侮辱したり、動物に例えたり、あるいは彼らを怠惰で無知な存在として描いたりするなど、現代では到底受け入れられないほど攻撃的で露骨な差別表現が散りばめられていました。
(※以下の歌詞は、その歴史的背景を理解していただくために記載します。非常に差別的であり、不快な内容を含みますことをご了承ください。)
O ole Zip Coon he is a larned skoler, O ole Zip Coon he is a larned skoler, O ole Zip Coon he is a larned skoler, Sings posum up a gum tree an conny in a holler.
O Zip a duden duden duden zip a duden day. O Zip a duden duden duden duden duden day. O Zip a duden duden duden duden duden day. Zip a duden duden duden zip a duden day.
ミンストレル・ショーの時代が終わり、さらに後年、特にアイスクリームトラックのジングルとして関連付けられる中で、より露骨な差別表現を含む歌詞のバリエーションも生まれました。
N**** love a watermelon ha ha, ha ha! N**** love a watermelon ha ha, ha ha!
これらの歌詞は、アメリカの歴史における黒人差別の暗い側面を如実に反映しており、無垢なメロディは、憎悪と嘲笑の器として利用され、黒人コミュニティに深い傷跡を残したのです。
「メロディ自体は関係ないのに、なぜ今も問題視されるのだろう?」と疑問に思うかもしれません。しかし、たとえ現在流れる「Turkey in the Straw」に歌詞がついていなくても、このメロディが持つ**「差別的な歴史と文脈」が消えることはありません。**音楽や文化には、その背後にある歴史が色濃く染み付いているものなのです。
特にアメリカでは、長年にわたりアイスクリームトラックのジングルとしてこの曲が親しまれてきたため、多くの人が無意識のうちにこの曲を耳にしてきました。しかし、その背景にあるミンストレル・ショーとの繋がりや、差別的な歌詞の存在が広く認識されるにつれて、教育現場や公共の場での使用を避ける動きが急速に広がっています。
例えば、アメリカの多くの大学では、長年使用されてきたキャンパスのチャイムのメロディが「Turkey in the Straw」であることが判明し、その差別的な歴史を考慮して別の曲に変更する決断を下しました。また、多くのアイスクリームトラックのオーナーも、自発的にこの曲の使用をやめ、より中立的なメロディに切り替える選択をしています。これは、過去の過ちを認識し、差別を助長しない社会を築こうとする現代の意識の表れと言えるでしょう。
「Turkey in the Straw」の事例は、文化や表現が持つ歴史的背景を理解することの重要性を痛烈に示しています。単なるメロディであっても、それが過去にどのような意味合いで使われ、どのような影響を与えてきたのかを知ることは、私たちがより包括的で公正な社会を築く上で欠かせない視点です。
もしあなたが今後「Turkey in the Straw」を耳にする機会があれば、その陽気なメロディの裏に隠された、悲しい差別と屈辱の歴史に思いを馳せてみてください。そして、私たちが日常で触れる様々な音楽や表現、文化について、その背景を調べてみるきっかけになるかもしれません。
音楽は人々の心を繋ぎ、喜びや感動を与える素晴らしい力を持っています。しかし同時に、歴史の教訓を伝え、過去の過ちを繰り返さないための指針も与えてくれます。私たちは、そうした歴史の重みを理解し、未来に向けてより良い社会を築いていく責任があるのです。