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まず「Les Saveurs」を直訳すると、フランス語で「味」「風味」「香り」といった意味になります。単数形は**saveur(サヴール)で「味」「うまみ」「風味」を指します。これが複数形になってles saveurs(レ・サヴール)**となると、
といった、バリエーションのある“味の世界”を表す言い回しになります。単に「味」ではなく、「いくつもの味が重なって一つの体験になる」というニュアンスが含まれているのがポイントです。
日本の観光列車やレストラン列車では、食に関する名前にフランス語が採用されることがよくあります。これは、
といった理由が考えられます。「Les Saveurs」という名前も、志摩の素材を使いながら、単なる“ご当地グルメ”ではなく、旅の中で一皿ずつ丁寧に楽しむ“ガストロノミーの時間”を想像させる言葉として選ばれたのでしょう。
日本語にそのまま直すと「志摩・味」や「志摩・味覚」といった言い方もできますが、あえてフランス語のLes Saveursを使うことで、
といった、より広い意味の「味わい」が想起されます。観光列車は“乗ること自体が目的”になる乗り物なので、単に「食べて終わり」ではなく、「走る・眺める・香る・味わう」を同時に楽しんでもらうために、この言葉がフィットしたと考えられます。
列車名が「志摩 Les Saveurs」となっているのは、「志摩」という地名で“産地・土地の物語”を示し、「Les Saveurs」で“その土地から生まれる多彩な味”を示す、二段構えの名前にするためだと考えられます。つまり、
という役割分担です。この2つを並べることで、「志摩という土地の味わいを、フランス料理的な感性で仕立てて列車で提供します」というメッセージが一目で伝わる構成になっています。
日本語で書く場合は「レ・サヴール」「レ・サヴールス」など表記が揺れることがありますが、フランス語としてはおおむね「レ・サヴール」と読むのが自然です。末尾の“s”は複数形を示すもので、普通は強く発音しません。そのため日本語では“s”をあえて書かずに「Les Saveurs(レ・サヴール)」とルビを振るケースが多いです。
近鉄は伊勢志摩エリアで長年観光輸送を行ってきた実績があり、志摩スペイン村など洋風の観光テーマとも相性が良い会社です。今回の「志摩 Les Saveurs」もその延長線上にあり、
という利点があります。英語だけでなくフランス語を使うことで、単なる“インバウンド向け”ではなく、“食を楽しむ層”にもしっかり訴求できるわけです。
という3つの願いが込められていると考えられます。特に志摩は季節によってとれる海産物が変わるため、複数形の「les(いくつもの)」を使うのは理にかなっています。
「志摩 Les Saveurs(レ・サヴール)」という名前は、ただオシャレな外国語を並べただけではなく、志摩という土地が持つ食材の豊かさと、その味を走る列車の中でゆっくり堪能してもらうという体験型のコンセプトを、フランス語のニュアンスで表現したものです。「Les Saveurs」は“複数の味・多彩な風味”を意味する言葉であり、志摩の恵みを季節ごとに、コースごとに、何度でも楽しんでほしいというメッセージが込められていると受け取ることができます。